1970年代に日本の鉄道、その当時は国鉄。それにコツコツと乗りつぶしているおじさんがいました。本号はそのおじさんが乗った足取りを追いかけた検証録です。なお、九州内のケーザイ活動をリサーチするローカライズド(LCD)としては、その検証録は九州内にとどめています。あしからず。
宮脇氏を追う
九州編
時刻表2万キロ第3章より
趣旨については:宮脇氏を追う 2万キロ@九州#イントロダクション
表は2万キロに登場する駅たち
数字は時刻 斜体字は推定時刻 「-」は通過駅
■ 2万キロ#3章
宮脇氏は小倉駅に着くとくつろぐことにする。純粋にくつろぐわけではなく、次の乗線区への移動のための待機でもある。
くつろぐ場所は2万キロでは、駅前の喫茶店とある。
2020年の現在、JR小倉駅には駅構内にも駅前にも喫茶店はあり、宮脇氏がどの喫茶店に入ったかは確認しようがない。
■ 2万キロ#3章
宮脇氏、当時は50歳前。鉄道に乗りまくる行動派なおじさんではあるが、年寄りくさいところもある。
小倉からでは坐れないかもしれない
と、2万キロには記載がある。
たしかに50歳前の男性には列車に立ちっぱなしはキツイであろう。
■ 2万キロ#3章
そうでなくても1日8時間以上鉄道で移動するのであれば体力温存もあり、着席をこころがけているのかもしれない。
そういう事情から座る行為は宮脇氏にとっては重要事項と思われる。
■ 2万キロ#3章
その座るためにどうするか?と考えた結果、小倉駅の前の始発の発車駅である門司港から乗車することにした。
当初の計画は小倉駅発の急行への乗車であった。
しかし、これではお客が多いだろうから乗れたとしても座れない可能性がある。
ならば、小倉駅の前の発車駅である門司港駅から乗っておこうとするのである。
実際、そのように行動し、乗車予定の急行には乗ったが、座れたかどうかは2万キロの記述からではわからない。
【 小倉駅#現 】
■ 2万キロ#3章
宮脇氏の迅速さには少々おどろかされる。小倉駅に到着したのは13:55。
その後喫茶店に入店し、コーヒーをオーダーし、コーヒーを飲んでいる。コーヒーをオーダーしたと2万キロには記載はないが、
コーヒーを飲みながら私は時刻表をしらべた。
との記載はあるので、オーダーしたと思われる。
タイミングよく門司港駅へ向かう小倉駅14:15発の列車をみつけたのでそれに乗る。
喫茶店の座席から目当ての列車に乗り込むまでの時間はどれだけかは不明だが、宮脇氏はこの間20分で、これらの行動を済ませている。
宮脇氏がコーヒーを飲み干したかどうかは大いに気になるところである。
なんといっても九州入りして3日間、コーヒーを飲んでいなかったらしい。
2万キロにそう書かれている。なお、宮脇氏とコーヒーの関係は不明である。
■ 2万キロ#3章
宮脇氏は小倉駅から門司港駅まで列車で移動している。
この間15分、当時も2020年の現在もだいたい15分で行く。
2021年の現在、門司港あたりは再開発でこぎれいになっており、駅舎は国の重要文化財に指定されたり、近代化産業遺産に認定されたりと、なにかとハクのついたエリアとなっている。
門司港に着いたら観光でもしてほしいものだが、そういったことはせず、宮脇氏は門司港駅14:42発の急行に乗車している。
前後の時間から察するに、ほぼタッチアンドゴーの状況と思われる。
【 門司港駅#現 】
■ 2万キロ#3章
宮脇氏のヨミは当たったようで、門司港駅からはわずかなお客を乗せ、小倉駅手前の門司駅でどっと乗り、小倉駅でその倍くらい乗ったため、通路までいっぱいになったと、2万キロには記載がある。
■ 2万キロ#3章
宮脇氏はつぎの乗線区である伊田線に向かう。伊田線の乗線駅のスタートは直方駅から。
宮脇氏は門司港駅から門司駅、小倉駅、折尾駅、直方駅と通過しているが、現在もこの経路で行くのが妥当と思われる。なお、ここで登場する全駅、JR九州の駅として現存する。
■ 2万キロ#3章
2万キロでは伊田線に以下の記述がある。
伊田線は複雑で、しかも、がっしりとしたレールが敷かれ、
とある。伊田線を走っているとレールだけでなく、がんじょうな鉄橋にも出くわす。
廃線近い路線であったわりには複線である。
このあたりは産炭地であり、石炭などの重量物を運ぶにはがっしりとした線路や鉄橋でないと線路などはもたなかったと思われる。
〓 伊田線への乗線
【 伊田線 】
S:直方駅
G:伊田駅
##宮脇氏、直方駅から伊田駅へ
■ 2万キロ#3章
直方駅を通過し、伊田駅に到着する。この時点で伊田線の完乗となる。
宮脇氏は門司港駅を14:42に出発し、伊田駅に16:00に到着している。1時間20分前後の乗車である。
現在、同じルートであると、ダイヤにもよるが1時間45分から2時間10分ほどかかる。
宮脇氏は急行はんだに乗車したが、現在、同急行はなくおなじく現在、JR九州では急行そのものの運行がない。
〓 伊田線完乗@16:00伊田駅到着にて
伊田線:廃線
【読み:いたせん】
起点:直方駅
終点:伊田駅
駅数:15
##引き続き乗車して後藤寺駅に向かう
〓 日田彦山線への乗線②
【 日田彦山線 】
S:城野駅
G:夜明駅
■ 2万キロ#3章
伊田駅到着で伊田線は完乗した。当時の伊田駅は現在の田川伊田駅。
宮脇氏は伊田駅で下車せず、そのまま後藤寺駅、添田駅と乗車を続ける。後藤寺駅も田川後藤寺駅という駅名になる。
後藤寺駅の通過で、日田彦山線の完乗を果たす。同線は分割しての完乗となり、2万キロ(文庫版)の79ページに 乗ったことがあるのは、
(略)日田彦山線の後藤寺以遠だけで、
とあり、同線の後藤寺駅から終点の夜明駅間はすでに乗車している。
本日、午前中には起点の城野駅から伊田駅は乗車している。そして、いま、残りの伊田駅から後藤寺駅まで乗車し、日田彦山線の完乗となった。
〓 日田彦山線完乗(3回に分乗)@時間不明 後藤寺駅到着にて
日田彦山線:現役
【読み:ひたひこさんせん】
起点:城野駅
終点:夜明駅
駅数:24
##宮脇氏、後藤寺駅から添田駅に向かう。
■ 2万キロ#3章
宮脇氏は添田駅にはなんなく到着する。2万キロでは静かな駅とあるが、現在は静かすぎる駅となっている。
添田線は廃止となったが、日田彦山線の添田駅としては現役である。
添田線は当時すでに廃線の兆しをみせており、2万キロでは収支係数を引き合いにだして、赤字ぶりを説明している。
添田線がどの程度の赤字かというと 100円の収入に対して支出は3,376円 と。
そういったこともあって国内ナンバー1の赤字路線でもあった。ただし、常時ナンバー1ではなく、北海道の美幸線とその座を争っていたようである。
その添田線の走る添田町と美幸線の走る美深町は、赤字路線が取り持つ縁で1981年10月に姉妹町となった。
添田線:廃線
【読み:そえだせん】
廃線時期:1985年4月1日
起点:香春駅
終点:添田駅
駅数:6
■ 2万キロ#3章
添田駅で宮脇氏は犬に吠えられる。宮脇氏が犬に吠えられるというシーンは宮脇氏の著作ではわりとでてくる。
その犬の生存の確認はできなかったが、もし生きているとしたらゆうに100歳は超えていると思われる(人間の年齢に換算)。
■ 2万キロ#3章
添田線は3セク復活もなく廃線となり、あわせて添田駅も廃駅となったが、JR九州の日田彦山線の駅としては現役である。 ウイキペディアには添田駅は
添田町の中心駅
とある。人口9,000人切るマチの中心駅とは、だいたい想像はつくが、上下でだいたい1時間に2本の割合で停車する。
【 添田駅#現 】
■ 2万キロ#3章
2020年の現在、添田駅から南の夜明駅までは不通になっている。
不通とはなったのは2017年7月の集中豪雨以来だが、2020年12月の現在でも復旧どころか復旧するかどうかでもめている。
被災前にこの区間は 年間2億6,600万円の赤字 であり、被災とは関係なく儲からない路線であった(*1)。
復旧には約70億円が必要とされており、それをだれが負担するかといった問題もあるが、儲からない路線に70億円の投資と考えると不要としか思えない(*2)。
*1 日本経済新聞20181026
*2 日本経済新聞20171110
■ 2万キロ#3章
JR九州の態度もわかる。JR九州は民間の会社であり、儲けないといけない。
JR九州は復旧費用もバス路線に転換した後の維持費用は負担したくはないと思える。
公共輸送を担う役割もあるが、株式の会社であり、利益を上げ配当を出さないといけない。
沿線地域の住民は増えるとは思えない。となると復旧に後ろ向きになるのは、自然の成り行きである。
この問題:議論中(いちおう決着)
〓 添田線への乗線
【 添田線 】
S:香春駅
G:添田駅
##宮脇氏、添田駅から香春駅へ
■ 2万キロ#3章
宮脇氏は添田駅に16:24に到着し、同駅を16:56に出発するまでの32分間、犬に吠えられる以外、なにをして時間をつぶしたかは2万キロには記載はない。
添田駅を出発すると、2万キロには上伊田駅が登場する。同駅は添田線廃線ともに廃駅となった。
同名他駅としてJR日田彦山線の上伊田駅と平成筑豊鉄道の上伊田駅があるが、宮脇氏乗線時はこれらの駅と添田線の上伊田駅は別個に存在していた。
■ 2万キロ#3章
宮脇氏は17:18に香春駅に到着する。冬至すぎの九州のこの時間はまだ暗くなかったのか香春岳をみている。
香春岳は夕日を浴びているようで2万キロには
一層凄愴
と、ある。添田線の香春駅はJR日田彦山線の現役の駅であり、同駅を出ると香春岳がすこぶるよく見える。削られすぎて台形状になっているのもよくわかる。
【 香春駅#現 】
〓 添田線完乗@17:18香春駅到着
添田線:廃線
【読み:そえだせん】
起点:香春駅
終点:添田駅
駅数:6
##香春駅から豊前川崎駅へ
■ 2万キロ#3章
宮脇氏は香春駅到着後4分で次の乗線区に向かう。4分もあれば香春岳は、十分ながめられたのではないだろうか。
宮脇氏は本日3度目の伊田駅を通過し、次の上山田線乗線のため豊前川崎駅に降り立つ。
〓 上山田線への乗線
【 上山田線 】
S:飯塚駅
G:豊前川崎駅
##宮脇氏、豊前川崎駅から飯塚駅へ
■ 2万キロ#3章
当時、宮脇氏は出版社の役員であった。
九州を乗り回すこの3日間は年末年始の休暇を利用しての乗線と思われるが、役員だけあって残業への意識は高いのか、日没近くの乗線は避ける傾向がある。
しかし、明日の乗線のため博多まで行かねばならず、その途上に未線区があったことも災いし、乗線続行となった。
■ 2万キロ#3章
豊前川崎駅は現存する駅である。ただし、JR日田彦山線の駅としてである。
2万キロの9章でもたびたび登場する駅であるが、登場回数のわりにはマチはさみしい。 豊前川崎駅につながる田川伊田駅、田川後藤寺駅などの駅がある田川市も同様にさみしい。
【 豊前川崎駅#現 】
■ 2万キロ#3章
2万キロの上山田線では乗車と下車以外の駅では上山田駅と下山田駅が登場する。
両駅とも山田市にある駅だが、山田市は2006年3月に市町村合併で消滅した。2万キロでも山田市については
市政返上の話もあるという。
と、書かれている。実際、30年後に消滅し、嘉麻市となった。
■ 2万キロ#3章
2万キロでは、たびたび沿線市町村の状況をかいまみることができる。
便数の少なさや沿線の状況からも判断でき、ここでも「淋しいところ」と書かれている。
このところ田川市、嘉麻市とも社会保障費が膨らんでおり、
住民一人当たりの扶助費は
国内2位 田川市 21万 404円
国内4位 嘉麻市 19万1,263円
となっている(*)。高齢化するうえに人口は減っていくため、マチの将来に展望がない。
* 出所不明(忘れました)
■ 2万キロ#3章
宮脇氏、2万キロでは市政返上だとかいう話ばかりで自身の行動にはさほどふれていない。
未線区の乗線が12月の夕方では真っ暗でなにもみえないからだろうか。
それとも九州シリーズの第1幕が終了するからだろうか。いずれにしても記述はあっさりしている。
■ 2万キロ#3章
出発駅の豊前川崎駅を出ると、上山田駅、下山田駅が登場する。
上山田線はすでに廃線となっているので両上下山田駅も廃駅となっている。
現在、上山田駅は、嘉麻市の図書館の敷地内に上山田駅があったことを示す信号機がモニュメントとして残されている。
宮脇氏は同一路線であるが上山田駅で飯塚行に乗り換え、下山田駅を通過し、飯塚駅に到着する。
文中では次回予告ではないと思われるが、下山田駅を通過後分岐する漆生線にふれている。
宮脇氏は豊前川崎駅を出発した約1時間後に飯塚駅に到着し、上山田線完乗となる。
上山田線は廃線となっていることから2020年の現在であるなら、豊前川崎駅から飯塚駅までは別ルートの乗車となる。
【 信号モニュメント#現 】
〓 上山田線完乗@18:42飯塚駅到着にて
上山田線:廃線
【読み:かみやまだせん】
起点:飯塚駅
終点:豊前川崎駅
駅数:10
##飯塚駅到着後、博多駅へ
■ 2万キロ#3章
宮脇氏は飯塚駅に到着し、3日間の九州内の路線完乗第1幕を終えた。これで九州内の未線区は10線区となった。
九州内を終えたからといってここで第3章は終えたわけでなく、さらに加古川線など他地方の未線区に翌日から乗る。
第3章はそれら路線の完乗体験が書かれている。
■ 2万キロ#3章
宮脇氏は飯塚駅到着後、翌日の未線区への移動のため一旦博多駅まですすむ。
2万キロの文中には飯塚駅から博多駅まで快速列車で47分とある。2020年の現在は快速電車であるなら、それより少々早くはなる。
飯塚駅のある飯塚市は、旧産炭地のネガティブなイメージのあるマチであったが、鉄道で博多駅から1時間圏内という場所もあって福岡市のベッドタウンとして、活力を取り戻しつつある。
人口の動態に神経質になっているマチでもあり、過去市長を務めた人物の「カネを賭けなければマージャン人口が減る」という発言で、瞬間的に全国的に知られたマチになった。
#この時点@博多駅
■ 2万キロ#3章
宮脇氏はなんなく博多駅に着く。21時18分に出る特急寝台車に乗る予定であるが、それまで1時間半ほど待ち時間がある。
2万キロの文中に
一人で祝宴を張りたい。
とある。この祝宴は九州内未線区路線完乗の第一幕終了のためかどうかわからないが「祝宴」とある。
完乗の途中しかも継続する日の途中での「祝宴」でもあるので、やはり宮脇氏が九州内の未線区路線完乗の第一幕終了のために催してくれた祝宴と思いたい。
■ 2万キロ#3章
どういう目的の祝宴かがわからないが、宮脇氏は博多駅の地下で飲むことになった。
博多駅は宮脇氏登場後なんども改修があったので、当時と同じものかどうかはわからないが、当時からそれらしき飲み屋はあった。
宮脇氏は鉄則通り「混んでいる店」に入り、日本酒とふぐ刺しをオーダーする。
■ 2万キロ#3章
祝宴だけにふぐ刺しとはグレードが高い。オーダーした日本酒は、宮脇氏のヨミ通りさっさと運ばれてきた。
ふぐ刺しはさばく手間があるのか、日本酒よりは遅れて運ばれてきたが、それでも早いと感じたようだ。
疑義が生じた宮脇氏は切り方にムラがあると判断し、そのなかでも飛び切りうすい1枚をつまんで見透かしてながめていた。
「なにか気に入らんと」
2万キロの文中には店の女性スタッフにそういわれたとある。
九州の女性の性格を一瞬で表現したような描写である。女性は絣姿らしく、地元には久留米絣もあり、地元の特徴をこれまた表現している。
■ 2万キロ#3章
博多駅ビルの地下の店ではすごまれたようだが、びびって店を出ることなく、21:18発の列車の発車ベルがホームに上がったときに鳴るほどになるまでゆっくり飲んでいたようだ。
宮脇氏は無事に乗車し、目的地の駅で無事に下車した。以降は九州以外の場所での乗線となる。
時刻表2万キロ第3章 宮脇氏を追うはここにて一旦終了。第9章に続く(かも)。
ここにて3章は終了。宮脇氏を追う 2万キロ#3章 ④/4
リサーチに協力していただい方々に感謝いたします。
一方、リサーチに協力していただけなかった方、次回ご協力にお願いいたします。
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【注意】
地図はグーグル・ヤフーより加工
価格・数量などは初回公開当時のもの
画像は下手上手関係なくローカライズド(LCD)
なお、取材日当日でないものもアリ
現地に赴く場合は、公式情報を確認されてから行くように
初回リリース:20210109
ここで紹介したことはすでに過去の情報となっていることを申し伝えておきます。
マチとの遭遇 九州編
#オールラウンド九州(ARQ)
製作:ローカライズド(LCD)
■ メンバー
#1 風戸ケイキ(リサーチ)
#2 ワリアイト・リョウ(リサーチ)
#3 タシロ(プレス)
旅とカットソーシリーズ 2021
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