焼酎のお話です。2010年代、総理のポジションは安倍さんではない別のだれかではじまりましたが安倍さんがずっとその座にいて終わった感があります。国内の焼酎業界もなんとなくそれに似ています。2010年代のはじめに焼酎業界のナンバー1の座にいいちこがいて、その後はクロキリという具合に。焼酎は九州の地場産品だけに、九州人としては地元メーカー勢にがんばってほしいところですが、ここにきて売上に伸びがなく、息切れした感があります。なお、本号では焼酎をコクやキレなどの飲み口ではなく、ビジネス的視点で解説いたします。
焼酎
しょうちゅう
本号は九州を舞台に内容がすすみます。ちなみに九州は①福岡県、②佐賀県、③長崎県、④熊本県、⑤大分県、⑥宮崎県、⑦鹿児島県の7県です。
制作
ローカライズド(LCD)
2022
【注意】
アルコールを扱っているコンテンツですが内容からして20歳以下でも十分問題ないと思います。
■ 焼酎@九州
2010年代、政権は前年の菅さんからはじまり野田さん、安倍さんとつながり、菅さんで終わりました。
菅さん→菅さん
読み方と所属政党は違っても漢字は同じでした。
■ 焼酎@九州
2010年代の焼酎業界はそうではなく、2011年は前年売上高トップの三和酒類が引き続き業界トップでした。
三和酒類 → 霧島酒造
しかし、翌年以降は霧島酒造は三和酒類の売上高を抜き業界トップとなり、その後もトップをキープしたまま、2010年代の焼酎業界は終わりました。
なお、本号に登場する売上高や業界ランキングはことわりのないかぎり株式会社帝国データバンク福岡支店の情報をもとにしています。
ありがとう
帝国データバンクさん
■ 焼酎@九州
帝国さんの情報によると2010年代の焼酎メーカーの上位10社は12社によって、争われていることがわかります。
焼酎メーカー売上高
上位10社企業
2010年代
- 霧島酒造
- 三和酒類
- オエノングループ
- 雲海酒造
- 二階堂酒造
- 濱田酒造
- 薩摩酒造
- 若松酒造
- 高橋酒造
- 本坊酒造
- 美峰酒類
- 宮﨑本店
2020年の売上ランキング順に並べています。
■ 焼酎@九州
帝国さんは自社売上高の50%以上が焼酎でないと焼酎メーカーと認めず、焼酎を製造していても焼酎売上50%超でないとランキングには入れさせていません。
宝酒造(@京都市)は、一刻者などの焼酎を販売していますが、売上高全体に占める焼酎の売上比率は小さいためこのランキングには登場しません。
■ 焼酎@九州
上位10社を国内12社で争うなか9社は九州に本社のあるメーカーです。
かなり距離の近いところでの競争となりますが、それだけ九州に集中しているともいえ、焼酎は九州の地域経済をけん引するアイテムといえます。
■ 焼酎@九州
焼酎の粗いイメージと九州人のワイルドなイメージがあいまって焼酎は九州のブランド形成に役立っているのではないでしょうか。
閑話休題
■ 焼酎@九州
焼酎は2021年のいままで3度のブームがあるとされています。
- 第1次(1970~79年)
- 第2次(1980~85年)
- 第3次(2000~07年)
戦後ながらくアルコールの消費量でもっとも多かったのは日本酒です。
しかし日本酒は1959年にビールに抜かれ、2003年には焼酎に抜かれました。
その後日本酒と焼酎の差はひらくばかりで2019年にはその差1.6倍ほどになりました。
日本酒 45.2万kℓ
焼酎 75.6万kℓ
* 国税庁HP#長期時系列データ
■ 焼酎@九州
焼酎の第1次ブームをけん引したのは、さつま白波です。
さつま白波
薩摩酒造(@枕崎市鹿児島県)
いまとなってはロクヨンのお湯割りで知られた飲み方が、九州の一大ビジネス街=消費地である福岡市で受け入られ、その後全国に広まり、自社と自社商品を国内に知らしめました。
【 さつま白波 】
■ 焼酎@九州
第2次ブームをけん引したのは、いいちこです。
いいちこ
三和酒類(@宇佐市大分県)
下町のナポレオンのキャッチフレーズで知られた麦焼酎です。
キャッチフレーズの良さもあるのですが、アーティスティックな宣伝広告が、感度の高い(そうでない人も)都会のビジネスマンに受けたようです。
【 いいちこ 】
■ 焼酎@九州
第3次ブームをけん引したのは、クロキリです。
黒霧島
霧島酒造(@都城市宮崎県)
クロキリ登場前、焼酎は麦焼酎が主流でしたが、霧島酒造のイノベーションによって芋を原料とした芋焼酎を製造し、東京を中心にしたマーケティングでシェアを伸ばしました。
【 黒霧島 】
■ 焼酎@九州
2010年代の焼酎業界は2011年に三和酒類が1度だけ売上高ナンバー1となりましたが、以降は霧島酒造の独壇場となりました。しかもその差は年々開きます。
2004年の売上高
- 三和酒類 587億円
- 霧島酒造 176億円
2020年の売上高
- 三和酒類 429億円
- 霧島酒造 625億円
霧島酒造は3.3倍差を逆転し、9年連続でトップの座をキープしています。
■ 焼酎@九州
焼酎業界はトップ企業の交代の前から焼酎全体の消費量を減らしていました。
焼酎の消費量のピークは2007年の100.5万kℓでした。 ちなみにアルコール全体での消費量のピークは1996年であり、以降落ち込んでいます。(*)
人はだんだんとアルコールを飲まなくなりました。
*国税庁HP#長期時系列データ
■ 焼酎@九州
焼酎はアルコールの消費量が落ち込むなか、伸ばしていましたが、その上昇基調も2007年までした。
焼酎にかぎっては1996年から2007年までの間、イイ思いをしました。
■ 焼酎@九州
2012年にトップ企業は三和酒類から霧島酒造に入れ替わります。
以降、帝国さんのデータによると三和酒類はほぼ毎年売上を減らすも霧島酒造は伸ばしてきました。
■ 焼酎@九州
焼酎業界は2007年の消費量のピークから2019年の現在、4分の1減らしています。
そういったなかで売上を伸ばした霧島酒造の経営は評価に値すべきであり、都城といった弱小地方都市に立地していても、シェアトップ企業を実現できるということを示しました。
ちなみに霧島酒造の本社のある都城市はふるさと納税の寄附金額で3回日本一となっています。
― 都城はここに ―
■ 焼酎@九州
三和酒類が落ち込んだといっても上位2社で売上上位10社の半分を占める寡占状態が続いている状態では、焼酎業界に未来はありません。
アルコール市場は縮小するなかでも焼酎は消費を伸ばしてきましたがその焼酎も2007年からは国内消費量は減っており、人口減少にともなう高齢化やヤングの酒離れなど、コロナ禍もあいまって市場として有望とは言い難くあります。
帝国さんのレポートによると2020年は調査対象である焼酎メーカー売上高上位50社のうち赤字企業は11社、減収企業は39社となっており、焼酎は日本酒よりも消費量が多いといっても将来は暗いです。
■ 焼酎@九州
第1次ブームをけん引した薩摩酒造は2010年代に入る前の2010年には業界3位につけていました。
2011年に入ると4位に転落し、一旦は3位に浮上するも5位、7位と転落し2020年は業界7位にとどまっています。
■ 焼酎@九州
焼酎第1次ブームの立役者でしたが、ブームをけん引してもそのポジションの維持は難しいようです。
薩摩酒造といえばロクヨンの白波ですが オヤジ臭い あるいは イモ臭い とヤングあるいは女性に嫌気されています。
九州に住むO-50の自分からすると、オヤジイメージがあるのが焼酎であり、イモ臭いのが焼酎なのですが、マーケットはそう評価しなかったようです。
■ 焼酎@九州
薩摩酒造の本社と工場は枕崎市にあります。台風がよく来ることと鰹節の産地であることぐらいのマチで、これといった産業があるわけではありません。
国内どこにでもあるマチのように年々人口は減っています。
そういったマチですが、世の中にブームを呼んだ会社と製品がありました。
■ 焼酎@九州
ヤングに受けないと業界ポジションの浮上はないという危機感からか、同社もヤングをターゲットにした商品をリリースしました。
さつま白波のハイボールということで商品名は
whitewave
日本の南端でシャレのある商品をリリースしています。
■ 焼酎@九州
いいちこ、クロキリと新興勢力の登場で薩摩酒造と同じく、落ちていくメーカーがあります。
高橋酒造
同メーカーは米焼酎である球磨焼酎の産地人吉市に所在するメーカーです。 高橋酒造といえば白岳(はくたけ)です。
■ 焼酎@九州
球磨焼酎勢は、小粒ぞろいなのか業界10位内には2010年代は同社のみ顔を出しています。
2020年夏の水害で地元は壊滅状態とのことですが、同社は2016年から業界ポジションを下げており、産地復活の意味もこめてがんばってほしいところです。
■ 焼酎@九州
シブく(いやしぶとく)売れ続けるのは二階堂酒造(日出町)です。
二階堂酒造は三和酒類と同じく大分県のメーカーであり、麦焼酎:二階堂で知られた銘柄のあるメーカーです。
2011年の業界売上ランキングは5番手でしたが、2020年までになんどか4位に浮上することもあり、しぶとく業界ポジション5位あたりを維持しています。
■ 焼酎@九州
二階堂酒造は会社としては有限会社で、小規模企業のようですが、地元では名士的な存在として格があり、同業の三和酒類とはやや扱いのちがうところがあります。
焼酎メーカーは同族企業が常であり、同社もそういった企業の一社です。
だからかノブレスオブリージュの精神があるのか地元のスポーツ団体のスポンサード、美術館の財団運営など、名士的なふるまいがされています。
■ 焼酎@九州
名士であることだけが理由ではないでしょうが、そういった存在もあって地元では底堅い売り上げが見込めるために、上位に変動があっても、自社はポジションを下げることなく、業界ポジションを維持できると思われます。
■ 焼酎@九州
業界ポジションは維持できても、売上高を維持するのは難しいようです。
2010年には180億円あった二階堂酒造の売上高は2020年には141億円になっています。
ちなみに同社の業界内ポジションはこの2年度だけをくらべると5位から4位に変化しています。
■ 焼酎@九州
人口減などによるアルコール市場の縮小や霧島酒造の躍進もあって、焼酎業界の競争も激しくさが増します。
さらに九州勢をおびやかす存在として他地方の焼酎メーカーの存在があります。
焼酎市場はほぼ九州の焼酎メーカーの独壇場でしたが、2017年に突如としてオエノングループが登場しました。
オエノングループ
@東京都墨田区
■ 焼酎@九州
同社は以前から焼酎の製造はしていたのですが、帝国さんの基準では該当しないためはランキングにあらわれていませんでした。
しかし、帝国さんの基準を満たした2017年に3位で登場して、その後2020年までその座をキープしています。
■ 焼酎@九州
割りを食ったのは3位以下の地元九州のメーカーです。
その年の雲海酒造、二階堂酒造、薩摩酒造、濱田酒造は前年より順位を落としました。
そういったなかでも二階堂酒造は2020年には前年5位から4位に順位を上げています。
ながらく二階堂酒造より上のポジションにあった雲海酒造を蹴落としての順位上げです。
九州内での競争は激しいようです。
■ 焼酎@九州
焼酎業界上位企業は12社のうち3社は九州外にある本社のあるメーカーです。 その3社とは
- オエノングループ
@東京都墨田区 - 宮﨑本店
@三重県四日市 - 美峰酒類
@群馬県高崎市
です。
オエノングループは東証1部上場企業であり、帝国さん基準でいくと焼酎メーカー唯一の上場企業となります。
■ 焼酎@九州
キンミヤ焼酎で知られる宮﨑本店は社名こそ「みやざき」とありますが、九州外のメーカーです。
美峰酒類も同じく九州外の焼酎メーカーです。 関門海峡を越えるのは難しいのか九州では同社の商品をなかなか見かけることはありません。
■ 焼酎@九州
美峰酒類は2011年には業界9位でしたが、その後順位を落としていき、2017年からは上位10位から外れました。
一方、宮﨑本店は2020年に10位に顔を出し、2020年は焼酎メーカー上位10社のイス2席を九州以外のメーカーに渡してしまいました。
■ 焼酎@九州
2020年代の焼酎業界は九州勢にとってはさらなる競争となりそうです。といっても2010年代のはじまりもそうでした。
業界に動きがあってこそ業界というものです。
■ 焼酎@九州
そういえば九州の長崎県に壱岐(いき)という離島があります。
同地は壱岐焼酎の産地であり、新聞の広告で「世界が認めた壱岐焼酎」とあるのをわりとみかけます。
ー 壱岐はここ ー
■ 焼酎@九州
世界が認めたとするのは、当該産地がWTOの地理的表示の指定を受けたという事情からのようですが、焼酎メーカーのランキング30位に壱岐焼酎のメーカーが1社顔を出すていどでは、世界うんぬんの前に地元企業の努力が必要といえないでしょうか。
■ 焼酎@九州
焼酎は九州の固有の財産です。
九州の人も九州でない人も消費拡大、しいては地域ケーザイのためにも大いに飲みたいところです。
本号はここまで
2010年代の焼酎業界 20歳以上の九州人へ。
リサーチに協力していただい方々に感謝いたします。
一方、リサーチに協力していただけなかった方、次回ご協力にお願いいたします。
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なお、取材日当日でないものもアリ
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初回リリース
20220108
ここで紹介したことはすでに過去の情報となっていることを申し伝えておきます。
マチとの遭遇 九州編
#オールラウンド九州(ARQ)
製作:ローカライズド(LCD)
■ メンバー
#1 風戸ケイキ
(リサーチ)
#2 ワリアイト・リョウ
(リサーチ)
旅とカットソーシリーズ
2022
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