■ 2015年7月のある金曜日の夕方 五十番にて 1
17時31分、商店街の一本裏の薄暗がりの細い路地をすすみ、店に入る。五十番とは店の名前、地元久留米では餃子の名店とのこと。
インターネット上でも評判の店であり、口コミも肯定的。店内すでに先客あり。美人一人客と目が合う。なぜか会釈をされる。
焼き餃子二人前をオーダーする。メニューは餃子のバリエーション違いである水餃子か焼き餃子、キムチ、オニギリしかないためオーダーには迷わずにすんだが、飲み物は
①ビール ②サケ ③焼酎
のどれにしようかと迷った挙句、高止まりのままの尿酸値を気にして焼酎のお湯割にした。
なお、一見の一人客でも居心地は悪くない。
【 お店の前 】
マチとの遭遇 九州編
久留米/くるめ
20160101現在
■ 久留米のポジション 1
久留米は九州の福岡県にある「市」です。行政区では福岡県久留米市です。地理的ポジションでは福岡県南部にあり、筑後地方にある町となります。
読み方は「くるめ」、東京の多摩地域に東久留米市がありますが、姉妹都市でも友好都市でもありません。
読み:くるめ
久留米は人口で県内3番手、財政規模で3番手、市町村内総生産額でも3番手、経済の目線ではなにかと3番手になる町です。
ちなみに同じ福岡県内では、経済目線になると1番手は福岡市、2番手は北九州市となります。
【 久留米市はココに 】
■ 福岡市アリ
久留米市から直線距離で50キロ離れたところに九州最大のビジネス都市があります。人口とともに会社の数も違います。
久留米市 | 福岡市 | |
人口 | 30万6,519人 | 153万900人 |
事業所数 | 13,752事業所 | 68,821事業所 |
本社数 | 3,424社 | 20,251社 |
久留米市と福岡市は、人口比では1:4.9、会社数比では1:5.0、本社数では1:5.9です(*1)。圧倒的に福岡市にリードされています。
*1 人口 平成27年8月1日現在 久留米市:久留米市総務部総務課:久留米市の現況
福岡市:福岡市総務企画局企画調整部統計調査課:福岡市推計人口
事業所・本社 平成24年2月1日現在 ともに総務省統計局:経済センサス(平成24年)
■ ゴム 1
ゴムの木が自生しているわけではありませんが、久留米はゴムの町と知られている町です。
そういわれるまでになったのは、地元のゴム製造業が大きく発展し、それとともに町も発展してきたからです。
「ゴムの町 久留米」をしめすようにJR久留米駅の広場には、ブリヂストン製の世界最大のタイヤがモニュメントとしておかれています。
同モニュメントはブリヂストンから寄贈されたタイヤで、同社は久留米を発祥の地としています。
■ 久留米シティプラザ 1
銀行が立地する場所は地価も高いものです。久留米市内の商業地でもっとも地価の高い一角は、地元筑邦銀行の支店を含めて3件ほど銀行が立地しています。
銀行の他には、オフィスビル、教会、幼稚園、ファミリー向けマンションなどが建っており、ビジネス街でありながら住宅地でもあります。
17万1,000円/㎡(*1)
久留米市日吉町16番16
鑑定評価書によると、地域要因の将来予測は以下のように記述がされています。
銀行や事務所などが建ち並ぶ久留米市随一のビジネスエリアで、地域的には熟成していることから当面の間はビジネスエリアとして現状を維持すると予測する。地価水準については概ね横ばい傾向で推移すると予測する。
この一角の国道209号線をはさんだ向かい側の33,748.33㎡に、165億円が投じられました。
現在、2016年春にオープン予定の久留米シティプラザの建設まっただなかであり、工事関係車両がせわしくなく出入りしています。
165億円のいわゆる「ハコモノ」の施設の建設です。合併特例債を活用するなどファイナンスにはぬかりがないものの、それでも3割は起債者(=久留米市)が返済しなければならないため、今後の市の財政が気になります。
*1 国土交通省 地価公示
【 建設中の久留米シティプラザ 】
■ 久留米シティプラザ 2
六角堂広場は、地元商店街に隣接する広場であり、火事で空き地になった後のややこしい再開発事業も頓挫した後、久留米市とその第3セクター:株式会社ハイマート久留米が、なんとか調整して整備した広場です。
広さ:野球のグランド並み
構造物といえばステージと公衆トイレがあるぐらいで、その広場に29.4億円投資して広場として利用します。
主にイベントとして活用される広場であった六角堂広場は、その後のご当地グルメでの町おこしの火付け役となった「久留米焼きとり日本一フェスタ」が開催されていた場所でもありました。
ただ、構造物のわりには投資金額の大きさからすると用地買収などの調整に苦労があったとうかがえます。
2003年6月にオープンするも、久留米シティプラザ計画のため2013年3月に閉鎖されます。
実質稼動期間は117ヶ月、1ヶ月あたり2,512.8万円の投資はその後のB級ご当地グルメブームがあったものの地元への経済効果は小さかったのではないでしょうか。
■ 市税
「税収のいい町」というのは少々複雑な気分になります。
久留米市の一人あたり市税は12.9万円です(2013年度)。県内60市町村のなかで10番手です。
市税は毎年ジワリジワリと上がっています。2009年度から5年間、人口はジワリジワリと減るなか、市民個人税は増収となっていますので市民の皆様の所得は増えているようです。
納税義務者は増えていることはたしかですが、株式の売却益や配当収入あるいは先物取引による収入増が市税の増収の要因となっているようです。
久留米のビジネスは活発だったのか、市民法人税も増収となっています。一方、固定資産税は減収となっています。
地価の下落が大きな理由と考えられますが、納税者としては固定資産税の軽減はありがたいものの住民としては町の地価の低下はやや複雑です。
■ B級グルメの聖地久留米 1
久留米には世界遺産はありませんが、聖地があります。
その聖地をあがめるのは教祖でも神でも救世主でもなくB級グルメですが、地元の観光系財団法人は、「B級グルメの聖地久留米」というタイトルでホームページを運用しています。
ちなみに「聖地」とかいて「まち」と読ませています。
久留米/グルメ
ダジャレは人の記憶に残りやすいものです。久留米(くるめ)だからグルメというダジャレは安直すぎる気もしますが、久留米市は「B級グルメの聖地」と標榜し、B級グルメで町の活性化に取り組んでいます。
久留米がB級グルメの聖地という根拠を示す食べ物群
- やきとり
- ラーメン
- 餃子
- うどん
【 久留米市内の焼き鳥屋さん 】
■ B級グルメの聖地久留米 2
聖地といえるほどの証拠や内外からの評価は人さまざまですが、当地はとんこつラーメン発祥の地でもあり、ご当地ヤキトリブームに火をつけた先端都市でもあります。
そういった実績よりも「言った者勝ち」なところがあるのがこの"業界”の特徴ですので、聖地であることもとがめられません。
歴史の浅いB級グルメ業界のなかでも久留米は、地元の食べ物をネタに町の活性化に取り組むフロンティアでもありました。
地元経済団体を中心とし地元B級グルメの団体「B級グルメの聖地久留米実行委員会」は、2010年1月に地域づくり総務大臣表彰を受けています。
■ 合併ビフォーアフター
同地の近隣市町村は合併を選んだわけですが、町にとって競争力がおとろえた面は否定できません。
久留米市の市町村内総生産額を合併前後で並べると以下のようになります。(*1)
合併前 2004年度 9,567.4億円
合併年 2005年度 9,431.4億円
合併後 2006年度 9,162.9億円
ちなみにこの間、自県福岡県の県内総生産額は、多少なりとも「増」でした。
2007年度に9,678.2億円とピークとなるも2012年度まで2年度ほど合併年度の市町村内総生産額を超えることはありましたが、見た目には下り坂です。
*1 福岡県:ふくおかデータウェブ
■ 土地の有効活用
大きな川があると、それを境に行政区が分けられます。一級河川である筑後川もその例です。
久留米市の対岸は佐賀県ですが、一部、対岸の土地も久留米の行政区になっていたり、その反対となっている土地もあったりと、いわゆる「線引き」が複雑です。
線引きが複雑になるのは、今と昔では川の位置が違うからです。いまでも筑後川は蛇行しているのですが、昔はもっと激しく蛇行していました。
そのため河川整備によって直線とまではいきませんが、水害をおこしにくい川としました。線引きが複雑になるのは、蛇行していた昔の名残です。
以前、地元市議会で久留米市の職員が地元に住んでいないと指摘がありました。
地元久留米市よりも筑後川の対岸の鳥栖市のほうが固定資産税は安いため同職員らはそちらに住んでいたということです。
ちなみに2015年1月時点の固定資産税の税率は両市ともに1.4%ですが、都市計画の税率は久留米市0.3%、鳥栖市0.2%となっています。土地の有効活用も難しいものです。
【 筑後川 】
その1 終了
注意 情報は2016年1月1日現在のものです。
現地の状況は刻々と変化しています。
現地に行って確認することをおすすめします。
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