マチとの遭遇 九州編

@佐世保 

佐世保 その14

2021年08月09日 11:09 by keiki-kazeto
2021年08月09日 11:09 by keiki-kazeto

佐世保市民一人当たり市町村民所得 佐世保市島瀬町 奨励金 シャチョー SSK ハウステンボス セイルタワー 高校1年生 城島健司ベースボール記念館 【 マチとの遭遇#その14 】

佐世保/させぼ

20150401現在

【 矢印のあたりが佐世保 】©グーグル

■ 235.2万円 # 佐世保市民一人当たり市町村民所得

 お父さんに金持ちと貧乏があるように自治体にもそれがあります。町の競争力のバロメーターの一つに一人当たり市町村民所得があります。大きければリッチな自治体、小さければそうでない自治体です。

 なかでも規模にくらべて大きな自治体は、リッチなうえにスマートな自治体といえます。佐世保の場合はその反対の町ではないでしょうか。 

  • 235.1万円 長崎県の一人当たり市町村民所得(国内40位)
  • 291.5万円 平均的一人当たり市町村民所得

 一人当たり市町村民所得では、佐世保市は県内平均並ですが、国内平均ではかなり下となります。

【 佐世保市 】 

   佐世保市は、県内では面積はもっとも広く、人口、会社数の多さでは長崎市に次いで2番目です。しかし、面積のわりには経済基盤は心もとなく、一人当たり市町村民所得は6番目となります(*1)。

 長崎県市町村別一人当たり市町村民所得上位6自治体(平成23年度) 

自治体名 @市町村所得
西海市 412.7万円
佐々町 255.5万円
時津町 250.2万円
長崎市 249.2万円
長与町 250.2万円
佐世保市 235.2万円

 

 県平均 235.1万円 

 一人当たり市町村所得で佐世保市より上位にある長崎市以外の市町村は、市町村民所得のわりには人口が少ない(西海市は市でありながら長与町よりも人口が少ない)こともありますが、企業所得の大きさに特徴があります。

 一方、佐世保は佐世保重工業、ハウステンボス、ジャパネットたかたといった大企業があるにもかかわらず一人当たり市町村所得が低くなってしまうのは企業所得が大きくても人口も多いため経済効率の悪い自治体ともいえます。

注意:一人当たり市町村民所得は①雇用者報酬②財産所得③企業所得の3つの所得で構成され、個人の所得を示すものではありません。

*1 長崎県(平成23年度長崎県の市町村民経済計算)

■ 57万2,000円 # 地価公示:佐世保市島瀬町9-8

 佐世保のもっとも地価の高いスポットは日本一元気な商店街にあります。その価格は1平方メートルあたり57万2,000円です(*1)。

 同地点は宝飾店であり、高い場所では高いものが売られています。

【 佐世保市島瀬町9-8 】  

 ちなみに同時期の東京都中央区銀座2-6-7の地価公示価格は2億2,600万円です。同じ日本のビジネス街の土地でも日本の西の端であると大幅ディスカウントとなります。

1993年 417万円

 ディスカウントは場所の違いだけではなく、時の流れでもなされます。上記の地価公示価格は1993年1月1日の島瀬町9-8のものです。20年たつと1/7となります。

*1 国土交通省地価公示 2014年7月1日調査基準日

■ 7億3,723万円 # 7年間の奨励金交付実績

 減るのは人口だけではありません。会社も減っています。市では企業立地推進局を置き、市長、副市長ともにわが町への工場誘致のためトップセールスに励んでいます。

 民間企業よろしく佐世保市長の"上司”地元県知事と同行営業をするなどして、おらが町への企業誘致に汗をながしています。

 企業へは地元佐世保への進出のインセンティブとなるように、工場や研究所の新設あるいは増設などの設備投資にかかる費用を一部、奨励金という形で助成しています。2006年度から現在まで続いており、これまでの実績は以下のとおりです。

 製造業  新設  4件 
 増設10件 
 移設  5件 

 非製造業
(コールセンターなど)

   新設 3件 

 

 奨励金の交付実績は7年間で7億3,723万円です。その内容は土地を取得した場合ですと、固定資産税の半額を補助、人を雇用した場合、雇用奨励金として一人当たり50万円ほど企業に交付されます。

 奨励金はいわばインセンティブですが、1年間に1億円ほど進出した企業などに交付して、企業は働き口の提供、納税という形で還元します。

 新規雇用は2012年3月時点で1,070名でした。ただ、あくまでも交付を受けた企業が雇用した人数であって、純増となったかはわかりません。

 佐世保は製造業の町ということもあって奨励金交付企業には製造業が多いのですが、非製造業でもコールセンター業務の企業が佐世保に進出してきています。

 交付金を受けた企業の1社KDDIエボルバは進出時の計画では、雇用者数は630名でしたが、2012年3月時点で484名、計画には達していません。

 同地の人たちは言葉のイントネーションが優しく、話すスピードが遅すぎないといわれており、コールセンター向きの人材は多くそろっているので、潜在的可能性はあるのではないでしょうか。

 同地にはそういった"地域資源”を必要として、成長をとげた通販会社のジャパネットたかたの実例があります。

■ 66歳 # 高田明氏

 ジャパネットたかたはテレビも販売しますが、テレビでも販売します。いわゆるテレビショッピングですが、この販売スタイルは商品の紹介をする担当者いわゆるMC(読み:エムシー)のトークのうまさに売上が左右されます。

 MCに吉本興業のタレントを使っていますが、もっとも売るのは高田明氏です。

 会社のマネジメントは「私にできないことを10倍くらいできる」長男旭氏にまかせることはできても、MCの育成は今後待ち受ける課題です。

 MCを自社でもかかえていますが、高田明氏にくらべれば売上はまだまだとのことです。

 同氏退任とともに佐世保の通販会社が、ITへのインフラ投資に傾斜して普通の通販会社とならないか心配です。明氏在任中の同社の競争力の源泉はなんであったかは今後、わかることでしょう。

 なお、社長退任後はテレビショッピングの番組では、これまでの「シャチョー」から「高田さん」と呼ばれることになりました。

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