九州にはホテルAZ(ホテルエーゼット)という名称のホテルが多く点在しています。セレブが宿泊するような高級ホテルではなく大衆価格のホテルです。4800円朝食付と外壁にあるホテルを九州ではみかけないでしょうか。数多いあるチェーンホテルのなかでもホテルAZは九州に集中しており、料金も安くあります。本号はそのホテルAZのご紹介です。
ホテルAZ
読み:ほてるえーぜっと
ご紹介するのは九州を中心に活動する地域活性化ユニット:ローカライズド(LCD)です。ちなみにホテルAZからの依頼を受けての解説では、ありませんのであしからず。
ー 本社所在地:大分県大分市 ー
■ ホテルAZ
「ほてるえーぜっと」と読む。「エージー」ではない。業態としてはビジネスホテルであり、東横イン、ルートイン、APAホテル、スーパーホテルなどと同類であり、それらホテルの九州版というところだ。
東横イン以外は、ビジネスホテルという業態を東京以外の場所からはじめている。
ちなみにホテルAZは、九州の大分県が創業の地となる。
【 ホテルAZ 外観 】
■ ホテルAZ
ホテルAZ含めて同業5社のうち、スーパーホテル以外の4社は九州全県に出店している。
スーパーホテルは佐賀県と長崎県に出店していない。
ビジネス系ホテルチェーンのなかでもこれらは低価格帯のビジネスホテルであり、プレミアム感のあるリッチモンドやドーミーインなどとは少々ターゲットがちがう。
そのちがいは出張予算のちがいともいう。ヒラか管理職かの違いでもある。
【 スーパーホテル 】
■ ホテルAZ
各社似ているようでもあり、サービス、経営スタイル、コンセプトなどの差別化はしているようだが、
APAホテルの女社長は独特(オリジナリティ発揮)
というぐらいで各社大きな差は見られない。
差を付けるにはサービスだが、ビジネスホテルとなるとそれほど、相対的に価格が上がってしまうサービスはのぞまれていないので、おのずとちがいは料金となる。しかも「安い」ほう選好性があるようだ。
ちなみに同業5社の価格を調べた。ゴールデンウィーク後の平日、なにもないサービスを条件とした。
各社公式HPに掲載されている料金は以下のとおり。
宮崎市内 シングル 平日1泊 朝食アリもしくは無料 (税込)
ホテルAZ | 4,860円~ |
東横イン | 5,184円~ |
スーパーホテル | 5,200円~ |
APAホテル | 5,900円~ |
ルートイン | 6,300円~ |
結果として上記のようになった。宮崎市内でも立地場所で価格の差は当然あるが、ホテルAZは安く、ルートインは高いという結果になった。
【 ルートイン 】
■ ホテルAZ
ホテルAZは安ホテルチェーンのなかでも「安」い。
安っぽいかどうかは、宿泊した人の主観になるが、安さに特徴、ビジネス的にいえば「価格競争力」があるということになる。
この安さに目をつけた中国、東南アジアからのお客が同ホテルのヘビーユーザーとなっている模様。
この集団とかちあうと、ココが日本かと思える場面に遭遇し、日ごろ日本の防衛などを考えたことがない者でも愛国心がにわか奮い立つ。
ちなみにAPAホテルの政治姿勢は客室にまで入り込んでいるので、大量の外国人集団に遭遇した後だと日本人ならにわかファンになる可能性もある。
【 APAホテル 】
■ ホテルAZ
ホテルAZはアメイズという会社によって運営されている。同社の本社は大分市にある。
同業5社のなかで上場しているのはホテルAZのアメイズだけ。
上場しているからといって経営規模が大きいわけではない。
あわせて上場しているといっても福岡証券取引所という地方証券取引所である。
格が落ちる
各社、事業はビジネスホテル運営だけではなく、ディベロッパー事業や介護事業、出版事業など多角化しているため、単純に比較はできないが売上高は以下の通り(*)。
ホテルAZ | 124.8億円 |
東横イン | 801.4億円 |
スーパーホテル | 290.3億円 |
APAホテル | 1,105.0億円 |
ルートイン | 1,011.5億円 |
この5社のうちホテルAZだけビジネスホテル専業の事業展開となっている。
国内市場は縮小傾向だが、東京五輪までの訪日観光客需要を考えると、この分野は成長すると思える。
ただし、東京五輪後の反動も大きいと思われ、強気な設備投資は長期的にはなんともいえない(あわせて右寄りな姿勢も心配である)。
*スーパーホテル APAホテル ルートイン 自社HP
*東横イン 営業報告書
*ホテルAZ 決算短信 各社とも平成28年度決算
■ ホテルAZ
九州にはホテルAZアリ、といいたいところだが同業他社も出店しているので「だけ」とはいえない。
主要都市部には各社出店しており、特別な事情(例:そのマチにジャニーズあるいはエグザイルが来るなど)がなければ、「泊まるところがない」という事態にはならない。
ただし、これは九州でも主要都市部の話である。
ちょっとイナカにいくとやはり宿がない、あっても民宿もしくは高級旅館・リゾートホテルということもあり、出張予算に上限のあるビジネスマンには大きな課題でもある。
しかし、都合のいいことにこのホテルAZは辺鄙なところ、つまりイナカにある。
■ ホテルAZ
なんでこんなところにある?と思えるようなところに立地している。
ただしド田舎にはない。
クルマでの移動が主となる営業系のビジネスマンなら、ちょっと離れたところにクルマに走らせればAZホテルに当たる。
街中で駐車場に入れるまでの苦労を考えると、クルマを15分走らせるだけで、スムーズに駐車場に入れる同ホテルはありがたい。
しかもお安く泊まれる。
【 スムーズに入れる駐車場 】
■ ホテルAZ
AZホテルのあるところにジョイフルあり。ジョイフルとは、大分市に本社を置くファミリーレストラン。
壁がそびえたつようなデザインをしている同ホテルの1Fに入居しているので、すぐわかる。
ジョイフルもホテルAZも創業者は同じ人物:穴見保雄氏、双方の会社を上場させており、単なるファミレスや宿屋のオヤジではない。
立志伝中の人物といいたいが、地方証券取引所の福証への上場のために、その評価が低い。
【 ジョイフル 】
■ ホテルAZ
ジョイフルもAZホテルもイナカにある。創業者の穴見氏は、ホテルがない田舎にホテルをつくるには意義があるとしている。
地元の行政は歓迎してくれるとのことであり、そういった名誉的な恩恵よりも、イナカで営業すれば競争相手も来ないと、ビジネス上の優位性を見逃さない(*1)。
こんなところにビジネスホテル?
という場所でのビジネスというのは、「バカな」と「なるほど」を地で行く戦略といえる。
*1 日本経済新聞 20130803
【 土地が余っているなら 】
■ ホテルAZ
穴見保雄氏はジョイフル、ホテルAZの創業者であり、社長でもあったが、2016年2月にはホテルAZ(アメイズ)の社長を退き相談役となっている。
なお、ジョイフルの社長はとうのむかしに退いている。
派手なふるまいを好まず、ネットには画像は出てこない。
それでもわずかだが画像を発見し、それをみると好々爺のおじいちゃんのようだ。
1935年生まれの氏は2017年現在では82歳、ビジネスの現場を張るには難しい年齢だろう。2016年3月21日にツイッターをはじめたが、7月2日以降更新はない。
- 1993年6月 ジョイフル上場 57歳
- 2013年8月 アメイズ上場 78歳
穴見氏は人生の後半期での創業でもあり、2社の上場も遅い年齢での上場となっている。
そういったことを考えると、高齢社会時代の希望の星ともいえる。年寄りの冷や水という声は、ハナタレ小僧のたわごとにしかきこえない。
【 穴見保雄氏のツイッター 】
■ ホテルAZ
大分本社の企業で、福証上場企業ということで全国的に目立たないかもしれないが、同社の取締役構成は華麗なる一族状態となっている。
ただし同族経営の個人商店ともいえるが。
アメイズの社長は保雄氏のご子息がつとめているが、取締役には「穴見」の名前はみられない。
ジョイフルも同様、社長、相談役に「穴見」の名前はあっても取締役にはない。
相談役は現職の衆議院議員(大分一区)の穴見陽一センセイ、センセイの奥さんはジョイフルの社長である。
穴見くるみ
アイドルではなく、奥さん同時に社長の名前である。「〇〇み〇〇み」とは韻を踏んで覚えやすい。
穴見センセイは国会の委員会でタブレット端末を持ち込み、若手らしいパフォーマンスをみせていた。初持ち込み者と思われる(*1)。
ちなみに穴見センセイは2015年の政治資金収入では2億187万円集め、全国会議員センセイのなかでトップである(*2)。
*1 ローカライズド(LCD)調べ
*2 日本経済新聞 20161204
【 穴見先生の選挙ポスター 】
■ ホテルAZ
アメイズの沿革をみると、創業は明治44年(1911年)となっている。
ジョイフルよりも穴見保雄氏の誕生よりも早い。
アメイズの運営するホテルAZの前身というか、買収先の創業が、明治44年だったためそうしているようだ。
ハクをつけたいのか少々反則気味のようでもある。そういったこととは関係なく、2000年代に入っても順調に出店し、成長している。
【 亀の井ホテル 】
■ ホテルAZ
ジョイフルの成功をホテルAZにあてはめているようにもみえる。売上高も順調に推移している。
低価格業態のホテルのため利益率はそう高くないだろうと思えたが、そんなことはなく、直近の売上高営業利益率は18.2%、同業の上場企業の帝国ホテルのそれは7.3%と2倍も利益率が高い。
- アメイズ 18.2%
- 帝国ホテル 7.3%
ちなみに配当(年間)もアメイズ20円に対して、帝国ホテル15円と株主にもありがたい配当となっている。
売上高は
- アメイズ 124.8億円
- 帝国ホテル 558.1億円
と、帝国ホテルの1/4程度だが、利益額の伸びをみるとアメイズに投資したほうがいいのではないだろうか。
ここ2年営業利益、経常利益の前年比の伸びは帝国ホテルは1ケタ台に対してアメイズは2ケタ(しかも30%増)となっている。
成長著しい企業といえる。
帝国ホテルは東京のど真ん中にあるワールドクラスのホテルだが、イナカのホテルでも外国人は多く泊まるし利用者も多い。
あちらは政財界のユーザーが多いだろうが、こちらには国会議員のセンセイもついている。
【 ジョイフル本社 】
■ ホテルAZ
ホテルAZを運営する株式会社アメイズは順調に成長している。しかも毎年10%成長している。以下は同社の売上高の推移(*1)。
- 2013年 93億1,800万円
- 2014年 106億7,700万円
- 2015年 109億 800万円
- 2016年 124億8,700万円
- 2017年 140億9,800万円
いまどき年10%成長するビジネスといえば介護ぐらいなものだが、同社はデフレや業態に関係なく伸ばしている。
2009年に10年後は売上高500億円としていたようだが、ちょっとムリとみたのか修正された(*2)。
2018年の業績予想でも150億円と成長はやや鈍るようだが、成長はすることには変わりはない。
配当も20円から10円増配して2017年からは30円となっている。増配余力もあることからキャッシュも潤沢なのであろう。
泊まるなら帝国ホテルだが(出張費が許せばの話だが)、株を買うならアメイズだ。
*1 株式会社アメイズHP
*2 日本経済新聞20130803
■ ホテルAZ
創業社長は相談役に退いているものの経営者層は同族で固められており、創業社長のお子さんが退任後の社長に就いている。
ある意味イレギュラーの形のファミリービジネスだが、泊まる者には取締役の名字が変わり映えしないことは関係ない。
同社も我々ローカライズド(LCD)と似たような哲学を持って経営している。旅を通じて社会に奉仕するとは、我々と同じだ。
似たような哲学を持っている同志として、ローカライズド(LCD)に社外取締役として声をかけてもらえないだろうか。九州には強いですよ。
【 アメイズHP トップメッセージ 】
■ まとめ
安さあふれるAZホテル。一度泊まってみるほどの価値はある。
知り合いなどには自慢できないが、職場の連中には納得されるであろう。
というか社内規定でそういったところにしか泊まれないのは残念だ。
そういった企業は九州に多くある。 知事会など東京に出張する大分県知事は、いまのところ東京都には同ホテルはないため他社ホテルに宿泊されているようだ。ホテルAZの早期東京進出がのぞまれる。
本号はここまで
4800円朝食付と外壁に示すほど覚悟を決めているホテルが九州にアリ。
【注意】
地図はグーグルより加工
価格・数量などは公開当時のもの
下手上手関係なく画像はローカライズド(LCD)
現地に赴く場合は、公式情報を確認されてから行くように
ここまでのおつきあいに感謝いたします。
なお、ここで紹介したことはすでに過去の情報となっていることを申し伝えておきます。
マチとの遭遇
#オールラウンド九州(ARQ)
製作:ローカライズド(LCD)
■ メンバー
#1 風戸ケイキ(リサーチ)
#2 ワリアイト・リョウ(リサーチ)
#3 タシロ(プレス)
旅とカットソーシリーズ 2018
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