マチとの遭遇 九州編

地域ブランドの罠(九州のケース)

ふるさと納税2019 2/②

2021年04月10日 06:51 by keiki-kazeto

ふるさと納税2019 1/②の続きです。

ふるさと納税。税としては賛否両論ありますが、都会にくらべて営業力で劣る地方にとっては大いなる販売機会です。本号では地方、ただしくは販売弱者の地方にとって垂涎の販売マシンともいえるふるさと納税制度についてリサーチいたしました。もちろんリサーチするのは九州を中心に活動するローカライズド(LCD)、リサーチの対象エリアは九州です。

なお、「納税」や「ふるさととは?」などに一家言ある方はご覧いただかないほうがよろしいかと思います。

製作
ローカライズド(LCD)

注意:本号で示したふるさと納税で示される金額などはことわりのないかぎり総務省のふるさと納税ポータルサイトの関連資料のデータによるものです。

ふるさと納税の返礼品の金額などはだいたい2020年12月のもの。

■ ふるさと納税2019
 みやき町になにがあるか気になるところですが、全国的に知られた観光地も、地元経済をひっぱるほどの企業も、国からの助成金がじゃかじゃか入ってくるような施設も見当たらないマチです。  

 健全といえば健全なマチです。

■ ふるさと納税2019
 みやき町は15歳以下の女子サッカーを支援しています。

 しかし、なぜ女子サッカー(U-15)なのかはわかりません。たぶん女子サッカーが好きなんでしょう。  

 なお、支援しているのは一般社団法人みやきスポーツコミッションです。

■ ふるさと納税2019
 そういったマチでも2018年にはふるさと納税の寄附金では 168億3,383万5,000円 集めました。  

 2020年は総務省からおとがめもあって7月からの開始ですので同年は苦戦しそうですが168億円集めた実績もあり、心配無用ではないでしょうか。

■ ふるさと納税2019
 寄附金を多く集めるのに手っ取り早いのが高額返礼品です。

 単品で100万円であると100万円の返礼品を用意しやすいのですが、みやき町には単品でそうなりやすい壺や高額電化製品はありません。

 1つで100万円とするためにみやき町産産品を詰め合わせたパッケージにして商品化いや“返礼品化”しています。

■ ふるさと納税2019
 そのパッケージを毎月1回年12回お送りするとなると、100万円の返礼品ができあがります。

 もちろん返礼品そのものはみやき町産ですのでふるさと納税ルールは外していません。

■ ふるさと納税2019
 工業製品とふるさとイメージの関連性は薄い感もありますが、地元に本社があるとなると、ふるさと納税ルールは外しておらず、返礼品となりえます。

 みやき町にも発電機を製造する会社があり、LPガスとガソリンのハイブリッドの非常用小型発電機が返礼品として出されています。 330万円の寄附金でそれが来ます。

 “非常時”は来てほしくないものですが使用の際は、みやき町をしみじみ思い出してほしいものです。

■ ふるさと納税2019
 定番の人気の返礼品はお米や牛です。お米や牛は地元とのつながりは深く、ふるさと納税ルールを外すことなく返礼品となりえます。

 同町の返礼品にはみやき町産よりも佐賀県産が多くあるようにみえるのは気になるところですが、これもふるさと納税ルール通りですので、総務省からのおとがめはナシです。

うなぎのかば焼き  

 みやき町の返礼品にうなぎのかば焼きがあります。 うなぎはみやき町から約300キロ離れた鹿児島県大崎町のうなぎです。

 そのうなぎを地元みやき町の飲食店の秘伝のたれで加工して真空パックとしました。それが寄附金額12,000円で来ます。2匹。

みやき町~大崎町

■ ふるさと納税2019
 コーヒー豆も返礼品です。北緯33度のみやき町でもコーヒー豆が栽培されているのかと思えますが、みやき町産の部分は豆の焙煎だけのようです。  

 同店は約50キロ離れた他県である福岡県の繁華街中央区今泉で30年間喫茶店として営業していたのですが、この度地元に帰り、同地で再度営業となりました。  

 それが寄附金額10,000円で来ます。200g×3袋。

■ ふるさと納税2019
 お食事券は総務省からおとがめきそうですが、おとがめ実績のあるみやき町はそれに懲りずに出品しています。

 返礼品とされたお食事券は地元佐賀県のJAが運営する高級な飲食店のものです。

 地元JAが運営するだけに出される食材も佐賀産であることは間違いないでしょう。

 みやき町は佐賀県なので、ルールは外していません。

みやき町 in 佐賀県

■ ふるさと納税2019
 お食事券と返礼品の関係はみやき町in佐賀県ということでOKと思われます。

 それが寄附金額20,000円で来ます。発行日より13か月までOK。

■ ふるさと納税2019
 加湿器もみやき町の返礼品として出品されています。

 加湿器を製造する会社が地元にあるわけでもなく、工場もあるわけでなく、一見みやき町とのつながりはなさそうにみえますが、マチと「感染予防等に関する協定」を製造する会社と結んでいることからつながりはないわけでは「ない」ようです。  

 加湿器は地元の公立小中学校で使用されており、コロナ渦の時期にあってはありがたい存在です。  

 それが寄附金額200,000円で来ます。1台。

三養基郡@上峰町

■ ふるさと納税2019
 三養基郡三兄弟の最後の一角:上峰町も気になるところです。

 ふるさと納税が2008年にはじまって以来2014年まで、件数にしてずっと1ケタ台であった上峰町が、九州屈指の寄附金大量獲得団体になったのはおどろきです。

■ ふるさと納税2019
 上峰町とみやき町はとなりあうマチでどちらも総務省からのおとがめを食らうほど寄附金のデッドヒートを続けていました。

ふるさと納税寄附金額
(2019年)

  • 上峰町  46億7,214.5万円
  • みやき町    8,257.5万円

 上峰町のほうが総務省のお叱りをすんなり受け入れたこともあってか除外期間が短くすみ、“営業期間”の長さで2019年はみやき町に対して56倍の差をつけました。

■ ふるさと納税2019
 このところの上峰町は九州のふるさと納税寄附金額ランキングでは、上位陣の常連です。  

 上位陣の常連になったせいか総務省に目をつけられやすいのか、総務省からおとがめを食ってしまい2019年はふるさと納税制度の営業期間は6~9か月の4か月に短縮要請されました。  

 営業期間が短縮されてしまうと、販売機会をふるさと納税制度に求めている地元生産者たちは、販売先がなくなり困ります。 役所にはしっかりしてほしいところです。

上峰町
読み:かみみねちょう

■ ふるさと納税2019
 高額品でなく、地元産であることが返礼品の条件ですが、地元産が高額品である場合は、OKとなるようで上峰町も返礼品ルールを気にせず地元産高額品を躊躇なく出しています。

佐賀牛一頭 1,000万円  

 毎月2回12か月、佐賀牛のどこかがやってきます。

 もちろん上峰町は佐賀県のマチですので、返礼品ルールを外していません。

上峰町 in 佐賀県  

 1,000万円はさすがにという方のために500万円、300万円と少額牛も取り揃えてあり、最低単価1万円まであるようです。  

 寄附金を多く集めるマチは、それなりに返礼品に工夫がみられます。

■ ふるさと納税2019
 牛の他にはベッドがあります。上峰町にはフランスベッドの工場があることから地元産ベッドといえ、返礼品基準を十分に満たしています。  

 寝具としてはふるさとイメージのあるのは布団ですが、上峰町にあるのはベッドの工場でした。

【 フランスベッドの工場 】

■ ふるさと納税2019
 地元に雇用を生み、本社所在地も地元ですので納税でも貢献しています。  

 マチのケーザイに工業製品が占める割合が高いだけに返礼品に工業製品があるのも、マチをイメージしているといえます。  

 それが寄附金額3,000,000円から来ます。1台。

上峰町の産業構成比(*2017年)

  • 1次産業   0.8%
  • 2次産業 62.7%
  • 3次産業 36.5%

* 佐賀県HP#市町村民経済計算

■ ふるさと納税2019
 上峰町には大型ショッピングセンターのイオン上峰店が長らく営業していました。  

 しかし、2018年5月に撤退を決め、2019年2月に前身の店舗からすると24年間の営業でした。  

 しばらく跡地をどうするのかもめていたようですが、民間事業者の出資による合同会社を設立して、上峰町と再開発に取り組むことになりました。

■ ふるさと納税2019
 3.8万㎡の土地とあわせて建物は持ち主であるイオン九州から無償で上峰町は譲り受けることになりましたが、ショッピングセンターが撤退したマチで、地域活性化が成り立つのかはおおいに疑問です。  

 0円で入手しても固定資産税は負担しなければなりませんし、場合によっては登録免許税、贈与税、都市計画税も負担しなければなりません。  

 0円でも負担はそれなりに大きいものです。

 そう考えると、無償で譲り受けた土地をふるさと納税の返礼品としてはどうでしょうか。  

 土地こそは地元と十分ゆかりのあるコンテンツですが、総務省からのおとがめは必至と思われます。

■ ふるさと納税2019
 旧イオン上峰店の商圏にすっぽり入るとなりのみやき町で営業する坂本ストアは、大手の出店に負けることなく、営業を続けています。

 なお、同店はふるさと納税の返礼品として味付けホルモンを出しています。 こういったこともできるのも地元と密着しているからといます。  

 ちなみに同店のホルモンは寄附金額10,000円で来ます。ホルモン1キロ(味付き)。

【 坂本ストア 】

■ ふるさと納税2019
 ふるさと感あふれる産品は伝統的産品であるみそ、しょうゆ、酒などです。  

 口に入れるものほど記憶に残りやすいので、濃いい返礼品といえます。  

 上峰町には創業元禄年間の蔵元:天吹酒造があります。 同蔵元の純米大吟醸が13,000円で来ます。4合瓶で2本。

 元禄年間:1688年~1704年 日本人人口が世界シェアナンバー1となったとされるころ(*)。

*磯田道史「日本史の内幕」

【 天吹酒造 】

■ ふるさと納税2019
 上峰町はふるさと納税専門事業者だけに頼らず、町自身でもサイトを運営しています。

 専門事業者へ支払う費用もバカにならず、自らアセをかく姿勢をみせています。

 せっかく町自身が運営するのであれば、マチの魅力を伝えるサイトにしてほしいところですが、専門業者とかわらない販売先行の姿勢です。  

 こちらよりも専門業者のサイトの方に出品が多く、地元事業者のマチを愛する気持ちも少々足りない感もあります。

■ ふるさと納税2019
 とはいってもふるさと納税も“直販”するとマチの稼ぎも多くなります。

 ふるさと納税の元締めはそのマチの役所です。

 ふるさと納税のサイトを運営している事業者、例えば「ふるさとチョイス」の運営会社:トラストバンクは、いわばふるさと納税の代理店というところでしょうか。

 そういった事業者を利用しているマチは代理店にふるさと納税にかかる費用を払わないといけません。

■ ふるさと納税2019
 そういった費用として考えられるものは広報や事務にかかる費用ですが、総務省の公表資料によると、受入額に占める割合として

  • 広報に係る費用 0.7%
  • 事務に係る費用 8.1%  

 となっています(2019年)。

 それ以外にも返礼品の調達、送付、決済に係る費用があり、そういった費用の割合は46.7%となっており、寄附金額の半分程度がマチに入るお金となります。

■ ふるさと納税2019
 上峰町の場合は、ふるさと納税に際して、とくセクションを置いているわけではなく、上峰町ふるさと納税担当となっています。  

 決済は自分のところではできないので、外部事業者の力を借りますが、広報や事務などは自分たちでもできるとにらんだのかふるさと納税サイトの自主運営に取組んでいます。  

 自らアセをかくわけですが、まだまだ集客に自信がないのか、自主運営だけでなく、ふるさと納税サイト運営事業者の手を借りています。  

 販売窓口は広いほうが、地元産品の販売機会も増えます。

■ ふるさと納税2019
 返礼品の調達は地元の生産者などから仕入れなければなりませんが、そのうち商品開発に目覚めた自治体は、独自企画オリジナル返礼品をリリースすることになるかもしれません。

 たとえば市庁舎バックステージツアーなど。  

 だれが市庁舎の裏側を見たいか?と思われますが、税金が適切に使われているかをチェックするにはいい返礼品となるかもしれません。  

 基山町や上峰町の庁舎は立派なだけに見ごたえがあります。

【 上峰町庁舎 】

■ ふるさと納税2019
 三養基郡3町のうち基山町は九州のビジネス都市福岡市に近く、経済圏では同県内である佐賀よりもとなり県の福岡よりなマチです。

 一方、同じ三養基郡の町でもみやき町と上峰町は経済圏も地理的にも佐賀らしいマチといえます。

■ ふるさと納税2019
 世間では佐賀イコール田舎のイメージがありますが、三養基郡3町そろってイナカのマチとされる過疎市町村ではありません。  

 あわせて「都市」というキーワードからほど遠いイメージがあるものの三養基郡3町とも都市計画区域でもあります(基山町のみ全部指定)。

■ ふるさと納税2019
 三養基郡3町とも田畑ひろがる農村エリアですが、田畑ばかりでなく工場もあり、全国チェーンの牛丼屋、コンビニ、スーパーもあります。  

 マチにはセレクトショップはなく、スタバは基山町のみしかも高速道路のパーキングエリア内ですが、田園風景ひろがるほのぼのとした田舎というわけではありません。  

 ただ、起伏のない平野だけに道路は見晴らしの良い一直線となっています。もちろん信号もあります。

一人当たり市町村民所得
(*:2017年度)

  • 基山町    281.7万円
  • 上峰町    359.8万円
  • みやき町 223.5万円

佐賀県HP#市町村民経済計算

■ ふるさと納税2019
 同年度の佐賀県の一人当たり市町村民所得の平均は263.0万円でした。  

 平均からすると同じ三養基郡3町でもばらつきがあり、となりあうマチでも100万円ほどの差があります。  

 市町村所得に占める企業所得の割合の大小がマチのフトコロを左右するようです。

ふるさと納税寄附金額
(2019年)

  • 基山町  11億2,705.7万円
  • 上峰町  46億7,214.5万円
  • みやき町    8,257.5万円

■ ふるさと納税2019

 一時、よく耳にした「消滅可能性都市」。基山町、みやき町はその消滅可能性都市ですが、上峰町はそれではありません。

 ふるさと納税で46億円も集めれば、消滅しないということでしょうか。

■ ふるさと納税2019
 ビジネスマインド旺盛でないマチは寄附金も多く集められないのか、それとも地元に返礼品となるコンテンツが少ないのかはわかりませんが、上峰町は寄附金を多く集め、みやき町はそうではありません。  

 となりあうマチだけに、みやき町はもし多く集めたいのであるならば、上峰町に教えを乞うてみてはどうでしょうか。

■ ふるさと納税2019
 上峰町はふるさと納税制度の寄附金獲得コンサルティングを返礼品にしてはどうでしょうか。  

 ノウハウを多くもっていそうです。  

 町の担当者セクションのサービスですので地元との縁は十分ありますが、総務省からおとがめも十分ありそうな返礼品でもあります。

市町村民所得
(2017年度)

  • 基山町    490.2億円
  • 上峰町    337.0億円
  • みやき町 562.1億円

■ ふるさと納税2019
 みやき町は一人当たり市町村所得が小さくても寄附金を多く集められなくても集めなくてもいい事情があります。

 マチに立地する企業は働き口や納税の点でしっかりマチに貢献していると思われ、ふるさと納税でチマチマ稼ぐ必要はなさそうです。  

■ ふるさと納税2019
 ふるさと納税制度はふるさとを思う気持ちを利用した大切にする仕組みです。

 常時財政難にあえぐマチにとっては、干天の慈雨ともいえる仕組みではないでしょうか。 

 マチの野菜も売れて、農家さんのフトコロをもうるおいます。

 そういった仕組をマチは大いに活用して、納税していただく皆さんに単なる営業窓口とみなされないようスマートに取り組んでほしいものです。

 

本号はここまで
ふるさと納税2019 2/②

 

リサーチに協力していただい方々に感謝いたします。
一方、リサーチに協力していただけなかった方、次回ご協力にお願いいたします。

 

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【注意】
地図はグーグル・ヤフーより加工
価格・数量などは初回公開当時のもの
画像は下手上手関係なくローカライズド(LCD)
なお、取材日当日でないものもアリ
現地に赴く場合は、公式情報を確認されてから行くように

初回リリース
20210313

ここで紹介したことはすでに過去の情報となっていることを申し伝えておきます。

 

マチとの遭遇 九州編
#オールラウンド九州(ARQ)

 製作:ローカライズド(LCD)

■ メンバー
#1 風戸ケイキ
(リサーチ)

#2 ワリアイト・リョウ
(リサーチ)

#3 タシロ(プレス)

 旅とカットソーシリーズ
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