阿久根市。自然がいっぱいのマチ。そういったマチは日本全国どこにでもあり、「自然がいっぱい」だけではこれといった特徴になりえず、他のマチとの差別化にもなりません。これといった特徴のないマチのリサーチに出向くのもローカライズド(LCD)の役目です。マチとしては退屈ですが、マチの退屈は残念ながら経済価値では評価できません。これもある意味、プライスレス。
市内総生産(阿久根市)
上段:2006年度(H18)
下段:2016年度(H28)
593億5,551万円
(19位/43市町村)
598億2,973万円
(19位/43市町村)
県内総生産(鹿児島県)
5兆4,357億2,500万円
5兆3,818億 900万円
出所:鹿児島県HP#県政情報
2年度だけをピンポイントでくらべると鹿児島県の経済は縮小するなか阿久根は成長させているようにみえます。
【お願い】 誤字脱字、日本語の少々おかしな言い回しなどについてはご容赦+ご理解ください(お許し願う)。しかし、多少下手なほうが人間味もあって、ダイレクトに伝わらんですかね?(ローカライズド(LCD))。
阿久根
「あくね」と読む
■ アクネ
人口の減るマチは、往々にして東京から離れた地方に多く、経済的によろしくない状況にあります。九州は鹿児島県、阿久根のマチもそんなかんじです。 若者はマチから出ていき、地方創生は必須の課題です。
阿久根市のポジション
(2016年度(H28))
鹿児島県には43の市町村があります。順位は鹿児島県内での阿久根のポジションです。
18位 人口
20,826人
19位 市町村内総生産
598億2,973万4,000円
18位 市町村民所得
459億4,410万2,000円
11位 人口一人当たり市町村内総生産
375.8万円
25位 人口一人当たり市町村民所得
220.6万円
― 阿久根の場所 ―
■ アクネ
ネット環境と電気さえあれば、スマホで情報は入手でき、稚内にいようが銀座にいようが、与論島にいようが情報格差はないはずです。
教育は機会均等、時間は24時間、流通する通貨は日本円。違うのは緯度と経度ぐらいでしょうか。
それでも2015年度(H27)の阿久根市民、日本人一人当たりの所得は以下のようになっています(*)。
- 阿久根市民
218.5万円
- 日本人
307.1万円
2001年(H13)のIT革命後、国内どこでも同じはずですが、なぜか地域経済には差があります。
ちなみに人間一人あたりの所得では、阿久根市のそれは日本人の平均の7割程度になります。
自動販売機でコカ・コーラを購入すれば、阿久根であろうと阿久根でない場所だろうと同じ値段です。
マクドナルドのハンバーガーも、価格に多少ちがいはあれども国内どこでも同じ味です。
ただ、阿久根市にマクドナルドの店舗はありません。
* 阿久根市:鹿児島県HP#県政情報 日本:内閣府HP#統計情報
- 阿久根でみた景色 -
■ アクネ
九州の鹿児島県の北西部に阿久根市というマチがあります。
コレといった産業もなく、高齢化はすすみ人口は減りまくる日本のどこにでもあるようなマチです(*1)。
阿久根市の人口
1950年:41,344人
2015年:21,198人
人口はこの65年間でほぼ半減しました。1952年に町から市になって以降、市長をつとめた人は約8名いました。
阿久根市の将来の人口
2050年 10,982人
さらに1950年から100年後の2050年、阿久根市の人口は10,982人と推計されています(*2)。
100年間で人口はほぼ1/4になります。
* 1 総務省国勢調査
* 2 RESAS 人口マップ
■ アクネ
阿久根市は1955年に最後の合併があり、以降市域の変更はなく、人口は減るにまかせていました。
現在、国内では人口が減る!とあわて騒いでいますが、阿久根市ではずっと前から減っていました。
50年近くなにも手を打たずに減るにまかせていたとは、のんびりしたマチだとうかがえます。
ヨソ者が訪れたマチを評価する決まり文句
のんびりしたところでいいところですね。
は、こういった意味なのでしょうか。人口を減るにまかせていたのは阿久根市だけでなく、当時から鹿児島のどのマチでも減らしていました。
若者は中央の都会に吸い取られていきます。
若者をマチに引き留めるアイテムとしてスタバがありますが、阿久根にはそのスタバがありません。
とはいっても阿久根では世の中にスタバが登場する前から若者は流出していました。
ちなみにのんびりしたマチですが、阿久根市の犯罪発生率は県内2番目(43市町村)ですのでウカウカできません(*)。
* Area Information Network日本☆地域番付#鹿児島県
一人あたり所得差:阿久根と日本
7割程度
日本人を1とすると阿久根は0.7
■ アクネ
人口が減るマチは高齢者率も高く、阿久根市も例外ではありません。
65歳以上の高齢者率は
38.2%
です。阿久根ではトシを重ねると長寿祝い金をいただけます。
- 80歳で5,000円
- 88歳で10,000円
- 100歳になると50,000円
- 101歳以上で20,000円
寿命がのびると総支給額も年々ふくらむかと思えるのですが、そんなことはなく、平成25年度から平成27年度までは前年より減らしていました。
とはいえ平成28年度は88歳を迎える人が前年より27人増え、総支給額400万円まで15万円というところにせまっていました。
長寿祝い金獲得が長生きのインセンティブになっていては、マチの財政に影響をおよぼしマチが長生きできません。
参考:阿久根市 統計あくね
阿久根市の老齢基礎年金(*)
月額65,008円
* 阿久根市HP#暮らし・手続き
■ アクネ
こう高齢者が多いとお祝い金でマチの財政を圧迫しかねず、高齢化に歯止めをかけたいものです。
社会の器として企業や団体も子育てをバックアップして、マチの平均年齢の若返りをしたいところでしょう。
阿久根市の属する鹿児島県では、子育てと仕事の両立支援に積極的に取り組むそれら企業などを
かごしま子育て応援企業
として登録して、紹介しています。
もちろん人口のアンチェイジングを考える阿久根市にも登録している企業は存在します。
しかし、その数、2団体。しかも企業のようなビジネスマンの組織ではなく病院です。
阿久根は子育てに冷たく、人口のアンチェイジングなど不要なマチなのでしょうか。
ちなみに、阿久根ではエステサロンは3件営業しています(*)。
* iタウンページ 検索20191123
【 阿久根市のストリート 】
■ アクネ
阿久根市は呼んでその名のとおり「あくね」です。
「悪ね」なのか「空くね」なのかは、その人のイメージですが、マチを縦につきぬける国道3号線をクルマで走ると人口と産業が 「空くね」 のようにみえます。
マチが空洞していては、マチのイメージが低下します。
【 国道3号線 】
■ アクネ
一時、ブログ市長と呼ばれた竹原氏の登場で、阿久根市は一躍知られたマチとなりました。
地域活性化期待の星
ネガティブに知られたか、それともいいイメージで知られたかは人の判断によりますが、ローカライズド(LCD)は、「インパクトはあったのでは?」と判断しています。
そういったなんともいえない過去もあり、阿久根市はイメージアップをもくろみます。
竹原信一氏:市長在任期間
2008年9月~2010年12月
50歳前で市長に就任。
竹原信一氏についてはこちらを参考に
■ アクネ
いまでこそ田舎のお役所でも「ブランド」といって、マチの知名度向上やイメージアップに取り組んでいますが、アクネは早くから取り組んでいました。
1988年 特産品統一ブランドマーク発表
阿久根の「ネ」が韻を踏んでいて、記憶に残りやすくあります。このマークについては市役所のHPでも紹介されています。
このマークが阿久根市の産品すべてに付されているかというと、そうでもなく、どちらかというと付されていないことのほうが多いようです。
市は阿久根ブランドを伝えたいところですが、マチの人の心に伝わっていません。
【 特産品統一ブランドマーク©阿久根市 】
■ アクネ
2016年4月から阿久根市には企画調整課に地方創生特命参事として博報堂から人材が1名投入されました(*)。
行政としては、イメージアップやブランディングとなると、大手広告代理店の力を借りるのがよいと思ったのでしょう。
ましてやブランディングとなると明日、今日と取り組んで明後日には出来上がりという短時間で完成するものではありません。しばし時間がかかるものです。
同氏をマチのイメージアップの重鎮に据えて、マチのブランディングに腰を落ち着けて取り組むとみられたのですが、同氏はその2年後には枕崎市の副市長へ就任しています。
ちなみに同氏は熊本市出身の方です。
阿久根 → 枕崎
ブランディングは継続的な仕事であり、そう簡単に代替えのきかないスキルが求められますが、そういった人物に去られて問題はなかったのか気になります。
* 広報阿久根 2016.4月
一人あたり所得差:阿久根と日本
7割程度
日本人を1とすると阿久根人は0.7
■ アクネ
阿久根市はマチのイメージ向上のためにか外部のプロフェッショナルにも阿久根ブランドアップ業務をお願いしていました。
阿久根ブランド力アップ事業(新規) 阿久根ブランドの確立に向け、ブランディングの強化とブランド露出の効率化を図り、また、ふるさと納税のPRにおける阿久根ブランドの統一感を醸成し、寄附額拡大のために返礼品の魅力PRを強化する。*平成29年度阿久根市当初予算(案)の概要より
お願いといっても予算は決まっており、役所からの発注では入札となります。
同市担当者によると、4社のプロポーザル方式による入札となったとのことです。
事業予算:700万円
いちおうプロポーザル方式の入札ですが、博報堂から事前に提案があったのか、それとも阿久根市からの打診があったのかはわかりませんが、受注したのは博報堂です。
同事業は阿久根ブランドの向上を図ることが目的にあり、求める成果としてふるさと納税の寄附額の増収を目指しました。しかし阿久根ブランドとはなんなのでしょうか。
市役所の担当者にチラッとおたずねしたのですが、イマイチわからないお答えでした。
一人あたり所得差:阿久根と日本
7割程度
日本人を1とすると阿久根は0.7
■ アクネ
同事業の契約は2017年の8月上旬であり、仕事は同年度末まで、9ヶ月間の仕事です。
9ヶ月で地元ブランドの向上しかも700万円でとは、ややムシのいい話のような気もしますが、財政力指数0.33の阿久根市には、精一杯の予算とも思えます(*:平成27年度)。
見栄えのいいホームページを作ってもらっただけでは、仕事のやり逃げ感もあるので市役所はしっかりと数値目標を課します。
* 総務省 決算カード
# 阿久根市の財政力指数は鹿児島県24市町村のうち上から14番目。下に10団体いるので下には下がいる状況だが、鹿児島県は、そもそも財政力指数は低く、阿久根市はさほど財政が「いい」という状況ではない。
【 阿久根市役所庁舎 】
■ アクネ
同事業の目標は、ふるさと納税による寄附金額1億2,000万円です。この目標を達成するために
地元特産品を複数の異なるメディアを用いた広告戦略を立て、東京都内を中心とした全国主要都市圏において効果的なPR事業を行う
と考えました。
どこか広告代理店の入れ知恵もあるような言い回しにもきこえますが、そこは気にしないでおきましょう。
一人あたり所得差:阿久根と日本
7割程度
日本人を1とすると阿久根は0.7
■ アクネ
1億2,000万円という目標額は前年実績の2倍弱であり、ちょっと欲張りすぎの感もありますが、博報堂にお願いするなら700万円払うならという思いもあってのことでしょう。
ちなみにそれまで阿久根市のふるさとと納税による寄附金の3年前の各年度の実績は以下のとおりです(*)。
阿久根市のふるさと納税による寄附金の推移
上段:2014年度(H26)
中段:2015年度(H27)
下段:2016年度(H28)
● 寄附金額
232.8万円
2,522.5万円
6,474.4万円
● 件数
32件
1,848件
5,971件
● 件数あたり寄附金額
7.2万円
1.3万円
1.0万円
* 総務省HP#ふるさと納税ポータルサイト#関連資料
■ アクネ
2014年度(H26)の実績はまだ、ふるさと納税に真剣に取り組んでなかったとしても2015年度(H27)から2016年度(H28)の伸びは前年比2.5倍増と大きいものです。
この伸びは阿久根市だけではなく、ふるさと納税に取り組む自治体の返礼品の充実などもあり、寄附金額は国内全体では前年度比4.3倍増となっています。
ふるさと納税
2015年度から2016年度の変化
- 阿久根市 2.5倍
- 鹿児島県 1.8倍
- 国内全体 4.3倍
全体からすると阿久根市は、県内ではガンバリをみせていますが、国内の基準からするとそうがんばっているとはいえなさそうです。
一人あたり所得差:阿久根と日本
7割程度
日本人を1とすると阿久根は0.7
■ アクネ
2017年度の目標も大きくしたくなるのも当然です。
2017年度の目標額は1億2,000万円、前年比では1.8倍増となりやや抑え気味のようでもあります。
額うんぬんよりも、なにかとランキングされる昨今、自県内のポジションに不満だったようにもみえます。
阿久根市のふるさと納税額の県内19市中自県内の順位は、平成2015年度は11位、2016年度は15位と下げています。となると目標年度の2017年度はジャンプアップしたいものです。
【 ←阿久根市役所 】
■ アクネ
阿久根市と接する自治体である出水市ははふるさと納税に興味がないのか、寄附金額では阿久根市よりもランキングでは下にあります。
出水市だけがふるさと納税に関心が低いだけで、阿久根市と接する長島町や薩摩川内市は、まったくそんなことはないようです。
寄附金額:阿久根市近隣のマチの状況(*:2018年度)
- 阿久根市
9,946.4万円 - 長島町
2億 624.8万円 - 出水市
3,764.6万円 - 薩摩川内市
1億8,652.0万円
* 総務省HP#ふるさと納税ポータルサイト#関連資料
■ アクネ
2017年度(H29)のブランドアップ業務は滞りなく終わったようですが、寄附金をどれだけ集めたかが気になります。事業年度の阿久根市のふるさと納税の寄附金額は以下のとおりになりました。
- 寄附金額
4,785.0万円 - 件数
4,004件 - 件数あたり寄附金額
1.1万円 - 自県内順位
32位/43市町村
ブランディングのプロともいえる広告代理店にお願いしたにもかかわらず、前年より寄附金を集められず、金額、件数ともに落としてしまい、自県内の順位も「市」ではブービーとなりました。
1件当たりの単価を千円ほど上げたのはブランドアップしたといえますが、総額では3割弱のマイナスとなってしまいました。
ブランディングとは半年では結果がでないものでしょうか。
それとも阿久根市の返礼品は、大手広告代理店の手に負えないほど残念なものなのでしょうか。
事業実施年度は残念な結果になってしまいましたが、事業終了の翌年度は1億円までアト50万円ほどというところになるまで寄附金を集めています。
事業に即効性がなかっただけのようです。
2018年度(H30)の阿久根市の結果
- 寄附金額
9,946.4万円 - 件数
11,127件 - 件数あたり寄附金額
0.89万円
* 総務省HP#ふるさと納税ポータルサイト#関連資料
■ アクネ
阿久根市のブランドアップ事業は残念な結果でした。
しかし、ホームページがリニューアルされて今風のテイストになったことや職員にブランドへの意識が芽生えたと思われ、間接的な効果があったと思われます。
同市が運営する観光サイトは、以前のサイトにくらべてがぜん情報が多くなり、見やすくなりましたが、掲載情報がヨソのマチとちがうだけで、テイストなどは、なんとなくヨソのマチと似ています。
こういった例は、阿久根だけでなく日本全体でこんなかんじです。日本全体で同質化が進んでいます。
一人あたり所得差:阿久根と日本
7割程度
日本人を1とすると阿久根は0.7
■ アクネ
阿久根市はふるさと納税には積極的ではないようにみえます。
同制度がはじまった2008年度(H20)から国金の2018年度(H30)までの11年間で、阿久根市への寄附金は年間平均2,223.5万円です。
この額は県内43市町村なかで27番目です。
人口では県内18番手ぐらいにある阿久根市ですので、もう少しガンバリがほしいところです。
ふるさと納税制度がはじまってながらくさえない(努力が足りない?)時期がつづいていましたが、直近の2018年度(H30)には1億円まであと50万円ほどとなりましたので、今後の品ぞろえに期待したいところです。
参考:総務省HP#ふるさと納税ポータルサイト
■ アクネ
阿久根の魅力のある産品としてボンタンがあります。
ボンタンは阿久根市のHPでも阿久根育ちの果物:かんきつとして紹介されています。
市の木:ボンタン 地元にはボンタン以外に紅甘夏(べにあまなつ)、大将季(だいまさき)といったかんきつ系の果物が木々からぶら下がっています。
南九州を旅しているとお菓子:ボンタンアメをよくみかけます。それがその加工品です。
このボンタンアメに続く、ボンタンの加工品開発に期待したいところです。
ちなみに地元で開催されるロードレースは、あくねボンタンロードレース大会という名称で開催され、2019年3月の開催で36回となっています。
# RESAS産業構造マップによると、阿久根市の果物の産出額は6億1,000万円、阿久根市全体の農業算出額の13%を占める経済資源であるとのこと(2016年)。
本編はここまで。以下次号につづく。
罠 #3 阿久根 ①/2
リサーチに協力していただい方々に感謝いたします。
一方、リサーチに協力していただけなかった方、次回ご協力にお願いいたします。
なお、当地の良し悪しは個人の判断にお任せします。ただ、人は似たような観光地には行きません。決して当地を真似ようとは思わないでください。日本じゅうの観光地が同質化してしまい、「どこも似たようなもんだろ」と先入観をもたれて、しまいにだれも観光をしなくなります。
訂正の連絡はこちら
【注意】
地図はグーグルより加工
価格・数量などは初回公開当時のもの
画像は下手上手関係なくローカライズド(LCD)
なお、取材日当日でないものもアリ
現地に赴く場合は、公式情報を確認されてから行くように
初回リリース:20200111
ここで紹介したことはすでに過去の情報となっていることを申し伝えておきます。
マチとの遭遇 九州編
製作:ローカライズド(LCD)
■ メンバー
#1 風戸ケイキ(リサーチ)
#2 ワリアイト・リョウ(リサーチ)
#3 タシロ(プレス)
旅とカットソーシリーズ 2020
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