鳥栖市。わざわざ立食いうどんを食べに行くというのもぜいたくな行動です。立食いうどんというのは、通勤途中もしくは出張の合間、帰宅途中で食べるものとローカライズド(LCD)は思っていました。しかし現地リサーチを重ねるなかで、その先入観はくつがえされました。立食いうどんの存在に共感を抱いたローカライズド(LCD)メンバーは、そこで見たもの、聞いたもの、感じたものを当webマガジンにてお伝えします。
なお、お伝えするのは九州を中心に活動する地域活性化ユニット:ローカライズド(LCD)です。ちなみに立食いうどんの業界団体などからの依頼を受けての紹介ではありませんのであしからず。2017年4月の記録。
誤字脱字、日本語の少々おかしな言い回しなどについてはご容赦+ご理解ください(お許し願う)。とはいっても多少下手なほうが人間味もあって、ダイレクトに伝わらんですかね?(ローカライズド(LCD)より)。
#鳥栖市 in 佐賀県
■ 中央軒 1
JR鳥栖(とす)駅にある立ち食いうどん屋は中央軒という。ウィキペディアには中央軒単独の記事はないが鳥栖駅の記事のなかで中央軒は紹介されている。
飲食店紹介サイトでは
九州の駅うどんの雄
とも紹介されている。うどんごときに「雄」とは少々大げさな気がするが、ウィキペディアによると、鳥栖駅は九州最古の駅の一つらしく、中央軒の立ち食いうどんの営業も九州初となっている。
#ウィキペディア@鳥栖駅
【 中央軒 】
■ 中央軒 2
鳥栖駅にはプラットホームが3本あり、そのプラットホームの中央あたりで営業している。
店は駅舎本体にもあり、同駅には合計4軒の立ち食いうどん屋が営業している。
4軒とも中央軒だが、なぜか5番と6番の乗り場のあるプラットホームの店がうまいとされている。
それを自社HPでも堂々と紹介するのは、ウソがない商売をしていますよというサインだろうか。それにしても
なぜ、そこがうまいのか科学的根拠
がほしい。
プラットホームでの営業のため①乗車するか②入場券の購入となるが、改札に入る前の場所で営業している店もあるので①あるいは②に関係なく食すことはできる。立ち食いうどんはプラットホーム上で食したい。
■ 中央軒 3
プラットプラットホームの中央あたりに店を設置しているから「中央軒」という店名なのかどうかはわからないが、それを運営している会社名も
株式会社中央軒
である。店名を社名にしているため不祥事も起こしにくい。創業当初は駅構内で立ち売りの弁当販売していたようだ。立ち食いうどんは後発のビジネスである。
なお、自社HPでは日本で初めてかしわめしを販売したとある。
なにかと「初めて」が多い会社だ。ちなみにネットで検索すると、同名他店の中央軒がヒットする。
同社は大阪にある模様。「長崎ちゃんぽん・皿うどん 関西の元祖」と自称している。
ちゃんぽんや皿うどんは長崎のはずではと、一瞬?となったが元祖は元祖でも「関西の元祖」とあり、関西限定での元祖のようだ。とかく「中央」を張るだけに両者とも「初」が好きなようだ。
【 プラットホームからのぞむ 】
■ 中央軒 4
中央軒は立ち食いうどん店の営業の他に駅弁を製造・販売しており、経営のリスク分散を図っている。
立ち食いの店でも自社製造の駅弁を販売している。
テイクアウト
&
イートイン
それら以外ではいなり、日本酒、缶ビールなど、アルコールのつまみになるようなチクワなども販売している。全般的に価格は良心的にみえる。その一例として
ごぼう天うどん/そば 450円
をあげる。すべてのうどん/そばにかしわ肉が入るため、鶏肉が苦手な人は事前に断っておかないと入れられてしまう。
一方、かしわ肉には増量というオプションもあり、60円プラスでそれは可能となる。
なお、立ち食いうどんというスピードと簡便さを重視したフードでもあるためか、うどん/そばはアツアツではない。
【 お品書き 】
■ 中央軒 5
支払い方法はキャッシュオンデリバリー。でないと、食い逃げされる恐れがあるからだろう。
食い逃げを試してみたいが、足がもつれそうなので思いだけにしておく。その場で食さず車内に持ち込む場合、容器代として30円支払う。
車内に持ち込んでうどんを食してみたい気もするが、立ち食いうどんはプラットホームに立って食べてこそ立ち食いうどんであるので、持ち込みはすべきではない。
それ以上ににおいが気になる。揺れもあるだろうからうどんのツユもこぼれるだろう。
【 現品引き換えの表示 】
■ 中央軒 6
基本立ち食いスタイルだが、プラットホームにはベンチがあるので座って食することもできる。
ちなみに鳥栖駅は頻繁に乗降がある。
麺などをすすっているタイミングに乗降客と目線があう機会も増えることだろう。座りながらでは少々カッコ悪い。
しつこいようだが、立ち食いうどんは立って食べてこそ立ち食いうどんである。
立って食する場合も同様であるが、車両を背にすることで、乗降客の視線をさえぎることができる。
反対にこちらからガンを飛ばすという手もあるが、
①乗降客は大勢であること
②静かに食すること
を考えるとそういったことをするのは得策ではないといえる。
【 イスもアリ 】
■ 中央軒 7
お冷はセルフサービス。お冷装置が外に向けて設置してある。
お冷だけ飲む輩がいそうだが、そんなことを気にしてはこの商売できないのだろう。
店員さんが店外に出て、サービスしなくてもいいようそのように設置しているのであり、店内でうどんをゆがくなどの作業に徹するように店舗設計されている。しかし店内狭い。
店員さんは基本一人であり、どの店も年配の女性であった。高齢者の有効活用、それとも人手不足か? 後者であれば少々心配だ。
なお、セルフサービスはお冷だけでなく、七味唐辛子なども容器に入れられてカウンターに置いてある。
店舗間のやりとりは電話でなく声であった。プラットホーム間を
「今度こっちに来るときはうどん玉もってきて」
というやりとりがなされていたのを目撃した。
高齢スタッフでもプラットホーム間を伝えれられるほどの声量がないと、この仕事は難しいようだ。と思いきや店のおばさん、携帯電話をいじっていた。
【 店外から店内をみる 】
■ 中央軒 8
カウンターが少々低いのかカウンターに置いてうどんを食すると、かなり背中をかがめないといけない。
日本人男性の平均身長が167.3cmであることを考えると、少々高くするよう改善を求める(*1)。
各店の営業時間は統一されておらず、19時、21時と閉店時間はまちまちである。
いちばんおいしいとされている5,6番ホームの店は21時まで営業となっている。
出先からの帰路、鳥栖駅を通過するたびにわざわざ下車して食べたいなと思っていた。
しかし、シャッターが閉まっているのであきらめていたが、他のプラットホームでは営業していたようだ。
今回のリサーチで21時まで営業している店があることを知る。同時に朝7時から営業していることも知る。“モーニング立ち食いうどん”も可能だ。
*1 厚生労働省 国民健康・栄養調査報告(平成24年)
【 腰を多少かがめないといけない 】
■ 中央軒 9
立ち食いうどんビジネスも九州初と歴史があるだけに駅舎にも歴史がある。立て替えせず、歴史を示すためにか駅舎の柱から
外国製古レール
と案内がぶら下がっている。そのカンバンは錆びついていて少々やる気がない。
JR九州といえば工業デザイナー:水戸岡鋭治先生であり、その仕事ぶりは車両、駅舎、車内販売の女性のユニフォームなどと多岐にわたるが、そのうち鳥栖駅も同センセイのデザインによってリニューアルされるのかと、余計なことを考えた。
【 外国製古レール 】
■ 中央軒 10
鳥栖駅の裏側はひらけており、プラットホームから「ベストアメニティスタジアム」の文字が目に入る。
うどんをすすりながら、そのスタジアムをながめる。
同スタジアムは地元近くに本社を置く健康食品会社:ベストアメニティ社にネーミングライツしていることもあって、そのような名称となっているようだ。
十分、ネーミングライツ効果はあるのではないか。
ただ、残念なのはネーミングライツされたのは地元企業ではないことだ。
Jリーグ百年構想なる高邁な思想をもつJリーグ加盟チームだけに、ネーミングライツは地元企業にされてほしい。
とはいっても地元ネイティブによれば、同社は行政区が違うというだけで、地元といえば地元になる。
【 ベストアメニティスタジアム 】
■ 番外編 1 小倉駅
JR小倉駅(在来線)にも立ち食い系のうどん店がある。うどんだけでなくラーメン店もある。
九州では、うどんよりラーメンのほうが幅をきかせているのか、うどんがあればラーメンもあるケースに遭遇する。その反対にはあまり遭遇しない。
小倉駅では改札を抜けるとそれらがあり、それらはプラットホームやプラットホームにいたるまでの構内で営業されている。
1日当たりの乗車人員(*:平成26年度)
小倉駅 35,431人/日
鳥栖駅 7,039人/日
うどんとラーメンの2大ヌードルがあるのは、JR鳥栖駅とくらべて利用者数の違いだろうか。
それとも双方の麺類を好む地域性だろうか。なお、JR鳥栖駅はうどんのみだ。
* JR九州HP 交通・営業データ
【 JR小倉駅 】
■ 番外編 2 小倉駅
うどんにかぎれば、改札を抜けてプラットホームに向かう途中にある玄海うどんが目に入る。
同店が目に入らない人は
- 注意力散漫
- 急いでいる
のどちらかというぐらいに同店は目立つところにある。 お客はわさわさとうどんをかきこんでいる。もちろん立ちながら。
同店はJR九州グループのJR九州フードサービス株式会社の運営である。
なお、同社は同じ小倉駅のプラットホームで他店名でもうどん店を営業している。
JR九州によるうどん店の多ブランド展開がなされているわけだが、同じ駅で2ブランドのうどん店は必要なのだろうか?
【 玄海うどん 】
■ 番外編 3 小倉駅
一方、JR九州のナワバリである小倉駅構内で、JR九州とは資本関係ないと思われる会社がうどん店を営業している。
北九州駅弁当株式会社
同社のHPによると、2社の合併によって現在の会社になった模様。
駅弁、立ち食いうどんと事業領域をひろげ、ネットでの販売にも手を広げている。
さまざまな販売形態にチャレンジするのは、イノベーションに取り組む会社の姿勢と見受けられた。
明治24年(1891年)創業のかるく100年超の老舗企業といえども変化を拒むのでなく時代にあわせた対応をしている。
立って食べてこそ立ち食いうどん、移動しながら食べてこそ駅弁という人間(自分のことか?)のほうが時代に対応していないと思えた。
■ 番外編 4 小倉駅
小倉駅内ではうどん店の地元企業対JR九州グループの構図で争われている。競争の土俵はJR九州内であり、一方は立場弱いなかでの営業を強いられている(と思う)。
運営:北九州駅弁当
① 北九州名物かしわうどん@店名不明
② うどんそば@店名:ぷらっとぴっと
運営:JR九州フードサービス
① 小倉自慢うどんそば@店名不明
② 小倉自慢かしわうどん@店名:玄海うどん
これは大企業JR九州と地元企業との共存共栄の美しい姿なのか、それともJR九州の弱みを握っている地元企業のしたたかさなのかは不明だが、同じうどんでも30円ほどの価格差となっている。
30円の差
店のカンバンに自慢や名物と銘打っているものの店名が不明な店もみられた(判断つかなかっただけのことか)。
参考 webキタキュースタイル 【グルメ】小倉北区
【 北九州名物 かしわうどんのカンバン 】
■ 番外編 5 小倉駅
店舗スペースがかぎられるのは、プラットホームで営業する立ち食いうどん店の宿命のようで、ここでも女性(O-60と思われる)が一人切り盛りしている。
体格のいい男性では作業に支障ありそうだ。
ここもキャッシュオンデリバリーだが、自動券売機によるチケット制の同業他店もある。
プラットホーム上の立ち食いうどん店は外部と仕切りのないオープンスペースな空間が普通だが、ここでは仕切り戸のあるクローズド型の店舗もある。
JR鳥栖駅の中央軒のように駅一社独占での営業でないため、店舗形態はバラエティになっているようだ。
雨風はしのげる上に冷暖房完備のため、気象状況に関係左右されることなく食すことができる。JR鳥栖駅の中央軒は、それができない。
【 クローズ型店舗 】
■ 番外編 6 小倉駅
北九州駅弁当株式会社に戻そう。先のうどん店:ぷらっとぴっとは店名ではなく、愛称であることがわかった。
同社のHPで説明されている。
愛称を付ける前に店名をつけるべきだろうが、この点は経営者判断のためなんともいえない。
ぷらっとぴっと
アメリカの俳優;ブラッド・ピットは親日家ときいていたが、ここまで親日度は高いのかと関心した。
ぜひとも彼の主演映画が公開されるたびに映画館で1,800円払ってみなければならないと思ったが、同店と彼は関係ないようだ。
「ぷらっとぴっと」とは、プラットホームとピットインかけたものと説明がされている。どおりでヒラガナ表記だ。
あのうどん店はF1のピットかと思うと、JR九州の運転手さんにもぜひとも食してもらいたいものだ。
もちろんスピードではなく安全を願ってのことだ。
それにしても立ち食いうどんを好むオヤジたちが、あの店を「プラピ」などと言っているのだろうか。
【 ぷらっとぴっと 】
■ 番外編 7 小倉駅
立ち食いうどんは立って食してこそ、あるいは現地にて寒さ暑さ、人の目を背にして食すべきだが、通販もされている。
ご家庭でもあの通りの味が出せるかは難しいところだろうが、楽しめはする。
できれば自宅でも立って食べてほしい。 送料の負担は仕方ない。
しかし、わざわざこの小倉駅まで来て食さなくていいと考えると無駄な費用をおさえられることにはなる。
小倉エリアの経済的発展のためには、ぜひとも小倉駅を訪れてほしいものだが。
北九州市内であれば、小倉駅でなく同社の飲食店も数店あり、そこでいただくことができる。
ただし、これだけのために北九州を訪れる価値があるかの判断は、人による。
■ 番外編 8 小倉駅
ひらめいた。鹿児島本線をはしる小倉駅や鳥栖駅で、ぜひともかしわうどんサミットをやってほしい。
鉄道会社は鉄道を走らせるだけでなく、うどんもゆがく時代になっている。
折尾駅には東筑軒があり、大牟田駅には大牟田うどんがある。
JR博多駅すぐそばの交通センタービルの地下には、まきのうどんの店舗がある。
ただし、同店は座って食すうどん店であり、駅舎そのものとも離れている。立ち食いでもなく、鉄道とも縁がうすい。
JR九州の社長をつとめた唐池恒二氏の書籍にも同社が運営するうどん店の健闘ぶりは伝えられていた。
九州の土壌ではラーメンに分があると考えられるが、鉄道会社発のうどんブームをつくってはどうだろうか。
きっと一時的だろうが運輸収入は増えるハズ。
以上番外編。 話を中央軒に戻す。
■ 中央軒 11
九州の立ち食い系かしわうどんといえば、小倉駅の玄海うどん、黒崎駅の東筑軒が知られている。
東筑軒は駅弁:かしわめしも知られているところで、かしわめしを製造・販売している中央軒とビジネスがかぶる。
それほど差別化しているといえず、互いに競合することもないと思われるが、東筑軒のほうが競争力があるようにもみえる。
この差は営業エリア内の人口の多さだろうか。
鳥栖までふくめた北部九州で かしわめし/うどんミーティング なイベントをやってみてはどうだろうか。
小倉駅の玄海うどんからはじまって、各駅の名物うどんを食しながら南下し、最後は鳥栖駅の中央軒で終えるというイベントである。
鳥栖駅でフィナーレを迎えると参加者は、その後北へ南へ西へ東へ、鉄道で散開しやすい。
必ずしも鉄道でなくていいが、鳥栖であるとなにかと交通の便が良い。
運輸収入も見込め、かつJR九州協力業者への売上向上にもなる。ただし参加者は
確実に太る。
さらに南下するとJR大牟田駅にも立ち&座り食いの大牟田うどんがあり、同店のかしわうどんは420円(税込)である。
イベントの回数を重ねれば、かしわうどんサミットの開催も可能だ。
JR九州はフードビジネスにも力を入れているのでぜひやってほしいが、自社へのビジネス的メリットは少なく、協力業者の儲けを増やすイベントをやってくれるだろうか。
JR九州は、公共交通事業者として地域貢献も使命にあるのだからぜひともやってほしいものだ。
ちなみに玄海うどん、大牟田うどんは、JR九州グループ:JR九州フードサービスの運営だ。
【 大牟田うどん 】
■ 中央軒 12
中央軒の本社は、鳥栖駅の駅舎を出て左前方にみることができる。出口は一つしかないので迷うことはない。
九州初の立ち食いうどんやブランド力のある駅弁をもつ同社にしては、社屋は少々地味だ。
この地味なたたずまいが、多くの人の共感を得ているのだと思う。なお、現鳥栖市長は中央軒の社長でもあった。
市長のプロフィールによると、地元鳥栖に生まれ、高校までは地元で終え、その後、東京の大学へ進学。30歳で同社に入社し代表取締役に就任、51歳で市長選初出馬初当選、現在3期目をつとめる。
どういった人物かはわからないが、地元の立ち食いうどん屋の社長が地元の市長をつとめるのは、好ましく思える。地方はこうあってほしい。
【 中央軒社屋 】
■ 本号はここまで
【ガイド】中央軒(ちゅうおうけん):佐賀県鳥栖市
訂正の連絡はこちら
【注意】
地図はグーグルより加工
価格・数量などは公開当時のもの
下手上手関係なく画像はローカライズド(LCD)
現地に赴く場合は、公式情報を確認されてから行くように
ここまでのおつきあいに感謝いたします。
なお、ここで紹介したことはすでに過去の情報となっていることを申し伝えておきます。
マチとの遭遇
#オールラウンド九州(ARQ)
製作:ローカライズド(LCD)
■ メンバー
#1 風戸ケイキ(リサーチ)
#2 ワリアイト・リョウ(リサーチ)
#3 タシロ(プレス)
旅とカットソーシリーズ 2017
読者コメント