【報告】佐伯市をウロウロする ②/3の続きです。
佐伯。九州一面積の広いマチとのこと。広ければそれだけマチに名産や名所などのコンテンツも多いはずと思います。しかし、コンテンツの質が高くなければ、「広いだけ」のマチとみなされています。広いだけのマチは退屈なマチとなります。佐伯に人をひきつけるコンテンツのリサーチするとともに、リサーチをした当人の現地での行動をお送りします。なお、お送りするのは九州を中心に活動する地域活性化ユニット:ローカライズド(LCD)。何回かに分けて同地を訪問した際の記録です。
【 地元の駅 】
■ 佐伯2度目
道の駅には温泉があるところもある。佐伯市にある道の駅やよいにも温泉がある。同駅には「死海の湯」があって、イスラエルの死海を再現したような温泉ゾーンがある。
もちろん普通の温泉もある。
しかし、なぜ、イスラエル?
緯度がだいだい同じということだけか? 理由はそれだけか?と思えたので、温泉へ入るのはやめにした。佐伯体験を一つ逃した。
注意:道の駅やよいの「死海の湯」は2020年7月13日(月)をもって終了となりました。
■ 佐伯2度目
似たような具合で、佐伯市は大阪府の泉佐野市と特産品相互取扱協定を結んでいる。
しかし、なぜ、泉佐野市?
先方の特産品はタオルだが、佐伯の人がとくにタオルを欲しているということはないだろう。温泉にはタオルだが、少々限定的な話だ。
■ 佐伯2度目
地元行政の考えはイマイチ謎だが、地域の活性化のためにそれなりにチエを使ったのだろう。
佐伯市は泉佐野市ほどではないが、ふるさと納税では勝ち組の部類に入るといえる。
しかし、ふるさと納税で国に挑む泉佐野市とのタッグは、“正解か?”といえると、微妙なところだ。パートナーを選ぶにも慎重さがほしい。
【 佐伯の場所 】
■ 佐伯2度目
なかなか、うまいものにありつけず。佐伯体験を少しずつ逃しているようだ。朝食はバイキングもあって、ついビンボー根性が出て食べすぎた。おかげで13時すぎてもお腹がすかない。
遅くなると晩メシにつかえるので、さほど空腹ではないが昼メシにする。手早くすませるために、カラアゲとおにぎりにした。おにぎりは炊き込みご飯をにぎっただけのようなものにみえる。
■ 佐伯2度目
手にしたおにぎりはこのあたりではよくみかけ とりめし と称されて販売されている。
この「とりめし」の地理的範囲は佐伯一帯それとも大分全般なのかは不明だが、大分ではよくみかけた。
伊勢海老のようにお値段が張るものでないので、購入にためらいはない。
■ 佐伯2度目
地元のカラアゲとおにぎりであっても、カラアゲとおにぎりではローカリティが少々うすい。ヨソの土地に来たらその土地のものをいただくというのが、ローカライズド(LCD)のモットーだ。
このあたりで栽培されているお茶のボトル缶を買った。缶にはひらがなと漢字で「いんび茶」とある。
正解はどれ?
- 因尾茶
- 隠微茶
- 淫靡茶
夜に飲むお茶として販売すれば、一定の売上を見込めると思う。このお茶も佐伯市のブランド認証:さいき殿伝の認証産品であり、特定の時間帯のお茶として販売はなされていない。なお、正解は1番。
【 いんび茶 】
■ 佐伯2度目
道の駅やよいのベンチでカラアゲとおにぎりをいただく。地元産品をいただいているので、佐伯体験はしているといえる。 いんび茶もいただく。
目の前は佐伯に名産をもたらす一級河川:番匠川(ばんじょうがわ)が流れている。 遠くには広い川幅に鉄橋が架かっているのがみえる。撮り鉄向きのスポットだ。
人の心に刺さらないのか観光パンフの類ではとんと見ないシーンだ。このシーンが目に入ったのは自分がヨソ者だからか?
■ 佐伯2度目
列車が鉄橋を渡る音が心地よく聞こえる。ただし1時間に上下1本の便数では1時間で2回ほどしか味わえない。
そんなのどかな場所に東証2部に上場している企業がある。
本社は東京都港区、本店は大分県佐伯市と少々ややこしいが、売上高(連結)200億円超の大企業がこんなところにある。
■ 佐伯2度目
元々は東京本社で生産拠点が佐伯に集中しているだけのことだったが、こちらを本店としたようだ。
創業は1954年(S29)、当時から営業の拠点は東京、製造の拠点は佐伯となっており、医療機器を作っては売っていた。 純粋に同地創業企業とはいえないが、地元佐伯に十分に縁はある。
■ 佐伯2度目
業容が拡大するにあたって、佐伯あたりに工場を建設して地域経済に貢献している。雇用だけでなく税金の面でも貢献している。
工場があることによる大分県内の自治体への納税額は以下のとおり(*:2016年)
- 大分県 7,872万円
- 佐伯市 4,711万円
- 豊後大野市 2,303万円
- 臼杵市 2,170万円
税金では地元にそれなりの貢献をもたらしているが、ビジネスは下手なようだ。医療分野の製品を製造・販売している企業の利益率は往々にして高いのだが、同社のそれは低い。
* クモノス(株)ディレクターズ
■ 佐伯2度目
せっかく本店を地元に持ってきたもののリストラがはじまるとは、地元は少々残念な思いだろう。そもそも本店移転はリストラ策ではなかったのか。
イナカでノンビリ研究開発というわけにはいかないようだ。ビジネスはとかく世知辛い。
■ 佐伯2度目
佐伯市は東京都内の高級レストランの食事券を返礼品としていたため総務省よりご指摘があった。市ではメニューに佐伯市の食材を使っているからそうしていたと理解のようだった(*)。
ふるさと納税をした人はそのレストランに行っても、佐伯市の食材の料理をオーダーするとはかぎるまい。
その反省からか、同市の返礼品であるJTBの発行する旅行クーポンは地元佐伯市の宿泊を義務付けている。しかし1万円分でも10万円分でも1泊というのは、偏りが大きく地元経済には大きく貢献すまい。
* 日本経済新聞 20190907
■ 佐伯2度目
ごまだし。ウィキペディアでは調味料として紹介されている。
地元の郷土料理のようだが、地元ネイティブの間でも知られていない、反対に全国的知名度があるという人もいて、知名度についてはマチマチだ。
見た目には薄い茶色の味噌のようにみえる。
■ 佐伯2度目
ヨソ者には食べ方がわからず、佐伯の人は味噌を食べるのかと思えた。地元ではうどんのトッピングとしたり、豆腐の上にのっけたりと、食べ方にバリエーションがあるようだ。
地元に縁のある食べ物であることは十分わかった。見た目もローカル度高い。地域一番店とされる店でごまだしうどんをいただいたが、自分にはイマイチだった。ごまだしよりもうどんにイマイチであった。
しかし、店主はフレンドリーだった。ふれあいを求めるには最適な店だ。
■ 佐伯2度目
地元有志:佐伯ごまだし暖簾会によるwebサイトを見つけた。
しかし、2016年の秋以降更新がないところをみれば、ブームかなにかでwebサイトを立ち上げるなど一時だけは盛り上がったのだろう(*)。よくあるパターンだ。
地元名産をブランド化にするには、継続するパワーが必要だ。察するにごまだしは地元の食べ物ということはわかった。 ごまだしは道の駅などで目にする機会も多く、地元ブランド認証であるさいき殿伝の認証品の産品でもあるようだ。
とはいっても認証品だからといって全国的知名度を得ていたり、販売好調だったりするわけではないようだ。 これは佐伯にかぎらず、どこもたいていそうなので不思議ではない。
* 2019年11月検索
【 ごまだしのキャラ? 】
■ 佐伯2度目
地元ごまだし製造業者のなかでも漁村女性グループめばるのものが、知られているということを耳にした。時間もあることだし、寄ってみることにした。漁村女性グループというのがひっかかった。
同グループ製のごまだしは、片手にのるほどの大きさの瓶に荒縄が巻いている。手にすると中身は重いのかズッシリ感があった。パッケージが瓶というのもある。
ラベルには手書き風書体で「ごまだし」と書かれてあり、ローカリティを感じる。 こういった商品には、都会のすかしたデザイナーなどが関わって欲しくないものだ。とはいってもすでにこの時点で関わっているのかもしれないが。
■ 佐伯2度目
パッケージから海の荒々しい雰囲気が伝わる。このパッケージはディーンアンドデルーカの店頭でも目にした。
こういった海辺の工場から都会のしゃれた食品店の棚に並ぶ商品が製造されているのは美しい形ではないか。
6次産業化といって旗を振っている行政は、こういった例をとりあげて紹介すべきでは。
■ 佐伯2度目
ディーンアンドデルーカから取引依頼があった際、当初ディーンアンドデルーカを何者かわからず、しばらくほっといていたらしい。
ほっといたのは代表者である。 するとグループの代表者の娘さんが放置に気づいて、代表者にディーンアンドデルーカからの問い合わせは 「福山雅治からラブレターが来たぐらいのできごとよ」 と、コトの大きさをわかりやすい形に説明して、取引をはじめるようにさせたとのこと。
ちなみに代表者はおばあさんの域である。福山雅治の魅力おそるべしである。
■ 佐伯2度目
ディーンアンドデルーカと縁のなさそうな同グループの加工場は漁村にある。海の加工品だから漁村にあっても不思議はない。
訪れたとき、帰り支度をしているようであった。その代表者のおばあさんは話好きなのか、帰り支度をとめて、こちらに色々教えてくれる。しばし話しこんだ。
日本>九州>大分>佐伯>鶴見
このおばあさん、地元のこのあたりを佐伯ではなく鶴見という。たしかにこのあたりは鶴見だ。 地元のエリアがより限定的になっている。
このあたりは佐伯市であるも市町村合併する前は南海部郡鶴見町(みなみあまべぐんつるみまち)であった。
年齢からするとおばあさんの域であったが、ずいぶんチャーミングであった。がぜん佐伯、好きになる。この場合、鶴見か。
■ 佐伯2度目
めばるのおばあさんと話しこんでいたら、夕方も遅くなってきた。鶴見から先、寄りたい観光スポットもあるがレンタカーを返す時間もせまってきているので引き上げることにした。
帰りながら晩メシは何を食べようかと悩みながら戻る。レンタカーを返した後の晩メシとなるとおのずと宿の近くになる。となると、店もかぎられる。
■ 佐伯2度目
佐伯はラーメンが名物であることを思い出した。人気のない山奥にひっそりと店を構えるラーメン屋が人気という話も商工会議所の人から聞いた。
車で移動販売するラーメン屋もあると聞く。 レンタカーを返した後、宿にいったん戻りスマホで地元のラーメン事情を調べる。ウィキペディアに「佐伯ラーメン」のページもあり、地元有志によるラーメンマップも作成されている。
ごまだしうどんが名物なマチのはずだが、こちらについてはそういったものは発見できなかった。
【 ひっそりと店を構えるラーメン屋 】
■ 佐伯2度目
宿の近くのラーメン屋を見つけ、そこに行くことにした。19時すぎの入店だったが、自分の注文で本日の麺がなくなったので本日はおしまいとなった。
メニューはラーメンとごはんぐらいしかない。ジュースはあってもビールなどのアルコールの類はない。
■ 佐伯2度目
夕食時もあってお客の入りは上々。家族連れ、仕事帰り風の男性と客層はバラバラ、女性一人客はいない。厨房で主人とその奥さんと思わしき女性がモクモクと作業をしている。
ときおり白い湯気が厨房内をただよう。 カウンターで店内の隅奥にあるテレビをしばらく眺めていたらラーメンが運ばれてきた。 麺をすする。
それほどの感動はなかったが、行列必死の店の味らしい。同店のラーメンにありつけただけでも自分は運がよかったようだ。店を出た。明日こそは寿司にありつこうと決心した。
国内どこにでもあるラーメンだが、地元産の食べ物を口にはした。佐伯を体内に入れた。
■ 佐伯2度目
ヨソの土地に来て晩メシがラーメンだけでは少々さみしい。
このあたりもお一人様向けの飲み屋もなさそうであり、そもそも店らしきものが全国チェーンのスーパーぐらいしかない。遠くに煌々とまぶしいコンビニがみえる。
このあたりの夜7時以降は他県資本に押されっぱなしではないかと思いきやファミレス:ジョイフル(本社:大分市)があることを思い出した。押されっぱなしではないことを確認した。
ジョイフルがあることを思い出すもジョイフルには寄らず、スーパーに入って佐伯と同県の大分産の焼酎とツマミを買った。 宿に戻って部屋から駅をながめながら焼酎をいただく。
都会の鉄道のように頻繁に列車は走っておらず、列車の行き来は少ない。
■ 佐伯2度目
地元のふぐも名産らしく、それを知る人と金持ちしか食べられないらしい。それを知ったが金持ちでないので食べられない。ワリアイトだったら、迷うことなく食べるのであろう。
よくよく考えたら自分の佐伯の情報となると、食べ物絡みしかない。佐伯は面積が九州一ということを思い出した。 所得も比較的高いことも思いだした。
それだけ広ければおいしいものも多いだろう。ただ、広さでは所得の高さは説明できない。
■ 佐伯2度目
嘉風(よしかぜ)。地元出身力士らしく、後援会ののぼりが風に揺れている。2018年(H30)は負け越しが多く、成績は芳しくない。
後援会の事務局は地元の大病院。1982 年(S57)生まれの嘉風関もコドモの頃にはお世話になったのではないだろうか。
地元出身の力士はいまのところ嘉風関のみ、さほど相撲がさかんな土地柄でもなさそうだが、地元佐伯市の出身が待たれる。力士はローカリティあふれるスポーツ選手といえる。
嘉風関所属の尾車部屋一門の力士数名が地元佐伯市に合宿でやってくる。地元では嘉風相撲大会なる大会も開催されている。地元出身力士の登場に期待したいところだ。
【 がんばれ!!嘉風関 】
〓 佐伯の訪問の2度目はいったん終わりとなります。以降は佐伯への3度目の訪問の記録です。なお、訪問したのは1、2度目とおなじくローカライズド(LCD)メンバーです。
# またしても佐伯にやってきた。リアス式海岸が自分を呼ぶのか、まだ寿司にありついていないから佐伯に行きたいのか、わからないが佐伯への訪問は重なる。前日は仕事で大分市内であった。大分市内での名物のとり天と麦焼酎を延期し、前日の夜に佐伯入りして佐伯で朝を迎えた。
■ 佐伯3度目
朝メシはよくばりすぎないように心がけたが、ビンボー症なのか、またしても少々食べすぎたようだ。
朝メシの場には、作業服姿の男性が多かった。ユニフォームの刺繍には○○造船とあり、造船関係者のようだ。造船のマチだけに当たり前といえば当たり前だが、宿泊しているということは地元には労働力が足りないのだろうか。それとも地元にはない特殊技術が必要とされているというか?
一方、朝メシをお世話する女性スタッフは、地元の女性と思われる。この時間にここで働くにはこの辺に住んでおかないといけない。こちらは住む場所と働く場所のバランスが取れている。
■ 佐伯3度目
食べすぎたと後悔しながら部屋に戻る。今日の予定をスマホで確認する。レンタサイクルを駅のそばの観光案内所で借りられるが、営業開始の9時まで待たないといけない。
役所の運営なのか9時きっかりでないと貸さないのは残念なところだが、レンタサイクルはここしかないので9時まで待つ。一旦チェックアウトし、荷物を預ける。
■ 佐伯3度目
佐伯市は城下町であることを知る。市役所の近くにお城がある。地元の公立高校:佐伯鶴城高校がある。
地元市長も同校を卒業しているようだ。市長プロフィールによると同市長のスローガンは
佐伯が一番
とある。佐伯ファーストであり、トランプ大統領とあまり変わらない理念の持ち主のようだ。
ただ、この時期は 〇〇ファースト が流行りもしている。市長の言う「佐伯が一番」の真意を知りたいところだが、佐伯が一番なのは面積だけのようであって、経済の面では残念ながらのポジションに甘んじているところが多いようだ。
■ 佐伯3度目
衆議院選挙ははるか前に終わったのだが、立候補者のポスターは撤去されずにそのままになっているのはさみしい。
先の衆議院選挙では自民党の圧勝だった。佐伯市でも自民党の候補者がもっとも票を集めている。
■ 佐伯3度目
佐伯市は小選挙区では大分県第2区。選挙区選出の自民党のセンセイは、地元佐伯ではなく、大分県のヨソの町出身だが、地元選挙区には3ヶ所ほど事務所を置いている。
面積が広いとおのずとそうなるのだろう。出身地は当地ではないが選挙区の関係もあって、地元本部事務所は佐伯に置いている。
一方、比例代表。政党はまんべんなく出ており幸福実現党もしっかり出ている。同党は大分県全体で得票シェアは1%も満たない。地元市議会には同党所属のセンセイがいるが、それほど票を取れていない。
同党の得票率はヨソのマチが多いところもある。
選挙結果からすると共産党は票を多く集められず、公明党は多く集めている。ヨソのマチの選挙は気が楽でいい。多少地元の色が出ているかどうは気になるところである。
参考:総務省 選挙関連資料
■ 佐伯3度目
佐伯は造船のマチであることに気づく。商店のガラス窓に白地に船という赤い文字と青の波を模した3色のポスターが貼ってある。
一見かき氷屋かと思えた。市内ではこの3色のトリコロールのポスターをよく目にした。そうそうマチにかき氷屋があるわけはないので不思議になっていたが、かき氷屋のポスターではなく、進水式の案内と知る。
この案内は旗らしく進水式吊り旗として1,000円で販売されている。
■ 佐伯3度目
地元には進水式を推進する会なる団体があって、先の旗も同団体が取り扱っている。フェイスブックで建造した船の進水式を案内しており、大勢の人が見に来るようだ。
チラッと聞いた話によると、この会のメンバーから市会議員が出るそうだ。
進水式を推進する会
シャレが利いている。地元には造船会社が3社ほどあるためか頻繁に進水式をやっているようにもみえる。 スケジュールをみると1月に1回という月もあり、多い月は2週間に1度のペースで進水式がなされている。
■ 佐伯3度目
大型船を得意とする造船会社は、建造ペースは遅い。小型船となると建造ペースは早い。
建造ペースのちがいもあって、佐伯では進水式をしょっちゅうやっているようにもみえて景気よさそうに感じる。
進水式では餅まきがされ、粗品としてタオルや地元障がい者福祉施設の作業によるお菓子の詰め合わせが配られる。
進水式だけでは地域活性化にならないと思ったのか、「船は進水、食は心酔」というキャッチコピーあり、食による地域活性化も目論んでいるようだ。
■ 佐伯3度目
佐伯では進水式を一般公開している。味気ないスチール色のクレーンやドックに、赤と白の紅白幕が船のさきっぽに取りつけられているのは、見た目に楽しい。
造船不況は一時のできごとでなく、常時のようだがこの瞬間はそう思えない。 進水式の場には造船会社、船主、地元の人と集まっている。
地元の人にチラッと話をきくと、3社それぞれ進水式へのイレ込み度合いには温度差があり、“三社三様”であるとのこと。 進水式の一般公開にウエルカムな会社もあればそうでない会社もあると。
【 地元造船会社 】
■ 佐伯3度目
進水式は観光協会の人の話では、県外からも多く人がやってくる観光コンテンツだと。
進水式は県外から多くの人がやってくるほどの観光コンテンツにはみえなかった。ジャージ姿やツッカケに普段着の地元住民といった地元勢がほとんどだった。
観光協会の人の話と実際の現場はちがう。それともこのときだけがそうだったのか? 進水式の公開はべつにめずらしいことではなく、造船のマチであるなら普通に公開しているらしい。
【 進水式 】
■ 佐伯3度目
佐伯は大きな産業のないマチと思っていたが、造船という重厚長大なビジネスがあることを進水式で確認できた。
地元の人の話をチラッときくと、地元造船各社の売上は50億~100億円らしく、地元の雇用吸収力も大きいという。
50億から100億円とはずいぶん幅広いが、景気の波を大きくかぶるからそれだけ変動するとのことだ。
■ 佐伯3度目
このあたりの造船業ではつぶれなかったり、大手の傘下に入らなかったりする会社は1社ほどではないかと、地元の経済通らしいおばさんが話す。
むかしは地元には造船会社がたくさんあったらしい。
現在佐伯にある3社の造船会社の売上高は地元の製造品出荷額の1/3を占めるらしく、地域のリーディング産業ともいえる。
■ 佐伯3度目
地元市役所は、発注した船主会社には「よくぞ発注してくれました」のような感謝状を贈るらしい。
造船は地域経済を引っ張るビジネスだけにこれもシティセールスといえる。 感謝状ではパフォーマンス映えはしないが、発注者は喜ぶのではないだろうか?
とはいっても市役所に造船課なるセクションはなく、市は本腰入れてないようにもみえる。製造品出荷額の1/3では、まだまだというところか。
■ 佐伯3度目
造船所からの移動は困難を極めるだろうと覚悟していたが、タイミングよく路線バスが来たので、それに乗る。またしてもお客は少ない。
全国のバス会社の7割は赤字ときく。それを体験しているが、乗っているだけではお客の少なさはわかるが、赤字かどうかはわからない。
市内をはしる路線バスの路線は少なく、この路線にはなんども乗っている気がする。目当てのバス停に着いたので降りる。
■ 佐伯3度目
城下町の外れにバスターミナルがあった。以前のうらぶれたバスターミナルからくらべるとかなりコギレイに変身している。
以前のバスターミナルは、いかにも地方のバスターミナルというかんじで、それはそれで雰囲気はあった。 バスターミナルから歩いて3分ほどのところに商店街もある。
地方の商店街はどこも同じようなもので人通りは少なく、かろうじてシャッターが開いている商店が数えられるほどであった。商店街の通路はアーケードだけに光が差し込み明るいが、景気は暗い。
■ 佐伯3度目
佐伯といえば、一時の麹ブームで知られた糀屋本店の浅利妙峰氏がいることを思い出した。佐伯の2大おばあさんといえばこの浅利妙峰氏(1952年生まれ)と漁村女性グループめばるの桑原政子氏(不明)だ。
糀屋は長男が跡を継いだようだ。めばるは後継者の存在はわからないが、娘さんがお料理研究家として地元大分では知られた存在らしい。
おかあさんとおなじく娘さんもチャーミングだったこと思い出した。 どちらもいまだ現役で、ビジネスは続ている。こういった女性を知ると、ビジネスは育てるという点で女性のほうにアドバンテージがあるのではないかと思える。
ここでもさいき殿伝の文字をみる。めばるのおばあさんと話をしたこともあって、どうもめばるびいきにはなる。
■ 佐伯3度目
あてもなくウロウロしているのとおなかが一向にすかないのとで、昼メシのタイミングを逃してしまった。目の前にはうまいもん通りという名の飲食街がある。
お昼時の営業時間を外したこともあって、ひっそりしている。そのひっそり感は増している。人とすれちがわない。今日の夕方に佐伯を発つので、佐伯最後のメシは寿司にしたい。
しかし、寿司屋は閉まっている。佐伯は寿司のマチだけあって、カウンターだけの店だけでなく回転する店もある。同じ寿司屋でもさまざまなパターンがあるのはマチの名産としての底堅さを感じる。
【 うまいもん通り 】
■ 佐伯3度目
ドライブスルーもあってもいいのではないかと思えた。キッチンカーもどうだろうか。きっと話題を呼ぶ。
回転する寿司屋さんは地元の水産会社直営の店のようだ。鰻の養殖が主要ビジネスの企業であり売上高は146億円、企業規模もあと少しで大企業というところにある(*)。
造船のマチだけに造船会社が幅をきかせているのかと思いきや、食品会社もおおいにがんばっているようだ。
* 山田水産HP
■ 佐伯3度目
中トロもあるがアイスクリームもある回転系の寿司屋はやめにした。寿司のマチに来て回転寿司では、ワリアイトにバカにされるので、立ちの寿司屋に行く。
回転寿司から立ちの寿司屋まであるとは、寿司のマチといえる。そのちょっと前、 世界一佐伯寿司 とかいってプロモーションしていた。
そのカンバンは、早々下ろしたほうがいいと思えた。マチの雰囲気からワールドさが感じられない。
■ 佐伯3度目
うまいもん通りをウロウロしていると営業している店があったので入った。ネットでの評価も悪くない。入ったはいいが店内の電気は消してある。
「今日は終わった」と無愛想におしまいを告げられる。残念ながら出る。
お客がいないと、営業時間中であっても店を早々閉めるようだ。働き方改革は佐伯では前倒しで取り組んでいるようだ。
■ 佐伯3度目
ひきつづきうまいもん通りをウロウロする。たしかに寿司屋は多い。佐伯の人たちは課税所得額が県内全18市町村のなかでも7番目で平均値よりも高い。
そのため寿司屋も繁盛するのだろう。それにしても昼は営業中なはずだが、先の店のように閉まっている店が多い。 平日の昼間から寿司をつまむようなことはしない働き者が多い土地なのだろう。
だから課税所得額も高いのであろう。となるとこの時間に営業している寿司屋は、観光客相手ということか。
佐伯ではついぞホームレスを見かけなかった。ホームレスは都会でないと生きていないようだ。
■ 佐伯3度目
また一軒見つけた。営業時間内だが閉めようとしたところだったが、気分よく開けてくれた。
カウンターに座る。佐伯に寿司屋は多くあるが、対応は店ごとに異なるようだ。
さっさと注文する。焼酎もたのむ。ネットのグルメサイトの評価では高評価ではないが、悪くはない。
■ 佐伯3度目
佐伯の寿司はネタの大きさに特徴があり、たしかに大きい。大きすぎて酢飯は見えない。
大きいからといってお値段は高いわけではない。リーズナブルだ。店主によると、ネタが大きな寿司は下品という声もあるらしいが、そんなことは気にしない。
食べる本人はそれほど上品ではない。
■ 佐伯3度目
お客は自分一人。店主の握り作業を独占しているようで得した気分だ。なぜ佐伯の寿司はネタが大きいのかとたずねたら、海が近いからだという返事だった。
国内には海が近くてもネタの小さい寿司屋は多い。地域性とは関係なさそうだ。
はじめは普通の大きさで出していたが、どの店も競うように大きくしていったから、全体として大きくなったとのこと。佐伯の寿司屋にもネタの小さい寿司屋はあると。
■ 佐伯3度目
この店に入れてよかった。お客は自分一人だが、店主はなにかとこちらの質問に細かく答えてくれた。
入りそこねた先の店では佐伯を嫌いになりかけたが、こちらでの対応で嫌いにならずにすんだ。 佐伯、好きになる。
あまり長居しては悪いので適当なところで切り上げて店を出た。おいしさが身に染みる。と同時に人間3日も4日もうまいものを食べ続けられないことが身を持ってわかった。
出だしの粗食は結果として良かった。 と考えると、食べ歩きによる地域活性化は難しいとうことか。
■ 佐伯3度目
荷物を置いている宿まで歩いて帰れる距離だが、タイミングよくバスが来たのでそれに乗る。またしてもバスの大きさのわりには乗客は少ない。それにしても路線バスはいい。
福岡に帰る特急の発車までにはまだ時間がある。といっても大きなマチとちがって駅や駅前にスターバックスはない。それどころか喫茶店もない。閑散とした駅前だ。
■ 佐伯3度目
駅前にスターバックスがないことの経済的損失は大きい。結局、もう1度さいき海の市場○(まる)に寄ることにした。 この店がなぜ人気なのかわかる気もした。
なぜなら、他に店がないからだ。
■ 佐伯3度目
駅近くに酒造メーカーがあるのだが、リサーチのアポイントを入れようとしたら残念ながら断られた。
天下無敵という銘柄をもつだけに敵なしなのだろう。佐伯に来るたびにこの銘柄の酒造メーカーをひいきにしていたが、他社メーカーの焼酎に乗り換えるとする。
■ 佐伯3度目
またしても、さいき海の市場○(まる)の2階へ。階上からのながめは抜群というわけではないが、ここで食べるようになっているので理由なく上がる。
かなりお昼をすぎているのだが、この時間に食べている人もいる。 佐伯のリサーチも終わりに近づいてきた。この3日間をふりかえる。そもそもなにが目的だったか忘れてしまったが、佐伯には色々あって色々ないということがわかった。
たしかにスターバックスはないが、ラーメン屋は多くあった。本屋もないだろうと思ったがチェーン展開している大型書店が営業していた。
海もアリ山もアリ川もアリ、高齢化と人口減少に悩む国内のどこにでもあるマチという印象だが、一人旅でウロウロするにはいいマチであった。佐伯をウロウロしている間、大量の外国からの団体客とも会わずにすんだ。
■ 佐伯から帰る
荷物を宿に置いているので引き取りに寄る。旅の課題の一つに荷物がある。荷物を持ってウロウロするのは疲れる。だから荷物は宿にいったん預けてウロウロする。
最終出発駅の近くに宿があるのは都合がいい。観光案内所に手荷物預かりサービスをやってほしい。できたら無料で。
JR佐伯駅すぐそばに観光案内所があるが、そういうサービスをやってくれまいか。駅には駅でコインロッカーはあるが。
本号はここまで
【報告】佐伯市をウロウロする ➂/3
リサーチに協力していただい方々に感謝いたします。
一方、リサーチに協力していただけなかった方、次回ご協力にお願いいたします。
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【注意】
地図はグーグルより加工
価格・数量などは初回公開当時のもの
画像は下手上手関係なくローカライズド(LCD)
なお、取材日当日でないものもアリ
現地に赴く場合は、公式情報を確認されてから行くように
初回リリース:20200808
ここで紹介したことはすでに過去の情報となっていることを申し伝えておきます。
マチとの遭遇 九州編
#オールラウンド九州(ARQ)
製作:ローカライズド(LCD)
■ メンバー
#1 風戸ケイキ(リサーチ)
#2 ワリアイト・リョウ(リサーチ)
#3 タシロ(プレス)
旅とカットソーシリーズ 2020
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