マチとの遭遇 九州編

地域ブランドの罠(九州のケース)

罠#5 佐伯

2020年06月13日 14:11 by keiki-kazeto

佐伯市。九州一広い佐伯市には地域資源(地域ブランドとも)が充実していると思え、それらが充実しているならふるさと納税の返礼品も充実しているハズと考えられ、寄附金も多く集められるハズではないかと推測できます。

 

【 佐伯の一コマ 】

 しかし、現実はそうでもないようです。九州は大分県、佐伯市のケースを例にして検証してみました。そのリサーチに出向くのもお伝えするのも九州を中心に活動するローカライズド(LCD)です。なお、地域資源もブランド資産としてマチの経済価値として算定すべきと考えています。

考えられる図式

面積が広い

それだけ地域資源が多い

返礼品も豊富

寄附金も多く集まる

マチの財政に貢献。

 つまり面積の広さは機会の多さになるということです。なお、本号で記載されている各自治体のふるさと納税での寄附金額はすべて総務省のふるさと納税ポータルサイトの関連資料の実績額を参考にしています。 

製作:ローカライズド(LCD) 

誤字脱字、日本語の少々おかしな言い回しなどについてはご容赦+ご理解ください(お許し願う)。とはいっても、多少下手なほうが人間味もあって、ダイレクトに伝わらんですかね?(ローカライズド(LCD)より)。

 

佐伯

「さいき」と読む

ー 佐伯の場所 ー

 

■ 佐伯でんでん  

 佐伯には地元自治体の認証ブランドがあります。その認証ブランドの名称は

さいき殿伝
さいきでんでん

 です。この地元認証ブランドが、どこまで地元ケーザイを引っ張っているか、もしくは逆の方向に引っ張っていないかをリサーチしました。

【 佐伯殿伝カタログ 】

■ 佐伯でんでん

 佐伯市は、九州地方にある大分県のマチです。九州でもっとも面積の広いマチということは大分県でもっとも広いマチでもあります。となると地元には多くの産品が眠っていると考えられ、ふるさと納税の返礼品の充実ぶりに期待が持てます。

 返礼品の充実はそのまま寄附金額の獲得増にもつながるハズと思えますが、残念ながらふるさと納税制度がはじまってから2018年(H30)までの佐伯市のふるさと納税による寄附金獲得額の各年平均、累計ともに県内ナンバー2でした。なお、ナンバー1は国東市でした。

  国東市 佐伯市
各年平均額

8億3,981万円

2億7,400万円
累計額 92億3,981万円 30億1,401万円

 

 面積をくらべると国東市317.8㎢、佐伯市903.4㎢となっており、国東市の面積は佐伯市の面積の1/3程度です(*)。

面積3倍弱

寄附金額1/3

 面積では佐伯市は国東市の3倍弱大きいのですが、寄附金では佐伯市は国東市の1/3程度の獲得となっています。ふるさと納税とマチの面積は関係ないのでしょうか。

 ちなみに国東市になぜ、寄附金を多く集めるのかとおうかがいしたところ、返答はあったものの明確なお答えはありませんでした。ヒケツだけに話したくないのでしょうか。

* 大分県HP#大分県の統計

■ 佐伯でんでん

 大分県佐伯市は九州でもっとも面積の広いマチです。佐伯市のHPでも

「青い海きらめく清流豊かな緑。九州で一番広いまち」

 とキャッチフレーズのように紹介されています。海もアリ山もアリ川もアリ」という国内どこにでもある市町村のようなマチで、ないのは「若者の就職先とマチの活力」という、こちらも国内どこにでもあるようなマチとなっているようです。 佐伯市には高校は3校ありますが、卒業と同時に若者の活力の多くは地元から逃げていきます。

 これも佐伯にかぎらず日本の地方のマチに普通にみられる現象です。

【 佐伯の一コマ 】

■ 佐伯でんでん

 しつこいようですが面積の広さは名産の多さにつながると、ローカライズド(LCD)は考えていました。冒頭でもお伝えしたように地元佐伯には、さいき殿伝というブランド認証制度があります。

さいき殿伝

 佐伯市ブランド流通促進協議会

 地元にゆかりのある食品やそれら加工品のなかでも、とくに優れている産品が認証されます。認証するのはお役所である佐伯市です。役所にはブランド関係の担当セクションがあり、地元のすぐれた産品を紹介しています。

 金賞が最高賞。金賞以外は単なる認定品であり、受賞ランクはそれら2賞のみになります。金賞は2017年(H29)5月現在で85品目認証されています(*)。

 なお、現在2020年(R1)5月です。2017年5月以降の動静が気になります。2017年、佐伯市のふるさと納税による寄附金は制度開始以来最高の13億5,000万円となりました。最高となったものの寄附金額ランキングでは県内2位。ちなみに上には上がおり、その「上」のマチは国東市です。

* 佐伯市ブランド流通促進協議会

■ 佐伯でんでん

 面積が広いと経済資源の遭遇にも期待はふくらみます。佐伯市には、国内では同地だけで産出される鉱山資源がありましたが、すでに採鉱はおしまいとなり閉山となりました。

木浦鉱山  

 佐伯市のおとなりの津久見市はさほど面積は広くないのですが、地元の地下には石灰石が山のように埋まっています。この先200年は枯渇しないといわれており、6世代先まで安泰と思われています。石灰石という鉱山資源があるせいか津久見市のここ10年の一人当たり市町村所得は県平均よりはるかに高く、鉱山資源が枯渇してしまった佐伯市はその足元にもおよびません(*)。

 国内では佐伯だけで産出される鉱山資源であっても枯渇してしまえば意味はありません。

一人当たり市町村民所得(2006-2016年度平均)

津久見市  309.7万円

佐伯市   217.7万円

大分県平均 260.3万円  

 津久見市は大分県内の市としてはもっとも人口が少なく、面積は小さくても石灰石に土地を多くとられているためか人口密度は県内3番目に高いマチとなっています。とはいっても石灰石のおかげで財政的にリッチなこともあってか、ふるさと納税には積極的ではなく、寄附金獲得額では大分県の市では最下位となっています。

* 大分県HP#平成28年度 大分県の市町村民経済計算

 

【 鉱山があったらしい 】

■ 佐伯でんでん

佐伯市のふるさと納税の寄附金額の推移

単位:千円

 

■ 佐伯でんでん

 ゲームのルールが変わるようにふるさと納税制度の返礼品のルールも変わりました。寄附金額に占める返礼品のボリュームもそれまでにくらべて小さくなり、返礼品の地元関連度がより濃くなりました。  

地場産品基準  

 売れるから、ただしくは返礼品のニーズが高いからといって、地元と関係のない産品を返礼品とするのはNGとなりました。地元と関連性の高い返礼品こそ、ふるさと納税制度の趣旨にマッチするというものです。あわせて稼ぎすぎてもダメよということでしょうか。

■ 佐伯でんでん

 佐伯のふるさと納税の返礼品のなかでもっとも高額な返礼品は地元在住の画家の作品でした。80号のアクリル絵画で

200万円  

 です。同氏制作の作品を掲載しているふるさとチョイスの案内では、掲載されている作品が返礼品となるわけではなく、寄附する人と打ち合わせの上、制作となる可能性もあるようです。

 絵画がふるさと納税の返礼品とは地元の関連度はいかに?という疑問もありますが、地元在住のアーティストの作品ということで基準を満たしているのではないでしょうか。アート作品だけにいくらでも好きな値段がつけられる利点もあり、マチは寄附金総額引き上げのためにアーティストを地元に住まわせて、制作支援をしてはどうでしょうか。

 ただし放浪癖のあるアーティストは土地に固定されたくない性格もあるので、地場産品基準を満たさくなる可能性もあります。 【2020年1月の検索#ふるさとチョイス(以下検索サイトは同)】  

地元含有度 【 ? 】
地元に住んでいるというだけでは・・・
ローカライズド(LCD)による評価 

注意:ローカライズド(LCD)による評価は評価時の気分を含まれる(以後同じ)。

■ 佐伯でんでん

 地元作家の作品の次にお値段の高い返礼品は真珠のネックレスです。地元佐伯のメーカーによる産品です。寄附金額55万1,000円で来ます。 佐伯で真珠が名産とは、ローカライズド(LCD)はリサーチ不足で知りませんでしたが、地元の人にもうかがっても「佐伯で真珠?」と語尾が上がるようでした。

 リアス式海岸が長々つづく佐伯なら、知名度は真珠の産地:志摩におとるものの佐伯で真珠もアリかなと思えます。【2020年1月の検索】  

地元含有度 【 高 】
地元でたしかに養殖されている模様
ローカライズド(LCD)による評価 

【 佐伯の一コマ 】

■ 佐伯でんでん

 アート作品、真珠につづいて次の高額返礼品は、旅です。ただしくは宿泊クーポンですが、宿泊先は佐伯市限定となっています。その点はマチもぬかりありません。寄附金額50万円で15万円の宿泊クーポンは、ちょっとプレミアムが少なくも感じますが、旅ではなく佐伯に共感する人がこの返礼品を選ぶので、共感を得ない人には無縁な返礼品です。

 しかし、ドアマンがいるような高級ホテルのない佐伯に宿泊で15万円消費するのは少々難しくもあります。 とはいっても宿泊料金には当然、朝夕のお食事も含まれていることもあり、そこで佐伯の名物:フグや寿司も堪能できれば、15万円もあっさり消費できるかと思います。 【2020年1月の検索】  

地元含有度 【 高 】
地元以外には泊まれないようになっているため。ただし佐伯市で使い切るのは難しいがそこは、地元への貢献ということで。
ローカライズド(LCD)による評価  

そうだ、( 地名 )行こう。

カッコのなかに佐伯に行きたい気分になったでしょうか。なった方はぜひとも佐伯に足を運んでみましょう。

■ 佐伯でんでん

 アート作品、真珠、旅につづいて次の高額返礼品は、お墓掃除です。こちらは寄附金額46万7,000円で来ます。  

 お墓の掃除に46万円とは、かなりお高く感じますが、お墓の掃除だけでなく、お墓に防カビ剤も塗っていただけます。 ご先祖を思えばこその返礼品です。お墓掃除のために佐伯に帰ろうと思えば、東京(羽田空港)からだと佐伯市(佐伯市役所)まで大人一人では交通費だけで9万円ほどかかることを考えても割高ではないでしょうか。  

羽田空港から佐伯市役所までの移動(*)  

往路:9時台の飛行機に乗って13時30分すぎに佐伯到着  

復路:15時台に佐伯を出て20時10分すぎに羽田到着  

 お墓の掃除は1時間として日帰りだとしたら、上記のようなダンドリになります。ただし、佐伯市は大分県にあるのですが、となりの宮崎県の空港を利用します。【2020年1月の検索】

* NAVITIME調べ 20200122  

地元含有度 【 高 】
サービスは地元に固定されており、地元の事業者による提供のため
ローカライズド(LCD)による評価 

■ 佐伯でんでん

 高額品の定番といえば肉、しかも牛肉です。佐伯市の返礼品にも、当然それはあり、もっとも高いものは寄附金額40万円で来ます。その返礼品ではおおいた和牛4等級以上のステーキが毎月4枚とどきます。

 ふるさと納税には総務省による返礼品基準というのがあり、この場合、佐伯牛ではなくておおいた牛でいいのか?と思えてしまうのですが、いい(OK)のです。  

 地場産品基準の八のロに該当し、県が音頭を取って県内市町村と連携し、共通の返礼品等を取り扱う場合とされるのがコレです。選んだ返礼品の牛はおとなりのマチの牛かもしれませんが、それはそれでルール違反でありません。【2020年1月の検索】  

地元含有度 【 低 】
佐伯産かといえるとそうとはいえないところもあり、より地元に密着させてほしい。基準に問題アリ。
ローカライズド(LCD)による評価 

【 佐伯の一コマ 】

■ 佐伯でんでん

 水こそは地元に固定されている天然資源です。地元佐伯にはユネスコエコパークにも登録された祖母傾国定公園があり、その公園内の湧き水をミネラルウオーターにした返礼品です。同返礼品は寄附金額32万4,000円で来ます。同公園は宮崎県や佐伯市近隣のマチも指定地域となっており、佐伯市エリア限定ではないのですが、地元と縁のないわけではありません。  

 佐伯だけを味わえる水ではなくても、佐伯が含まれていることは間違いありません。ただし、取り扱いは佐伯市外の事業者となっています。【2020年1月の検索】  

地元含有度 【 中 】
佐伯オリジナルではあるが、取り扱いは非佐伯事業者なのは残念。
ローカライズド(LCD)による評価 

■ 佐伯でんでん

 海のイメージのある佐伯。ならば海産物も返礼品にほしいところです。佐伯市で水揚げされた魚介類が、年12回とどく返礼品は寄附金額30万円で来ます。1回に届く量は2~3人前。海産物ですので天候などに左右されることもあり、なんともいえませんが、それも海産物返礼品の楽しいところです。決まり切った返礼品など楽しいといえるハズはありません。多少のハプニングがあって地元産なのです。  

 佐伯近海でとれた魚かどうかはわかりませんが、佐伯市で水揚げされた魚とあるので、地元調達率は高いと考えられます。佐伯には魚市場もありますし。【2020年1月の検索】

地元含有度 【 高 】
佐伯で水揚げされたとある。ここは信用しよう。
ローカライズド(LCD)による評価 

【 佐伯魚市場 】

■ 佐伯でんでん

 万年筆が18万4,000円で来ます。佐伯って万年筆の産地?もしくは文房具の産地?と思えてしまいますが、地元の人にうかがうと「さあどうなんでしょうか」とのお答えでした。

 ローカライズド(LCD)のリサーチでも佐伯はそのどちらでもなさそうという感触でした。 同返礼品は地元佐伯に所在する加工品メーカーの加工によって制作したとなっていますが、万年筆のペン先は大手メーカーのセーラー社、販売は大分県の地域商社となっており、徐々に佐伯含有度は薄まっていきます。

 佐伯の加工メーカーは素材の提供であり、商品名は「SAIKI BLUE 万年筆」ではなく、「JAPAN BLUE 万年筆」となっており、佐伯が遠くなっています。【2020年2月の検索】

地元含有度 【 低 】
加工だけではmade in 地元はムリがある。
ローカライズド(LCD)による評価 

■ 佐伯でんでん

 佐伯は海のマチ。とはいっても海産物ばかりでは少々芸がないと思ったのか、大漁旗の返礼品をそろえました。大漁旗はオリジナルデザインに対応してくれ、大漁旗につきものの四方にフリンジもついています。もちろん、制作は地元佐伯の企業です。  

 その大漁旗は147,000円で来ます。大漁旗とは縁起がいいことですが、漁師ではない人にはどのような状況で使用するのかはイマイチわかりません。それでも漁師のマチ佐伯。ふるさとを思う気持ちがあれば購入しない手はありません。【2020年2月の検索】

地元含有度 【 高 】
佐伯のマチが伝わる一品。
ローカライズド(LCD)による評価

 

【 佐伯の一コマ 】

■ 佐伯でんでん

 しつこいようですが、佐伯には佐伯殿伝という市の認証ブランドがあります。認証された産品がふるさと納税の返礼品としてバカ売れということもなく、認証ブランドとふるさと納税の返礼品はたいして関係ないようです。

 販売に直結するふるさと納税制度が日の目をみた効果もあってか、ブランド認定ではさして販売効果が見込めないのか、それとも地元から産品が出つくしたのか、2017年5月14日以降、佐伯殿伝金賞産品は認証されていないようです。 動きがないのは出つくしたのでしょうか。面積の広い佐伯にそんなことはないと思えます。

 金賞受賞の産品はすべて空振りかというわけではなく、なかには2か月待ちとなる産品もあるようです。

【 国東市/佐伯市 】

■ 佐伯でんでん

 面積が広いとそれだけ返礼品の数も多かろうと考えるのは、やや軽率だったようです。

大分県内のふるさと納税の寄附金額上位3団体

1 国東市 8億3,981万円

2 佐伯市 2億7,400万円

3 臼杵市    8,616万円

上記3団体の金額は2008年(H20)から2018年(H30)までの1年間当たりの寄附金額です。

上記3団体の返礼品点数(*1)

国東市 623件

佐伯市 565件

臼杵市 201件

上記3団体の面積(*2)

国東市 3万1810ha

佐伯市 9万 311ha

臼杵市 2万9120ha

 寄附金額からみると、面積、面積に乗じた返礼品点数は広いから多い、あるいは有利というわけでもないようです。ちなみに地元自治体によるブランド認定制度は佐伯市と臼杵市にはありますが、国東市にはありません。

 面積の大小と同じく、〇〇市認定ブランドがあろうとなかろうと、寄附金は多くも少なくも集められるようです。寄附金獲得は地元資源のマーチャンダイジングと返礼品のマーケティングがカギではないでしょうか。

*1ふるさとチョイス調べ 2020.2月
*2大分県HP#大分県の統計#平成30年版

■ 佐伯でんでん

 佐伯は造船のマチでもあります。リアス式海岸を持つ特異な地形があるからこそ発達した産業といえ、地元には大きな造船所が3社あり、地域経済を引っ張っていると思われます。 造船には進水式という儀式があります。地元佐伯ではその進水式を船主を含めた一般の人にも公開しており、お祝いのおすわけにあやかれます。

 主役は船主であり建造船ですが、一般人も進水の瞬間を目にすることができ、お祝いごとにつきものの粗品をいただくこともできます。 進水式のライブ 進水式はそれぞれ造船会社内で行われ、ふだんは一般の人は立ち入りできない場所に入ることができ、ドックの無機質な空間のなかでみる赤白の紅白幕は、非日常モードいっぱいです。

 船主は市長から感謝状が贈られるということで、造船はマチの稼ぎ頭であることがわかります。なお、いまのところ、ふるさと納税の返礼品には船はないようです。

【 造船のマチ:佐伯 】

■ 佐伯でんでん

 進水式は無料のコンテンツです。造船会社のあるマチではわりとされているイベントですが、造船会社のあるマチはそう多いわけではないので、差別化したコンテンツとなりえているのではないでしょうか。ふるさと納税の返礼品こそ他のマチとの差別化を図りたいところです。  

 先の大分県の寄附金額上位3県とも取り扱い事業者は違えども、「おおいた和牛」を取り扱っています。大分県のマチなので大分県の和牛を返礼品としても総務省の地場産品基準に反しているわけではありません。ただ、そのマチの返礼品であるのならば、地名入り〇〇牛であってほしいと思います。区域の範囲の問題ですが、人が考えるふるさとの範囲の考えでもあります。

ところで進水式といえば(   )です。

(   )に佐伯が入った方は、ぜひ、佐伯に足を運んでみてください。

【 進水式 】

■ 佐伯でんでん

 佐伯の魅力を何で伝えるか?を具体化したのがある意味、ふるさと納税制度でした。販売力で劣る地方の生産者にはふってわいた販売機会でもありました。

 地元行政も生産者も地元の魅力よりもモノ売りに力をいれすぎたきらいがあり、ふるさと納税の趣旨うんぬんが問われていますが、地元へにわか景気をもたらす機会でもあります。 モノで釣ったら、ぜひ人を地元に誘導してほしいものです。

■ 佐伯でんでん

 ふるさと納税制度をきっかけに地元になにがあるかと考えた時に、あんがいあることに気づいた、もしくは気づくきっかけになったかと思います。ただ、同時にこれといった産品以外はヨソのマチとさして変わらないということにも気づいたのではないでしょうか。  

土地  

 どこのマチにも土地はあります。九州一面積の広い佐伯はその土地が九州一あるわけです。いっそのことふるさと納税の返礼品に、「土地」はどうでしょうか。

商業地1㎡あたりの取引価格(*:2018年(H30))

佐伯市    40,206円/㎡

大分県平均  47,346円/㎡

全国平均  154,168円/㎡  

 大分県は全般的に安いという事情もあるのですが、それにしても安いです。これだけ安いと都会で流行りのシェアオフィスなどではなく、シェアしないでオフィスが借りられます。

* RESAS#まちづくりマップ#不動産取引

■ 佐伯でんでん

 モノでも観光でもふるわないとなると地域経済はきびしいものです。ふるさと納税の返礼品は、ほぼ食べ物です。口に入れる体験で地元を感じられるのですが、実際に訪れてみないと地元を感じることはできません。

 ふるさと納税制度で、少なからず「来てください」から「行ってみよう」というマーケティングになった感もあります。

■ 佐伯でんでん

 佐伯のブランド産品が地元経済を引っ張っていかないと、マチの価値は下がりつづけます。世の中は

 SDGs
(エスディージーズ)

 というキーワードがにぎわせています。意味に反して10年後にはなくなっていそうなキーワードですが、佐伯にはさして関係なさそうです。 SDGsについてはこちらを。

■ 佐伯でんでん

 人口の少なさでは佐伯市は負けていません。佐伯市も過疎市町村でありますが、佐伯市のある大分県は全市町村19のうち12市町村が過疎市町村ですので、とくべつ異常なことではありません。佐伯市の2045年の人口は41,738人とされています(*)。

 30年後はいまより人口が4割減るようです。人口は減っても面積は縮むことはないので、さらにスキスキなマチとなるでしょう。 人口総数では県内4番目であっても、人口密度は1キロ平米あたり80人となり、かなりスキスキな状態となると考えられます(*2)。

 ちなみに東京都の人口密度は1キロ平米あたり6,168人です。こちらはかなりギュウギュウな状態と思われます。

*1 国立社会保障・人口問題研究所 日本地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)
*2 人口密度(佐伯市/東京都)総務省国勢調査 20151001

■ 佐伯でんでん

 佐伯は面積が広いからといって、人は多いわけでもなく経済資源がたくさんあるわけではありません。とはいっても佐伯は江戸時代にはお城が置かれ、城下町でありました。いまも市役所の近くは城下町風情が残っています。

 江戸時代に

さいきの殿さま浦でもつ 海の恵みは里でもつ  

 といわれるほど、同地は漁業と林業でさかえたマチでした。当時はにぎわっていたようで人口は増えていました(*)。

1711年 3万4,868人

1810年 5万2,480人

 人口は約100年間で2万人弱増えました。マチがリッチだから人口増となるのか、それとも人口増となるからマチがリッチになるのかわかりませんがとにかく人口は増えていました。

* ウイキペディア#佐伯藩

【 佐伯の一コマ 】

■ 佐伯でんでん

 その後も佐伯市の人口は増え1955年に118,236人となりました(*1)。約140年で6.5万人ほど増え、佐伯市人口のピークとなりました。

2065年の人口推計(*)

パターン1     2万6,535人

シミュレーション1 2万9,503人

シミュレーション2 4万6,807人  

 その110年後、幅はありますがもっとも多い人口で4.6万人になります。140年で6.5万人ほど増え、今後110年で7.1万人ほど減らします。2065年の佐伯市は250年前の佐伯市より人口の少ないマチとなります。  

 江戸時代と令和時代では佐伯の行政区は同一とではないと思われるので、少々強引ですが、佐伯市のこれからの40年後は最悪で江戸時代以下、よくて江戸時代の多い時の2割減というところです。  

 殿さまと市長では、発揮する行政手腕は異なりますが、人口が減る時代の経済政策に期待したいところです。

*1 総務省統計局#国勢調査
*2 RESAS 人口マップ#将来人口推計

【 城下町らしき跡 】

■ 佐伯でんでん

 佐伯のリアルを知るには人口の変遷で、なんとなくわかります。佐伯のいまの空気を知るにはやはり「モノ」でしょう。

 佐伯市役所の立派な返礼品カタログをみるかぎりでは、市の認定ブランド:さいき殿伝と連動しているわけではなさそうです。売れるものと評価されるものは一致しないということでしょうか。役所主導の取組みらしく連動しないようです。

■ 佐伯でんでん

 ふるさと納税の返礼品もきびしくなりました。とくに地元の関連度が求められるようになりました。これを機会にいままで商品化できなかったもの、できにくいものを返礼品に加工してはどうでしょうか。となると地元資源のマーチャンダイジングが求められます。

商品化

 例えば地元の祭りの参加権などはどうでしょうか。祭りへの参加となると、どうしてもそのマチを訪れなければならず、遠方であれば宿泊も必要になり、その分のケーザイ効果も見込めます。

■ 佐伯でんでん

 市は税収確保のため、よりふるさと納税に力を入れていくとしています。行政的な言い回しでは

ふるさと納税の推進等にとりくむこととしています。  

 です(*)。一方、制度改正もあって寄附金集めも非常に難しいと吐露しており、がんばるものの見通しは暗いですよと、トータルするとふるさと納税には期待はもてないようです。  

 なお、地元佐伯市の議員センセイ方は佐伯殿伝にさっぱり興味ないのか2019年(H31/R1)の一年間に定例会では、佐伯殿伝についての発言は1回もありませんでした。

* 佐伯市議会定例会会議録 令和元年第4回

■ 佐伯でんでん

 佐伯市にはさえき殿伝という官製ブランド認証制度があるのですから、認証制度とふるさと納税制度を連動させてはどうでしょうか。

ふるさと納税

さいき殿伝

 ただ、現実的にはムリだと思います。なぜならお役所はタテ割り組織ですから。  

 市が認証した産品だからといって、人気の品となるわけではありません。認証した側の目利きも問われますが、認証した側も販売目線ではないと言い訳が先に立ちそうです。となるとなんのための認証制度かイマイチわかりません。

高品質≠売れる  

 なお、「認証には流通販売実績は良好である」商品が認証されるとのことです。(*)  

* さいき殿伝金賞認証品カタログ4P

■ 佐伯でんでん

 面積が九州一の佐伯市です。そうなると土地もたくさん余っていると思われるので、いっそのこと土地を返礼品にしてはどうでしょうか。  

 佐伯市の地価は平均すると42,114円/㎡です(*1:2020年(R2))。東京にくらべれば、だんぜん安いのでしょうが、東京とでは比較の対象にはならない気がします。

 同時期の公示価格では佐伯市内には9円/㎡という土地もあって、土地の安さに驚きます。地方のロードサイド店には酒の安売り店はわりとみかけますが、地価は安く評価されていても土地の安売り店はみられません。ちなみに佐伯市には30年の長期間にわたる耕作放棄地もあります(*2)。

*1国土交通省:公示地価 2020年1月時点
*2佐伯市平成29年第10回佐伯市農業委員会議事録

【 佐伯の一コマ 】

■ 佐伯でんでん

 結論からいうと、佐伯は面積の広いマチというだけのことではないでしょうか。面積が広いだけにお宝がたくさん眠っているのではないかと思えましたが、そうではなかったようです。機会は多いようですが、それをいかすかどうかは別の話のようでした。  

 以前、市役所の職員さんにチラッと「佐伯の強みってなんですか?」とおたずねしたところ、

「広いこと」  

 というお答えでした。面積の広さは地元にとっては強みのようです。その強みである面積の広さをいかして、佐伯市のケーザイを発展させてほしいものです。広いだけになにかあるはずです。というわけで大分県佐伯市に行ってみましょう。返礼品を手にしただけでは地元のリアルな空気は味わえません。

 

本編はここまで。

罠#5 佐伯 

リサーチに協力していただい方々に感謝いたします。
一方、リサーチに協力していただけなかった方、次回ご協力にお願いいたします。

なお、当地の良し悪しは個人の判断にお任せします。ただ、人は似たような観光地には行きません。決して当地を真似ようとは思わないでください。日本じゅうの観光地が同質化してしまい、「どこも似たようなもんだろ」と先入観をもたれて、しまいにだれも観光をしなくなります。

 

 

訂正の連絡はこちら

 

【注意】
地図はグーグルより加工
価格・数量などは初回公開当時のもの
画像は下手上手関係なくローカライズド(LCD)
なお、取材日当日でないものもアリ
現地に赴く場合は、公式情報を確認されてから行くように

初回リリース:20200509

ここで紹介したことはすでに過去の情報となっていることを申し伝えておきます。

 

マチとの遭遇 九州編

 製作:ローカライズド(LCD)

■ メンバー
#1 風戸ケイキ(リサーチ)
#2 ワリアイト・リョウ(リサーチ)
#3 タシロ(プレス)

 旅とカットソーシリーズ 2020

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