マチとの遭遇 九州編

スロウな旅:タイクツーリズム

【報告】長崎市をウロウロする ④/4

2020年03月21日 09:50 by keiki-kazeto
2020年03月21日 09:50 by keiki-kazeto

【報告】長崎市をウロウロする ③/4の続きです。

長崎市。その市内を坂を中心にウロウロしただけの記録です。路面電車に乗ったり、途中歩いたり、長崎駅の待合室にいたりと、本当にウロウロしています。目線はあくまでも地域活性化目線ですので、旅の記録といえばたしかに旅の記録ですが、それだけではない楽しさをお伝えしています。

製作:ローカライズド(LCD) 

誤字脱字、日本語の少々おかしな言い回しなどについてはご容赦+ご理解ください(お許し願う)。多少下手なほうが人間味もあって、ダイレクトに伝わらんですかね?(ローカライズド(LCD)より)。

 

【 ♪ 長崎は今日も~ 】 

旅こそ一人旅。
こっそり一人旅。

長崎市の坂は2つ。
のぼり坂とくだり坂、まさかはナシ。

長崎市の坂

移動した人:風戸ケイキ

目的:当地の予備リサーチ

〓 例によってワリアイトはワリアイトで別に動いている模様。今回のリサーチは長崎市の観光コンテンツにはなにがあるんだろうというごくありきたりの動機からだった。いまさら長崎市で観光コンテンツのリサーチはないだろうが、そのうちリサーチ依頼があるだろうから長崎市内をウロウロしてみた。

― 長崎市の場所 ―

 

 

■ 長崎は本日も坂ナリ

 物販店からBGMが流れる。その音はムダに大きい。にぎわいを演出したいのだろうが、かえって逆効果に思えた。 こういった海に面した高台のロケーションからは、土地からきこえる微妙な自然な音を耳に入れたい。ムダなBGMでそれが入らず。 長崎市の海の見えるはずれに来て、

マイケル・フォーチュナティ
「ギヴ・ミー・アップ」

 を耳にすると思わなかった。音があればいいと思っているのであろう。地域活性化は難しい。それでもこの高台からながめる夕日はさぞきれいと思える。ワリアイトが行けといった理由もわかる。 日の沈む時間前に来たのは少々勇み足だった。運のわるいことに少々曇り空。

【 道の駅のお店 】

■ 長崎は本日も坂ナリ

 こういったところをスマートフォンなしで時間をつぶせる男になりたいものだと思った。このあたり一帯は観光エリアにもなっていて、

外海地区(そとめちく)

 と、いうらしい。地元長崎市も外海地区についてのwebサイトを開設しており、このあたりのプロモーションをしている。webサイトをチラッとみるかぎりでは、外海地区は訪れる価値はありそうだ。

■ 長崎は本日も坂ナリ

 このあたりは世界遺産の構成資産の一つらしい。構成資産は、世界遺産のAKB48みたいなものでピンではなく集団で一つのコンテンツとする文化財の仕組みだ。 主役を一人で独占してはいけない今の時代に世界遺産も同調しているようだ。  

長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産  

 長崎県と熊本県の天草地方と、行政区はまたがる。構成資産だからピンのコンテンツではなく、その場所が広がるととそうなるのであろう。

外海地区を中心としただいたい半径100キロ圏内の~  

 としてはどうだろうか。「だいたい」というところが肩の力が抜けているようで、訪れやすくないか? ヨソ者だけに好きなことはいえるが、地元感情を逆なでするのはいけない。ここは大人しくしておこう。一人旅だけにキケンな目にあうかもしれない。ワールドクラスのお墨付きなので、シェアするのは賢明かもしれない。

【 道の駅からのながめ 】

■ 長崎は本日も坂ナリ

 海風と大海原のおかげで、市内の坂を上ったり下ったりした疲れを忘れた。道の駅の一段下に施設がある。 そこがワリアイトおすすめの遠藤周作文学館らしい。遠藤周作氏は作家というていどの情報で、著作を読んだことはない。竹中直人氏が同氏のモノマネをしていたのは覚えている。

【 遠藤周作文学館 】

■ 長崎は本日も坂ナリ

 たいてい他人にすすめられた目的地に達すると、到達感とガッカリ感でその場で帰るのだが、この施設には入ってみた。長崎市の教育委員会が管理している施設らしく、少々お勉強くさい。

 文学館ということもあってそうなのであろう。 氏はこのあたりの生まれではないが、この地となにかと縁があるらしい。市の運営するwebサイトにそう解説されている。 ついでにウイキペディアで遠藤周作氏についての解説もみてみる。こちらのほうがだんぜん面白い。

【 遠藤周作文学館 】

■ 長崎は本日も坂ナリ

 高台にある施設のテラスから五島灘が一望できる。グーグルの地図では高さ低さはわからないが、ここが海一望の場所にあることは確認できる。床のタイルもそれっぽい。グーグルの地図をリアルで確認した気分だ。 市のwebサイトでは五島灘ではなく角力灘(すもうなだ)の表記になっている。

 地元には地元なりのこだわりがあるのだろう。 氏の遺品などの展示しているスペースは有料(大人360円)だが、休憩所は無料スペースだ。こういったところには遠藤周作好きしか訪れないと思えるが、文化施設ととらえると、当然の行動であろう。

■ 長崎は本日も坂ナリ

 この場所に1時間はいたが、ついぞだれ一人と会わなかった。ただし有料スペースには入らなかったので、本当はじゃかじゃか人はやってきていたのを見逃していたのかもしれない。

【 遠藤周作文学館 】

■ 長崎は本日も坂ナリ  

 休憩所の窓べりのカウンターに座る。海に対面したガラス窓から角力灘をみる。ここだと暑さ寒さ、その他の気象状況に関係なく、安心して海をながめられる。 この無料スペースに1時間貸し切り状態で滞在できるのは実に“リーズナブル”だ。近いうちにでも氏の著作を読んでみようという気になった。

■ 長崎は本日も坂ナリ  

 ここは元は喫茶店として運営されていたが、営業は1年以上前にやめたようだ。これだけ人が来なければ、営業も成り立たないのであろう。喫茶店は終わったが、コーヒーの自動販売機は置いてあった。缶ではなく紙カップのヤツである。

【 アンシャンテ(遠藤周作文学館内) 】

■ 長崎は本日も坂ナリ  

 その自動販売機は残念ながらドトールであった。「違いがわかる男」である遠藤周作氏の記念施設であるなら、ネスカフェであってほしい。ここにあった伝言ノートにも、自分とおなじくそういった感想を漏らしている人もいた。ネスレも社会貢献の一つとしてここに1台置いたらどうだろうか。

# 同文学館の喫茶店では、軽食をだしていましたが市の指導でやめているようです。長崎市議会の平成30年総務委員会で地元市議会議員がそのように発言されています。

■ 長崎は本日も坂ナリ

 夕日がはじる時間が近づいてきた。海をぼんやりとながめるのに座りのいいイスに座って夕日と対面する。少々曇りなのは残念だ。世界遺産の登録遺産から1年弱たつだが、人はもうやって来ないものかと思うとあんがい世界遺産の賞味期限も短いようだ。ここには誰も来ない。場所によっては登録2か月後で来場者が5割増えたところもあるらしい(*)。

*1 日本経済新聞20180908

【 道の駅からのながめ(*別の日) 】

■ 長崎は本日も坂ナリ

 世界遺産の登録名に潜伏キリシタンとある。隠れキリシタンは教科書で習ったが、潜伏のほうはこの登録で知った。「隠れ」と「潜伏」では意味あいが違うらしい。表に出ないというところは一緒だが、「潜伏」だとなにやらタブー感が増す。そういったことを考えながら夕日を見ていたら、文学館のスタッフが見回りに来る。文学館の開館時間は17時。なんとなく帰れメッセージを発せられているようでもあったので休憩所を出る。

■ 長崎は本日も坂ナリ

 文学館を後にする。海を背にして階段をのぼる。道の駅はさみしく営業中、夏シーズンは19時までの営業となっている。こういった辺境の地でも19時まで営業とは、売上をのばしたいのだろうか。働き方改革は日本の西の端までには届いていないようだ。とはいっても夕日を見ながら働けるとは、街中のビルの谷間で働く自分からすると、うらやましい。

■ 長崎は本日も坂ナリ  

 バスは16:52にやってくる。追い出された時間もちょうどいい。下車したバス停まで歩く。道路を車が通りすぎていく。バス停の案内板はさいかい交通とある。夕日に照らされてかバス停の上部丸板部分は色落ちしている。それとも元からこの色なおだろうか。バスが到着したので乗る。適度に乗客がいる。一番前が空いていたのでそこに座る。

【 バス停:道の駅 】

■ 長崎は本日も坂ナリ

 来た道を戻るためか、往路よりは感動と緊張は薄れ、疲労感もありウツラウツラした。バスの揺れが眠気を誘う。ここには早い時間から行っておけばよかった。 この便は往路とちがって桜の里バスターミナルで乗り換えることなく、長崎駅までいく。街中に近づくと、市内の通勤客が乗ってきて混雑するようになった。

 路面電車の24時間乗車券を持っていることを思い出したので、バスを降りて路面電車に乗りかえた。電車は電車で満員だ。この車両内では人口流出市町村ナンバー1を感じさせない。

■ 長崎は本日も坂ナリ  

 電停:長崎駅前で下車。カーキのシャツジャケットは温度調節に実に役立った。夕方の肌寒い時間にありがたさが身にしみた。足元も長く歩いたわりには、足も痛むことなく、こちらもありがたく感じた。

 靴:natalie

 長崎滞在は明日までだから駅に用はないが、お土産を入手しておかないといけない。明日のスケジュールからするとその余裕はなさそう。ターミナル駅のそれらしい売場に向かい、物色する。  

■ 長崎は本日も坂ナリ

 長崎のお土産売場だけあってちゃんぽんは目立つ。長崎の土産にちゃんぽんはベタすぎるので選択肢から外した。カステラは高いので、おなじく外した。同様の理由でからすみも外した。 あれこれ迷って売り場を二巡したところで、餃子ぬれせんべいを発見した。これが長崎の名物かどうかはわからないがパッケージには長崎とある。

餃子ぬれせんべい?  

 餃子は餃子、ぬれせんべいはぬれせんべいで食べたいと思ったが、食べるのはワイフだ。400円もしないので買うことにしたが、パッケージの裏の表示をみると製造者は茨城県のメーカーであったので、買わずに再度仕切りなおしでウロウロした。

■ 長崎は本日も坂ナリ

 地元の土産は地元企業のものをと、モットーにしているローカライズド(LCD)としては、土産物購入には人一倍神経を使う。角煮まんじゅうも捨てがたいが、地元名物というよりメーカーオリジナルローカル商品のようでもあるので、気に入っているのだがやめた。角煮まんじゅうはメーカーによっては通販でも買えるようだ。

■ 長崎は本日も坂ナリ  

 迷ったあげく練り物にした。練り物こそ全国各地で買える食べ物だが、地元ネイティブにとってみればソウルフードらしい。数字的情報として、長崎市は国内ナンバー1の世帯消費量をほこるようだ。そういったことを売場の人はなに一つ言わない。土産物売り場で土産物情報をネットで収集するのは、自分だけではないはず。

 地場産品の販売不振は、店頭でのセールスに問題があるようだ。日持ちのする真空パックの練り物を買った。自宅近くのスーパーにあるそれとはちがう。少々ズシリ感がある。本場はなにかと重みがある。

■ 長崎は本日も坂ナリ

 お土産も調達したので一旦宿に戻ることにした。といっても宿に戻ってもすることはなく24時間乗車券もあるので、またしても路面電車に乗り適当なところで下車する。夜だけに暗く、アウエーの地では地理がわからない。少々迷ったが、それはそれで楽しい。

 トボトボ歩くとマチの中華料理屋風の飲食店に遭遇した。赤い電照カンバンには長崎名物とある。ちゃんぽんのマチだけにそれらしい。迷わず店に入りすぐに焼酎をオーダーする。地元の焼酎ということで、長崎の五島列島の五島灘酒造の五島灘をいただく。

■ 長崎は本日も坂ナリ  

 自分の焼酎価格の標準としている黒キリより少々高い。焼酎を頼むとおまけにツマミがついてくるらしいが、残念ながら自分には来なかった。オマケだけに催促するわけにいかずガマンする。となり席のオヤジにはなにやかにやと、おいしそうなものが小皿に運ばれてくる。常連のようだ。頼み方を知っている。

 ここでも皿うどんをいただく。焼酎に皿うどんは少々ミスマッチな気がした。ネットの飲食サイトの口コミではいい評価もあればそうでない評価もアリ。オマケのつまみが来ないのは日頃の行いの悪さと思いながら店を後にする。すごく残念。

■ 長崎は本日も坂ナリ

 昼間の経験から夜の長崎の坂はキケンと思われた。疲れもするのでもう坂はやめておこうと思ったが、歩いているところが坂だった。本日の仕事のつかれを癒そうと市内のジャズ喫茶に寄った。ここへの訪問は予定していた。バーや喫茶店とあると、それなりのお客がいるのだがジャズ喫茶となると、とたんにお客が少なくなる。

【 ジャズ喫茶:マイルストーン 】

■ 長崎は本日も坂ナリ

 自分が行くところだけがそうかもしれないが、九州のジャズ喫茶にはこの傾向が強い。スターバックスでもジャズが流れているのだが、ジャズ喫茶とはみなされていない。足を運んだジャズ喫茶:マイルストーンは道路に面したテナントビルの3階にある。階段はせまく暗い。こういったところがお客に愛されない理由かもしれない。階段をのぼり店に入る。先客が一人いた。

■ 長崎は本日も坂ナリ

 道路側の一面の窓ガラスからは、煌々とした電気のついた路面電車の行き交う姿をみることができる。店内は暗く、ジャズ喫茶だけにジャズが流れている。スピーカーからピアノの低音が心地好く響く。ヘッドフォンでは聞こえない音。 読んだことはないが外国の探偵小説のようなシーンである。

 先客が帰ったところでオーダーした。キューバ・リブレとフライド・ポテト。

■ 長崎は本日も坂ナリ

 キューバ・リブレはさっときた。店内の隅の窓際のテーブル席のイスに浅く座った。顔を45度に傾けさえすれば電車の行き来がみえる。それを何度も見る。顔がゆるむ。この気分はいい。フライド・ポテトが運ばれてきたときにマスターから「どちらからお越しですか?」とたずねられ、しばし会話をした。 同店のお客はたいてい一人客で、ポツリポツリとやってくるとのこと。自分だけの隠れ家としたい人が多いためにか紹介されないので、満足度は高いが新規来店が増えないというビジネス上残念なお店となっている。当たり前だが、隠れ家はむやみに紹介されてはならない。 

【 マイルストーンのブックマッチ 】

■ 長崎は本日も坂ナリ

 とはいっても、マスター自身はそれを誇りにもしているようだった。たしかに隠れ家は人に紹介しないものだ。営業的な話はしたが、ジャズについての話はしなかった。

ジャズ喫茶で景気の話

 マスターとの会話が終わったあとも小一時間はいた。そろそろ宿に戻らないと、明日に支障をきたす時間になる。明日は朝から人に会う。支払いをすませて帰ろうと扉を開けたら、そこはトイレだった。マスターに「お帰りはこちらです」と注意される。

■ 長崎は本日も坂ナリ

 またしても電車に乗る。24時間乗り倒したことになる。十分元はとった。少ないながらも地元長崎にカネは落とした。サプライズな遭遇はなかったが、一人旅は楽しめる一日であった。 単にウロウロしただけだが。明日もひきつづき長崎であるが、別件の仕事。坂を上ったり下ったり、電車に乗車したり下車したりの一日であった。「まさか」なはく、良い一日であった。

 

以下 長崎の坂以外の報告

  

■ 坂以外

 もちろん長崎市内に坂以外の楽しみは多い。この際、お楽しみから食べ物も外すとする。長崎市は世界遺産が2つもかぶる。少々欲張りでは。それとも遺産が多いマチなのか?

明治日本の産業革命遺産
長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産  

 世界遺産もこの際、外そう。それにしても小菅修船場跡はちっぽけで拍子抜けした。一方、長崎造船所史料館は専用シャトルバスも出ていてウエルカム体制ができていた。 ともに世界遺産であり三菱である。  

【 小菅修船場跡 】

■ 坂以外

 長崎は健全なマチであるためにフーゾクがないことになっているが、ないわけではない。ソープランドがないだけで、それ以下の業態はあるらしい。長崎でソープに行きたければ他県まで足を伸ばさなければならず、長崎市は男性ビジネスパースンには、出張先としては不人気のマチでもある。おのずとビジネスマンの足が縁遠くなるため長崎の経済もなえてしまうようだ。

■ 坂以外  

 三菱重工業の造船業はマチの景気を左右しているところがあり、同社が客船業から撤退したことから下請け、孫請けが県外に逃げたため人口減少率ワースト1位となった原因ともいう声もきいた。長崎市の風俗街は銅座地区、このあたりを夜にウロウロしているとお楽しみとの遭遇があるかもしれない。なお、三菱の造船所は長崎湾にある。

■ 坂以外

 県庁舎が新庁舎になった。旧庁舎は古めかしい建物で迷路のようなつくりになっていて、それはそれで楽しかったが建てかえられた。新庁舎は各階ワンルームのようになっていたのは、迷路のような旧庁舎のつくりの反省か?

■ 坂以外  

 新庁舎はちょっとした観光スポットになっており、屋上から長崎の100万ドルの夜景をながめられる。地元の海べりで開催される花火大会では特等席になるとのことだが、まだ新しいこともあってここは知られておらず人はそれほど来ないとガードマン氏が教えてくれた。ガードマン氏、ガードよりもガイドに忙しい。 専門のガイドよりフレンドリーで、いっそこういう人をガイドに採用したらどうか。

【 県庁最上階より 】

■ 坂以外

 商店街がにぎわっていた。自分が訪れたときだけにぎわっていただけのことかもしれないが、買い物客は多くいた。自分がみたところその買い物客の多くは日本人だった。地元には地元資本の浜屋百貨店があり、撤退した大丸のお客を取り込んで、調子がいいらしい。

 地元にはもうひとつ玉屋百貨店という百貨店もある。自分がみたところ廃業した百貨店のようにみえたが、再開発で復活するらしい。 このあたりの商店街を歩いているおばさんがそう言っていた。

【 復活する百貨店の復活前 】

■ 坂以外

 その再開発するマチは大工町。マチが昭和のコスプレをしているようなマチだった。自分のようなO-50にもリアルでの体験はそれほど多くないが、それと感じられた。 入浴料:忘れた。 ウロウロしていると銭湯と遭遇した。入ってみることにした。番台におばあちゃん。ウツラウツラしている。起こすのも気の毒だが無銭入浴するわけにもいかないので番台に入浴料を置いた。

■ 坂以外

 夕方前の4時。お客はいる。おじいさんばかり。となりの女湯からおばあちゃん客の声がする。男湯客はだれとも話さず、黙々と洗う+つかる。地元住民とふれあうことなく、銭湯を出る。ネットでは地元住民とふれあいたければ、銭湯へとあるが、地元の人もそうそうヨソ者とふれあいたくあるまい。

 下町に美談ばかりがあるわけではない。高齢者はみなフレンドリーとは限らない。

【 銭湯 】

■ 坂以外  

 長崎の経済はイマイチさえない。経済がさえないから人口が流出するのか、人口が流出するから経済がさえないのかはわからないが、とにかく長崎の経済はさえない。 長崎といえばカステラ。 一世帯あたりのカステラの消費量は日本一、しかも全国平均の7倍の消費量だが、地元民が地元名物を買っていては地元経済はうるおわない。ヨソ者が買うから土産もの。

一世帯あたりカステラ消費量

  • 全国平均     889円
  • 2番手:石川県 1,478円
  • トップ:長崎県 6,268円

 カステラはお土産。そのお土産を地元民が消費しているようでは、地産地消という考え方もあるだろうが、地域経済はうるおわないと思える。地域経済活性化のためにはヨソ者である観光客に買ってもらわねば。

* カステラ:総務省:家計調査(2012年度)

■ 坂以外

 カステラは少々値が張る。年収400万円以下の自分には、お土産として買うには勇気がいる。 であると、そういったカステラを常日ごろ食べている地元民はリッチなのかという疑問がわく。  

長崎県の一人当たり県民所得
251.9万円  

 平成28年度の長崎県は前年より県民所得では3.0%、一人当たり県民所得では3.8% 増えている。全体の伸びよりも県民一人あたりの伸びが大きい。やはりカステラを日々口にできるようだ。

参考:長崎県HP:県民経済計算

【 おやつカステラ 】

■ 坂以外

 ちなみに平成28年度の国民一人あたり所得は308.7万。長崎県民の一人あたりのそれは日本の平均とくらべて約50万円ダウンする。ランキングでは47都道府県のなかで45位。 物価が安いではないかという声もあるが、自販機で販売されるコカコーラは全国一律の値段だ。長崎だけ消費税の税率がちがうということもない。

■ 坂以外

 日本の西の端っこに位置するのがその理由ではないだろうが、地元経済はきびしい。ちなみに下位41位から47位の間に鹿児島県、熊本県、宮崎県、長崎県と九州7県のうち4県入り、九州は経済的に弱い立場にある(ただし不幸ではない)。 とはいっても前年にくらべての伸びとなると長崎県は健闘している。

人口一人当たりの伸び  

国民所得 0.5%  

県民所得 3.8%  

 国平均よりも長崎県の伸びは大きく、きっと前年度より多くカステラも消費されたと思われる。

■ 坂以外

 しかしカステラ、お土産だけに自県民よりヨソ者に買ってもらいたい。地元長崎のカステラの老舗:福砂屋では小切れ0.6号サイズの1本の価格は1,188円で販売されている(*)。この価格は東京でも長崎でも同じと思われる。ちなみに同社は東京都内にも出店されており、北海道にも出店されている。 東京人は長崎出張の際、同社のカステラをお土産として買い忘れても都内の百貨店でお買い求めできる。

*福砂屋HP#商品のご案内 2019年10月

■ 坂以外

 長崎よりもはるかに所得の高い東京とそうでない地元長崎では、所得に占めるカステラの比率は異なると思われるが、カステラの値段は東京だろうが北海道だろうか地元長崎だろうが一定である。こういった値段は地元長崎にどう作用するのか、地域経済をおもしろくするローカライズド(LCD)のメンバーとして気になる。

■ 坂以外

 それにしても長崎は不景気。カステラだけでは地元の経済を押し上げる効果は薄い。「豪華客船を販売してなんぼ」の経済と思われる。 地元経済を引っ張る三菱重工も、船をどこで作るかは経営課題のようでもあり、必ずしも「長崎で」とはならない。長崎から約160キロ、クルマで3時間弱離れた下関でも、地元で建造できるよう造船業をてぐすね引いて待っている。

【 長崎市内の造船工場 】

■ 坂以外

 日韓中でせめぎう造船業は、地元経済の足を引っ張るビジネスにもなりかねず、世界景気に大きく左右される。その左右ぶりが地元経済にも影響する。このところ人手不足もあって、船をつくる会社と船をつくる場所は日本であっても、船を造る人の国籍はグローバルとなっているのは見逃せない。

■ 坂以外

 坂ばかりの長崎には上場企業がない。過去にはあったが2019年4月以降、十八銀行が上場廃止になり、国内唯一の上場企業のない都道府県となった。企業の上場は難しいとして、商品の上場としてカステラはどうだろうか。  県民所得は全体でも一人当たりでも伸びているが、個人と企業ではその伸びがちがう。  

対前年度比  

県民雇用者報酬  1.9%  

財産所得    -2.4%  

企業所得     7.2%

 企業の所得以上に働く人の給料は伸びていない。長崎県の社長さんはシブチンのようだ。あわせて不労所得を好まない県民なのか、財産所得は減らしている。上場企業がなくなる事態もあり、資産運用などは不毛の地なのか。 カステラの上場なんて話にならないだろう。 

【 長崎県庁 】

■ まとめ

 地元シンクタンク理事長:菊森淳文氏の著作「こうすれば地域再生できる」より 長崎県経済も造船・半導体など大企業を中心にやや景気が回復し、雇用情勢も改善してきているが、公共事業の削減、消費の低迷などを主因として依然、厳しい状況にある。 ここ最近の話ではなく、2007年の10月に出版された本に書かれたものです。2020年のいまもそうたいして変わらないのではないでしょうか。2040年の将来を考えると「そうたいして変わらない」とあってほしく思える。

長崎市の人口(*)

1985年 44万9,382人

2018年 41万6,419人

2040年 31万9,106人

* 1985年 2018年 長崎市HP#長崎市の人口 2040年 増田寛也著 地方消滅

■ まとめ

 長崎市は坂および坂以外にも見どころが多い。しかし、1度訪れたら次訪れるかというのは長崎だけの問題でなく、やはり観光地のマチの経済的にぎわいは難しい。

 

 

 

本シリーズはここにて終了。

【 報告 】長崎市をウロウロする  ④/4

リサーチに協力していただい方々に感謝いたします。
一方、リサーチに協力していただけなかった方、次回ご協力にお願いいたします。

なお、当地の良し悪しは個人の判断にお任せします。ただ、人は似たような観光地には行きません。決して当地を真似ようとは思わないでください。日本じゅうの観光地が同質化してしまい、「どこも似たようなもんだろ」と先入観をもたれて、しまいにだれも観光をしなくなります。

 

 

訂正の連絡はこちら

 

【注意】
地図はグーグルより加工
価格・数量などは初回公開当時のもの
画像は下手上手関係なくローカライズド(LCD)
なお、取材日当日でないものもアリ
現地に赴く場合は、公式情報を確認されてから行くように

初回リリース:20191214

ここで紹介したことはすでに過去の情報となっていることを申し伝えておきます。

 

マチとの遭遇 九州編

 製作:ローカライズド(LCD)

■ メンバー
#1 風戸ケイキ(リサーチ)
#2 ワリアイト・リョウ(リサーチ)
#3 タシロ(プレス)

 旅とカットソーシリーズ 2019

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