地域ブランドの罠#2ふるさと納税①/2からの続きです。
ふるさとも考えようではモノ次第
ふるさと納税
〓 そのむかし、「金持ち父さん貧乏父さん」という本がありました。お父さんだけが金持ちにも貧乏にもなるのではありません。市町村もお父さんとおなじく金持ちにも貧乏にもなります。
ファーストリリース20190914
【 ふるさと納税の勝手なイメージ 】
【注意】本テキストのなかでは、ふるさと納税額あるいは寄附金と表現が異なりますが、だいたい一緒です。当方はお役所ではないので、そのへんのアバウトさはご理解ください。
【お願い】 誤字脱字、日本語の少々おかしな言い回しなどについてはご容赦+ご理解ください(お許し願う)。とはいっても、多少下手なほうが人間味もあって、ダイレクトに伝わらんですかね?(ローカライズド(LCD))。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
マスコミなどの報道によると、静岡県小山町はごめんなさいとあやまった模様ですが、大阪府泉佐野市は強気に対決姿勢をみせています。
なお、この件では泉佐野市の市長の画像はなにかと悪人ヅラで散見されます。
他の2町は注目されていないのか、情報はさほどありません。ローカライズド(LCD)が見つけきれないだけのことかもしれません。
総務省はお上であっても権利意識の高い昨今ではいきなり切り捨てることはせず、まずは自治体に「これってどういうこと?」と自治体の気持ちをうかがっています。それは2018年6月のことでした。
総務省は自治体に
- 返礼品の割合の徹底
- 地場産品以外の送付について良識のある対応
を要請しています。
わかりやすくいうと、ちょっとやりすぎを考えてくれんね。それとふるさと納税の趣旨にそった行動をしてくれんね。という内容でしょうか。
国内すべての自治体はやりすぎたり、カネ集めにはしったりしているわけではありませんが、そうでない自治体もないわけではなさそうなことからこういったおたずねがされたと思われます。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
総務省のおたずねによって、返礼品の品ぞろえを見直す自治体がある一方、見直さない、つまりお上に対して強気なマチもありました。
総務省は怒りの鉄拳を食らわしたいところですがそうはせず、見直さない自治体の公表に踏み切りました。
公表の対象は、返礼割合3割超の返礼品および地場産品以外の返礼品をいずれも送付している市区町村で、
- 2018年8月までに見直す意向がなく
- 2017年度受入額が10億円以上の市区町村
です。公表の対象は、とどのつまり見直すつもりはないマチです。 そういったマチは12市町ありました。
ちなみに2017年度に10億円超集めた自治体は79市町村あり全体の4.4%になります。なお、全体とは東京都を含めて各県の都道府県も合算しての自治体数です。
寄附金と企業の売上を同じ目線でみることはできませんが、ふるさと納税制度によって国内79の市町村にそれぞれ10億円の売上をマチにもたらしました。
そのむかし日本の市町村に1億円ばらまいた補助金めいたものがありましたが、それとはちがってふるさと納税制度は多少なりとも汗をかいています。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
ふるさと納税の趣旨にそっているかどうかは別にして、10億円超集めた自治体は79市町村あり、そのうち67市町村は 見直す意向がアリ の自治体です。
まあお上にはさからえないというところでしょう。
一方、泉佐野市を筆頭に12市町は
見直す意向ナシ
としています。逆らったため公表されてしまう始末となり、さらにはこの12市町のうち先の3市町にはふるさと納税制度は使わせない(適用外)となってしまいました。総務省おそるべしです。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
気になるのは見直す意向ナシでも制度の利用はOKの団体です。そういった自治体は九州に多く6市町あります。
そのマチは以下のとおりです。
- 福岡県宗像市(15.6億円)
- 福岡県上毛町(12.1億円)
- 佐賀県唐津市(43.9億円)
- 佐賀県嬉野市(26.7億円)
- 佐賀県基山町(10.9億円)
- 大分県佐伯市(13.5億円)
【注意】( )内の金額は2017年度のふるさと納税の受入額です。
佐賀県のみやき町は通知のあった団体で寄附金は10億円超あるうえに見直す意向はないため総務省からふるさと納税適用外自治体となっています。
一方、基山町には総務省から通知があり、見直す意向はないものの対象外となる措置は免れています。
このちがいは、基山町は10.9億円、みやき町は72.2億円と集めた寄附金の大きさでしょうか。ちなみに基山町とみやき町は行政区はちがいますが同じ三養基郡です。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
通知はあったものの見直さないとした自治体が、ふるさと納税適用外を免れた理由やいきさつはわかりません。
ただ、そういった自治体が九州には多く存在するのは事実です。
なかでも佐賀県は4市町そのうち1町は適用外とされてしまいましたが、他のマチは適用外をまぬがれ、したたかに対応されています。
賢いのかあくどいのかは人の判断によりますが、NHKの連ドラ:おしんでの佐賀県人の悪人イメージも多少かぶるようでもあります。 ローカライズド(LCD)のメンバーも佐賀の人と接触する予定があると、その日はちょっとネガティブモードになります。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
おとがめを食ったマチの一つ福岡県築上郡上毛町があります。同町にこれといった名産はなさそうです。それでも総務省から目をつけられるほどに寄附金を集めました。
地元の公立高校は10年以上前に廃校になっており、マチの衰退ぶりが伝わります。 上毛町はウィキペディアの産業欄に
主に農業が盛んである。
とあります。「農業が盛ん」の記述があると、ITやクリエイティブなビジネス不毛の地と、ローカライズド(LCD)は聞かされています。
ちなみに上毛と表記して「こうげ」と読みます。群馬県にあるマチではありません。あちらは「じょうもう」です。
【 上毛町役場 】
■ 金銭/琴線 → ふるさと
上毛町になんかあったかな?と思えるほどのマチだからか、となり町の名産に便乗します。
上毛町のとなり町の中津市は、トリのカラアゲで知られたマチです。 上毛町の名産がカラアゲかどうかはなんとも判断つきませんが、中津市のカラアゲに便乗してか、カラアゲを多く返礼品にしています。
上毛町の返礼品は全部で47品目、うちカラアゲは21品目と半数近くを占めています(*1)。
47品目、しかも単価の低そうなカラアゲでは寄附金をそれほど多く集めきれない気もして、なにか不都合な理由がありそうです。
ちなみに、カラアゲで鳴らす中津市は、全返礼品に占めるカラアゲの割合は7%に満たず、名産といっても一アイテムに集中させないモラルがあるようです(*2)。
*1 ふるさとチョイスHP@上毛町 20190604
*2 ふるさとチョイスHP@中津市 20190604
【 上毛町 】
■ 金銭/琴線 → ふるさと
名産となると同業者も多くあってもおかしくないのですが、上毛町の場合、カラアゲの出品は1事業者からのみです。
マチの名産ならば、となりマチの中津市のようにカラアゲ業者が乱立してほしいものです。そこで上毛町にお問い合わせしました。
質問は以下の2点
(1)上毛町とカラアゲの縁はどのようなものがあるのでしょうか。
(2)上毛町のふるさと納税の返礼品にカラアゲがあります。そのカラアゲは聖林本店のみしかないようですが、他のカラアゲ事業者はいないのでしょうか。
なお、1か月たってもお答えはありませんでした。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
カラアゲでは寄附金をそれほど多く集められると思えず、多く集められない分、総務省もスルーすると思えるのですが、上毛町は総務省からおとがめを食らいました。
福岡県内には、上毛町より多く寄附金をあつめたマチもあります。2017年度にかぎれば福岡県内でふるさと納税額上位5位までは以下のようになります。
福智町 17億5,143.8万円
宗像市 15億6,149.7万円
上毛町 12億 586.0万円
新宮町 10億6,775.6万円
久留米市 10億3,754.7万円
福智町にもなにがあるのかな?と思えましたが、17億円ほどの寄附金を集めています。 福智町は寄附金集めに問題があったのか、泉佐野市ほどには重くない罰“仮免許”が与えられています。おなじく上毛町も仮免許団体です。
# 「仮免許」とは、ふるさと納税制度での様子見期間というものです。総務省は同制度で趣旨にそぐわない返礼品で集めた自治体には怒りの鉄槌を食わらしました。
その怒りの鉄槌は、ふるさと納税制度の適用除外、すなわち使わせないとする措置です。
適用除外まできびしくはありませんが、総務省の意向にそうように改善するならということで、様子見期間をもうけて同制度の適用とすることにしました。その様子見である適用期間は6~9月までです。
様子見期間中はいわばふるさと納税制度適用の仮免許中であり、総務省は「仮免許」とはいっていませんが日経新聞ではそういっています(*)。
* 日本経済新聞web版 201190514
■ 金銭/琴線 → ふるさと
上毛町、気になります。町内をウロウロするとため池を多く目にし、他の町にない特徴といえばそれぐらいです。ため池は他のマチにない地理的特徴かもしれませんが、ため池とふるさと納税はさほど関係なさそうです。
ため池とカラアゲも関係なさそうです。 一言でいうとイナカです。
寄附金を多く集めたといっても集めすぎたほどの額ではありません。 ただ、同町の同年度の地方税は7億4,386万円ですので、自分のマチからあがる税収の1.7倍ヨソのマチの人から集めました。
マチはいたっておだやかで、総務省からおとがめを食うような反抗的なマチにみえません。それでもおとがめを食ったということは、お上に対してなにか腹立たしいことがあったのでしょう。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
上毛町には、お上からのおとがめを気にしているマチの議員センセイもいらっしゃいます。 同センセイは国への敬意は高く、議会では「おとがめ」を「御指導」とおっしゃっており、そのご指導の内容についてたずねています。
その国からのご指導は以下の2点
- 現在の返礼品割合45%を3割以下に見直すこと
- 返礼品割合を地場産品のみとすること
税務課長はそのように答えています(*)。
町としてもご指導のとおり修正するようにしました。
* 第4回上毛町議会定例会(20191207)
■ 金銭/琴線 → ふるさと
議会発言をたどると上毛町は、ふるさと納税で得するマチではなく損するマチであったことに気づいたことから集める姿勢に傾いたようです。
ふるさと納税で稼いでいる自治体をしっかりリサーチして、返礼品の拡充に挑んだ結果、集めすぎる自治体となり総務省から目をつけられたようです。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
上毛町の返礼品には、キラーアイテムといえるほどの産品はありません。あったとしてもカラアゲです。 そういった状況から他産地の人気のある産品を自分のマチの返礼品としました。
外部から金銀飛車角
上毛町の町長は、他産地のキラーアイテムといえる産品をそのように称しています。
関係ないことですが、上毛町から30キロ北にある行橋市の返礼品にはiPadがあることが同議会で発言されています。
ローカライズド(LCD)のリサーチが甘いのかしれませんが、行橋市にアップルの工場があるとは聞きません。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
上毛町はふるさと納税での返礼品を外部の助っ人産品に頼っていました。これからは頼れず、地元産で勝負しなければなりません。
総務省からおとがめを食った後の上毛町のふるさと納税の返礼品は以下のとおりです(*:20190719)。
全47件
醤油があったり、お米があったりと上毛町産の産品を地味に品ぞろえています。
全部で47件とは少なく10億円集めた自治体にしては、少なすぎる感もあります。
ちなみに上毛町と同じ福岡県の自治体である15億円集めた宗像市は、同時期には448件ありました。
* ふるさとチョイスHP 上毛町のお礼の品情報
■ 金銭/琴線 → ふるさと
上毛町の返礼品の魅力ダウンは仕方なさそうです。さらに47件のうち21件はトリのカラアゲ、しかもその供給先は1社のみからです。
この時点では、上毛町の返礼品は1社に集中していることになり、これはこれで総務省からおとがめを食らいそうな気配もします。
くどいようですが、カラアゲはどちらかというと、となりマチの中津市、さらにとなりマチの宇佐市が知られたところです。
上毛町にもカラアゲ店がないことはないのですが、カラアゲで知られたマチかというと、そうでもなさそうです。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
上毛町のトリのカラアゲの供給先は、カラアゲ聖林(ハリウッド)です。カラアゲにハリウッド、いかにも農業が盛んなマチのセンスにみえます。
その本店は上毛町の田畑ひろがる個人宅?と思える場所でひっそりと営業しており、それはそれで興味がそそられ「訪れてみようか」という気分になります。
同町長は「返礼品に批判を受けているが?」の町議会議員の質問に「努力の結果であり責められる事はない」と答えています(*1)。 なお、同町長は地元出身の男性であり、好きな食べ物は「肉」です(*2)。
*1こうげ議会だより 2019年2月号
*2こうげの師 P27
【 からあげ聖林 】
■ 金銭/琴線 → ふるさと
経済力では、九州は他の地方とくらべてなにかと弱く、上がる税収も少ないものです。少ない税収をふるさと納税でおぎないところです。
一人あたり県民所得では、下位40位~47位に九州からは5県エントリーしており、ビンボー県と知らしめているようなものです。
九州はフードアイランド九州とかいって、農産品などの食べ物の充実ぶりをアピールしています。
事実、充実しているのですが、農産品では付加価値は低く、充実していてもリッチ市町村にはなりえません。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
そうとは思いきや九州には半導体の工場がそれなりに立地しています。
しかし、半導体は世界経済に大きく左右される製品特性があり、マチに大きな税収+経済効果をもたらすこともありますが、そうでないこともありマチの経済アイテムとしては安定的ではありません。
半導体工場からの税収は、ジェットコースター並みに上下します。ハラハラするだけでなく、上下した揚げ句しまいには撤退という事態もあります。
テキサス・インスツルメンツ(TI)
付加価値の高い製品はそういった側面もありますが、そういった工場がないマチはハラハラすることはないのですが、ビンボーをキープしたままです。
ふるさと納税制度は付加価値の高い工業製品のない農産品が充実しているビンボー市町村に対して、リッチ市町村への道を開きました。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
マチには〇〇市ブランドなるものがあります。市が認定していたり、市ではなくとも○○ブランド協議会なるあたかも行政組織のような団体が認定したりしているようなヤツです。
地元産≒〇〇市ブランド
シャネルやルイ・ヴィトンのような高級ファッションブランドには、ほど遠いもののブランド協議会としては、同じ“ブランド品”と言いたげです。
シャネルらとマチの農産品ではブランドの意味合いは大きくちがいますが、〇〇市ブランドとして少しはプレミアムがあるようにみせ、運のいいとバカ売れする認定品もあります。
実のところは認定品となってもバカ売れどころかさほど売れない状況であり、そもそも地元の〇〇市ブランドなるブランド品は内外に知られていないのが実態です。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
ふるさと納税を10億円以上集めるようなマチは、地元に魅力あふれる産品があふれており、その土地の地域ブランドとして一役買っていると考えられます。
九州のふるさと納税受入額上位市町村と〇〇市ブランド (平成29年)
自治体名 | 有無 | |
1位 | 都農町(宮) | ナシ |
2位 | 都城市(宮) | ナシ |
3位 | みやま町(佐) | ナシ |
4位 | 上峰町(佐) | ナシ |
5位 | 唐津市(佐) | アリ |
6位 | 国東市(大) | ナシ |
7位 | 志布志市(鹿) | アリ |
8位 | 嬉野市(佐) | ナシ |
9位 | 高鍋町(宮) | ナシ |
10位 | 大崎町(鹿) | ナシ |
【注意】 (宮):宮崎県 (佐):佐賀県 (大):大分県 (鹿):鹿児島県
唐津市には商工ブランド課があり、志布志市には企画政策課にブランド推進係があります。ただ、他のマチにはブランド担当セクションはみられません。
ローカライズド(LCD)としては、マチに○○市認定ブランドがあるほど、寄附金も多く集められるはずとにらんだのですが、そんなことはなく、ブランド戦略があろうとなかろうと、寄附金は集まりもするし、集まりもしないようです。つまり関係ないということです。
返礼品≠地域ブランド ちょっと話ははずれますが、九州内ではふるさと納税受入額の上位10位内に福岡県、長崎県、熊本県のマチはありません。
ふるさと納税制度を活用する気持ちが足りないか、マチに魅力ある産品が少ないかと思われます。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
令和元年6月1日以降、大阪泉佐野市など1市3町をふるさと納税制度の対象から外しました。
お上(総務省)も言うこときかないマチには怒りの鉄槌をくだしたようです。 残念ながら九州からは佐賀県のみやき町もその対象外となっています。 ふるさと納税制度ではワリを食う東京は、都と都内の市町村は同制度の適用を辞退しています。
リッチ市町村のなせるふるまいです。
リッチ市町村は地方交付税も不交付(もらえない≒もらわない)であることも多くあります。九州にはそういったリッチ市町村はさほどなく、2017年度の九州の不交付団体は苅田町のみです。
その苅田町、ふるさと納税制度に背をむけているかというとそうではなく、同年度は9,177.5万円ほど寄附金を集めています。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
総務省からのおとがめ様子見期間措置である仮免許の団体は、43団体。そのうち九州は9市7町1村計17団体です。国内全体のほぼ4割を九州が占めています。
寄附金を10億円以上集めると総務省の目はきびしくなるのですが、令和元年からは10億円以下の団体にも目が向けられ、昨年度受入額10億円以下の九州の自治体にも仮免許とされています。
九州の仮免許交付団体
県 | 自治体 |
福岡県 | 直方市 飯塚市 行橋市 中間市 志免町 赤村 福智町 上毛町 |
佐賀県 | 唐津市 武雄市 小城市 吉野ヶ里町 上峰町 有田町 |
宮崎県 | 都農町 |
鹿児島県 | 鹿児島市 南さつま市 |
なぜ仮免許となるのかさまざま理由が考えられます。
福岡県は、気性のはげしいマチ、ビンボー自治体、麻生太郎センセイの選挙区と、さまざまな目線でみることができます。 それにしても佐賀県はしぶとく、対象外自治体1町とあわせて仮免許団体3市3町あります。
宮崎県と鹿児島県の対象団体は、どう対応するか気になるところですが、のんびりしている土地柄もあって、見直すのではないでしょうか。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
冒頭の鹿児島県大崎町は2015年度のふるさと納税による寄附金は27億1,964万円でした。ここ数年間ではもっとも集めた年度であり、同年度の鹿児島県ではもっとも集めたマチになります。
大崎町の寄附金の変遷
年度 | 寄附金額 |
2008 | 158万円 |
2009 | 201万5,000円 |
2010 | 461万8,600円 |
2011 | 312万2,000円 |
2012 | 291万5,000円 |
2013 | 398万8,580円 |
2014 | 1,092万6,000円 |
2015 | 27億1,964万1,628円 |
2016 | 16億7,460万6,126円 |
2017 | 23億1,305万2,466円 |
出所: 総務省ふるさと納税ポータルサイト 関連資料
158万円から23億円とはベンチャー企業並みの成長ぶりです。10年もたたずに14万6,296%成長しており、年率148.7%の成長スピードです。
ちなみに携帯向けゲーム:GREEを運営する企業であるグリーの2016年から過去10年間の成長率は6万5,207%ですので、いまをときめくIT企業より成長のスピードは早いことになります(*)。
* 参考 東洋経済ONLINE マーケット 20170209
■ 金銭/琴線 → ふるさと
あわせて単に多く集めただけでなく、ダントツに集めたマチでした。
36.5%
一つのマチだけで自県全体の寄附金の3割超集めています。地方のマチなどどこも似たようなものとタカをくくっては、見当ちがいと言われそうです。 魅力ある返礼品がそろっているのか、大口寄付者がいたのか、それとも単に集め方が上手だったのか、はわかりません。
なお、大崎町のケースだと、約27億円のうち事務経費などを除くと11億円ほどはマチの事業費として使えます。
返礼品はマチの事業者から買い上げており、その額12億円余り。
マチのカンバンで12億円の売上が地元にもたらされたことになり、地元生産者や事業者たちの地道な経営努力では難しい売上ではないでしょうか。
売上からあがる所得から発生する事業所税などで地元に還元されます。
■ 金銭/琴線 → ふるさと
地方の中小企業や生産者は都会のそれらとくらべて情報や人など経営資源が常に不足しています。とくに販売の点でなにかとハンデがあります。しかし、そういったマチにふるさと納税はねがってもない販売機会を提供しました。
税収ほしさに過度な返礼品が注目されもしましたが、地元の事業者に販売機会を提供した側面もあり、悪いことばかりではないようです。ふるさとの経済にも貢献できたのではないでしょうか。
* 参考:南日本新聞 20160731 ②面
■ おわりに
ふるさと納税の納税先を決めた理由の82.4%は「返礼品」目当てです。
ふるさと納税制度の趣旨である地元への愛着による寄附となると、「税金の使い道に共感」は15.5%と少なく、寄附する人とお上の目論見はマッチしないようです(*)。
なにごともお上の目論見どおりにいかないものですが、ふるさと納税制度は経済的に弱小なマチになんらかの機会をもたらしたといえます。地域経済活性化には一定の効果があったのではないでしょうか。
いつまでも中央の大手資本の会社にやられっぱなしでは、少々立つ瀬がありません。
返礼品目当てでもいいから都会から田舎に、お金を回して日本全体でにぎわいたいものです。
* 共同通信社 まめ学 20190513
本編はここまで。
罠 #2 ふるさと納税 ②/2
リサーチに協力していただい方々に感謝いたします。
一方、リサーチに協力していただけなかった方、次回ご協力にお願いいたします。
なお、本号で登場したマチへの訪問は個人の判断にお任せします。ただ、人は似たような土地には行きません。決して当地を真似ようとは思わないでください。日本じゅうの自治体が同質化してしまい、「どこも似たようなもんだろ」と先入観をもたれて、しまいにだれも訪れることをしなくなります。
訂正の連絡はこちら
【注意】
地図はグーグルより加工
価格・数量などは初回公開当時のもの
画像は下手上手関係なくローカライズド(LCD)
なお、取材日当日でないものもアリ
現地に赴く場合は、公式情報を確認されてから行くように
初回リリース:20190914
ここで紹介したことはすでに過去の情報となっていることを申し伝えておきます。
マチとの遭遇 九州編
製作:ローカライズド(LCD)
■ メンバー
#1 風戸ケイキ(リサーチ)
#2 ワリアイト・リョウ(リサーチ)
#3 タシロ(プレス)
旅とカットソーシリーズ 2019
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