〓 ゴールデンウイークの翌週、発砲系アルコールが誘う夕方、九州のとあるアイリッシュパブ:Nandénite(読み:ナンデナイト)にローカライズド(LCD)のメンバーであるカゼト氏、ワリアイト氏の両氏は、大分県の津久見について知りたいというリサーチ依頼の打ち合わせのため同店に入ります。依頼主はポーランドの鉱山王とよばれるラウメン・カタメンガスキ氏。
セメントだけじゃないゼ
津久見
「つくみ」と読みます。
大分県にあります。
カゼト
津久見に行ったんだけどさ、ムダにウロウロするにはいいマチだったよ。
【 市内をぬけるパイプライン 】
ワリアイト
その「ムダに」は余計だよ。
カゼト
関係ないよ。オレは津久見観光アンサバダーじゃないし。
ワリアイト
アンバサダーだよ。正しくは。
カゼト
必要か、そんな人間。
ワリアイト
地元には必要なんだよ。
― 津久見の場所 ―
〓 津久見の何について知りたいのかは皆目わからないものの報酬は前金、しかもキャッシュでローカライズド(LCD)の口座に振り込まれたので、取りかかることにしました。
カゼト
先方は何について知りたいんだ?
ワリアイト
わからない。
カゼト
観光アンサバダーを送り込むか?
ワリアイト
アンバサダーだって。
〓 夕方の早い時間でもあっても店内はいつものようにざわめいています。両氏ともにカウンターのL字の曲がったところ2席の部分に着くと、カゼト氏はメニューのすみっこに書いてある焼酎をめざとく見つけそれを頼み、ワリアイト氏はギネスビールとツマミにフィッシュアンドチップスを頼みました。どんな店でも焼酎を置いておくのは九州の決まりなんでしょうか。
カゼト
「つくみ」って知ってるか?
ワリアイト
むかし甲子園に出てたみたいだね。
# 甲子園、いわゆる高校野球のことです。津久見から出場したのは大分県立津久見高校、1967年の選抜大会、1972年の夏の甲子園です。以降、出場はありません。当地では当時から人口が減っていました。なお、同地は野球がさかんな土地柄でもあり、同校からはプロ野球選手を多く輩出しています。
カゼト
津久見、行ったことあるのかよ?
ワリアイト
ある。車で行った。高速も走っているし、インターもある。
カゼト
鉄道で行けよ。津久見は特急停まるんだよ。しかし、誰と行ったんだ? また、大分の美人のおばさんか?
【 JR津久見駅 】
〓 焼酎とビールが運ばれてきました。焼酎は無色透明、丸い氷が入っています。ビールは黒く上部は白い泡です。フィッシュアンドチップスは揚げ物だけに時間がかかるようで、両氏は待たずに飲み物をさっさと口にします。すぐに来るという店員のコルニさんのアドバイス(というか気を利かして)で、生ハムを頼みました。
「最近、コルム見ないね?」と両氏はコルニさんに声をかけます。両氏は常連でもあります。同店を好む理由のひとつにカウンター席の背のあるロウチェアがあることでした(肘掛けつき)。「背もたれがあるとひっくりかえらずに済む」とカゼト氏。「九州にカンパイ」と両氏。
ワリアイト
「宮脇」では、たしかあのへんのリサーチはキミ?
# 「宮脇」とは、ローカライズド(LCD)がwebマガジン「マチとの遭遇」(有料)でお送りしているコンテンツです。正しくは「マチとの遭遇 九州編宮脇シリーズ」ですが、メンバーは略して「宮脇」と呼んでいます。なお、購読者数はさえません。
カゼト
そうだけどオマエも。
ワリアイト
たしか、海べり行ったと思えば山に入ったりするあたり。鉄道マニア受けしそうな沿線だろ。ボクには海のニオイのするイメージが強いマチだけど。
カゼト
そうかよ。だいたい臼杵~津久見~佐伯の区間。津久見といえば石灰だが。
【 臼杵~津久見~佐伯 】
ワリアイト
津久見近くなると石灰石の山が見えはじめる。かなり削られているようだけど。
【 削られる山 】
カゼト
町じゅう石灰で粉っぽいわけじゃあるまいし。
# 2017年の一時期、臼杵~津久見~佐伯の区間は台風の被害もあって不通となっていましたが、彼ら訪問時は復旧し普通に運行していました。不通時は代替バスが九州各地から応援に来ており、当地では平時にはありえない他県のバス会社のバスが走っていました。
カゼト
高速つかって車で来ると津久見インターのところは、石灰の砕石場がみえて圧巻だね。
ワリアイト
高速道路だからじっくり見られないよ。
〓 フィッシュアンドチップスが運ばれてきます。揚げたてのうすい茶色の衣が食欲そそりますが、揚げたてなため中身は熱いのですぐには食しません。それでも熱いとわかっているのですが揚げたてを指でつまむ両氏です。冷やすためにビネガーをかけようとそのボトルに手をかけますが「待て」とカゼト氏。
カゼト
オレ、モルトビネガー、嫌いなんだよ。
ワリアイト
苦手といいなよ。「嫌い」は店の親切に失礼だよ。
カゼト
しかし、どうしてこれが日本で定着しないのかな?居酒屋とかでさ。
ワリアイト
パブで食してこそフィッシュアンドチップスなんだよ。
カゼト
市も採石場の見学スポットとか設置すれば観光客増えて、マチにカネが落ちるぞ。ミドリの山と白というグレーの石灰の山、そうそう見る機会ないゾ。
【 鉱山の入り口 】
ワリアイト
そんなことしなくてもいいと思うよ。日本の石灰石の1割強は津久見で採掘されているからマチの経済も潤っていると思う。あわせてセメントでも。ちなみに石灰石と石灰は別物らしい。地元には太平洋セメントの工場もあるし。工場、静かだったけど、動いてるのかな?
カゼト
人口も減っているし。
ワリアイト
どこのマチだって人口は減るよ。
カゼト
石灰好きな人を集めて、アウトサイダーを呼び込むとか。
ワリアイト
石灰好きな人ってどんな人だよ。
# 津久見市は石灰石の国内生産量の14%を産出しています。人口2万人を切る、面積79.48k㎡のマチで国内生産量の14%をまかなっていることになります。
なお、津久見市の担当課にこの状況をメールでたずねるも回答はありませんでした。潤っている自治体は地元の地域資源に関心を示す輩には冷たいようです。
カゼト
鉱産税がジャカジャカ?
ワリアイト
ジャカジャカというほどではないけど。4,000万円ほど。でも、市の税収では軽自動車税のほうが多い。さらには市町村たばこ税のほうがその2倍超ある。
# 津久見市の直近3か年の鉱産税と軽自動車税
津久見市の平成28年度財政状況資料集より(*)
軽自動車税 5,030.4万円(2.2%)
鉱産税 4,122.1万円(1.8%)
人口 18,481人
注意:( )内の数字は津久見市の地方税に占める各税収の割合
# ちなみにおとなりの佐伯市の同年度の鉱産税収入は6万円でした(*)。佐伯市は津久見市の11倍広い面積を持つマチですが、運が悪いのか地下に埋まっているものは少ないようでした。
* 佐伯市 平成28年度財政状況資料集
カゼト
地元に埋まっているものよりも地元ネイティブの乗る軽自動車からとるほうが多いのかよ。
ワリアイト
そのようだね。
カゼト
市役所に「セメント課」などがあったりしてな。
ワリアイト
ない。でもセメント町という町名のマチがある。セメント町にある商店街はセメント町商店街というし。
【 ここはセメント町 】
【 セメント町商店街 】
【 バス停:セメント町 】
カゼト
セメントで稼いでいるのに「セメント課」がないのか!
ワリアイト
ない。セメントには将来がない。
カゼト
いままで稼いでたじゃないか。
ワリアイト
いまままではね。
カゼト
セメントで観光振興は?
ワリアイト
してなさそう。というかできなさそう。やりたくなさそうかも。地域一番の太平洋セメントの工場名が津久見工場でなく、大分工場という名称だし。地元ではいまだに吸収される前の小野田セメントという人もいるし。
【 太平洋セメント 大分工場 】
カゼト
ふーん。地元には地元なりの事情がありそうね。津久見にセメントの工場があるというだけの話みたいだね。
ワリアイト
セメントよりも石灰石のマチだな。
カゼト
運動会で白いライン引いただろう。あれが石灰、ただしくは消石灰。
ワリアイト
消石灰は目にはいるとキケンなのでいまは炭酸カルシウムになっているみたいだね。
カゼト
少子化だから運動会での石灰の消費増は見込めなさそうだな。
ワリアイト
炭酸カルシウムは食品添加用に加工されたものがあるよ。
カゼト
石灰を食べるのか?
ワリアイト
でどころは同じだけど製品がちがう。安心安全だよ。そもそも消石灰は畜舎に撒きもするしね。化粧品にも使えるらしい。
【 津久見市は大分県にあります 】
〓 ワリアイト氏はカゼト氏に現地の画像をタブレットで見せます。「工場撮ってるだけじゃないか」と、つっこまれるものの「工場萌えにはこれがいいんだよ」と一応やりかえしておきます。
「これにときめくヤツの気がしれん」とカゼト氏。歯ごたえがちょうどいい砂肝のアヒージョを頼みます。店内のBGMはU2です。
カゼト
「ヨシュア・トゥリー」までのU2は好きだな
ワリアイト
そうだね、ダニエル・ラノワの力が大きいね。
カゼト
ブライアン・イーノも。
ワリアイト
ウィンドウズ95の起動音もその人ね。
カゼト
オマエ、物知りだな。
ワリアイト
ウィキペディアに書いてあるよ。
閑話休題
カゼト
工場萌えの人たちでも硬派向きなところだな。津久見は。
【 セメント工場 】
ワリアイト
たいてい、そうだろう。その道路を路線バスや一般の乗用車が走ってる。公道だからバイクでも自転車でも徒歩でもOKみたいだね。男受けはするだろうね。
カゼト
夜来ても泊まるところがない。
ワリアイト
あるよ。AZホテルが。
【 津久見のAZホテル 】
# 津久見市にはセメントや石灰工場のプラントが多く立地しています。山を削った採石場から海岸近くに立地している工場まで石灰石を運ぶパイプラインがマチの景観などは無視するかのように一直線に抜けています。
パイプラインの先は削られて灰色の石灰石の山です。工場は積み出しの都合から海べりに立地しています。パイプラインは太く大きく、その直径は大人が立って歩けるほどです。
石灰の工場群も埋め立てを繰り返して離れ小島が陸続きになるほど拡張を続けるので、ドーム球場並みの広さになりました。バスや自動車の走る公道も工場の脇ではなく、工場のなかを公道が走っている感もあります。右も左もプラントで公道の上はなんのパイプかわかりませんがそれらが通っています。
なお、津久見の市政要覧には、太平洋セメント大分工場の巨大な煙突のあるプラントがイラストとして利用されています。
【 突き抜けるパイプライン 】
【 削られる山その2 】
【 工場内をはしりぬけるような公道 】
【 大きな煙突 】
ワリアイト
あのトンネルにキミの好きな離合が出てくる。
カゼト
トンネル入口の「離合困難」の標識というか黄色のカンバンな。
【 「離合困難」とあるカンバン 】
ワリアイト
あの暗いトンネルを歩く人がいたり、自転車で行く人がいたり、キケンだよ。大型トラックが走るし。
カゼト
たしかに。
# 離合とはすれちがうことです。このあたりではそのように表現し、地元ネイティブはこれを標準語ととらえているフシがあります。
カゼト
セメントは地域活性化のアイテムにはならなそうだな。
ワリアイト
そうだね。でもしなくていいんじゃない。
カゼト
津久見って観光地ではなさそうだね。
ワリアイト
いちおう地元観光協会はある。駅を出て、駅舎というか駅の建物の端っこに協会の事務所があるよ。こじんまりとして小さくてさみしい。観光客に向けての案内場所というかんじではなかったな。それ以前に津久見が観光地かどうかは難しいところだよ。
【 セメント工場群のなかの公道 】
● カゼト氏の当地でのメモ(一部)
JRで津久見まで行き、同駅で下車する。下車するもバスとの連絡悪く、周辺ウロウロする。徒歩でウロウロできるほどの駅周辺に観光コンテンツなし。閑散。客待ちのタクシー多。
セメント町行きというかそこを通過するバスが来た。乗る(11:16)。乗車したバスは臼津交通(本社臼杵市)の路線バス。
数分後にはバス停セメント町に着き下車。目の前は太平洋セメントの工場。バスの会社名は「うすつこうつう」と読むと思っていたが「きゅうしんこうつう」らしい。
【注意】
〇 きゅうしんこうつう
✖ うすつこうつう
〓 カゼト氏、よれよれになった地元観光パンフレットをながめます。地元の観光ガイドには石灰石の採掘地であることは申し訳ない程度の記載に気づきました。
カゼト
津久見に年間何人来るんだ?
ワリアイト
船で上陸する人が25,334人(*2015年)。
*津久見市統計資料書
カゼト
それって、観光客じゃないだろ。船員だろ。
ワリアイト
たぶん。そう。でも駅の利用者は増えてるよ。
〓 カゼト氏、津久見市統計資料書を革のトートバックからガサゴソ出し、津久見駅利用数の記載のあるところを探します。
ワリアイト
このカバン、カッコいいね。
カゼト
いいだろ。アメリカのデトロイト産らしい。
〓 ツマミにビーフジャーキーをオーダーします。さらにサラミとピクルスを加えます。ワリアイト氏がシガーを出すとコルニさんがやってきて緑のチョッキのポケットからシガーカッターを出して渡します。ワリアイト氏、シガーの先をチョキンと切り、シガーをくわえます。シガーに火をつけるマッチは柄が長く普段見かけるようなマッチではありません。「カッコつけが」とカゼト氏。
先ほど頼んだ砂肝のアヒージョが来ます。黒い小さい鉄のなべに黄色がかったオリーブオイルがグツグツと煮立っているのにみとれる両氏でした。カゼト氏はタカの爪の赤色に、ワリアイト氏はニンニクのニオイに反応します。コルニさんの去りぎわに「モヒートね」とワリアイト氏は頼みます。
カゼト
普通客は減って定期客が増えてる。人口減っているのにどういうこと? セメント需要の拡大で津久見で働く人が増えたってこと?しかも定期っていうことは、有期雇用か?
ワリアイト
単に合併の統合で生徒が流れてきただけだろう。普通客が減ってるということは地元ネイティブの人口減もあるけど、やはり観光で来る人も減っているということじゃないか。
カゼト
市営住宅の家賃も安いぞ。
ワリアイト
空いてるからといってすぐには引っ越せまい。
カゼト
そうだけどな。
# 津久見市公営住宅の家賃の例(津久見市HPより)
- 3階 3DK 20,300円~39,900円
- 3階 3DK 19,800円~38,900円
〓 ビーフジャーキーなどが運ばれてきます。見た目からして堅く、老化気味で歯が気になるカゼト氏は「これはいい」と遠慮します。そのかわりサラミはオレ中心とのことです。シガー用の灰皿が届きました。
ワリアイト氏は持ってきた女性スタッフに「気が利くね、ありがと」とお礼を言い、「そのエプロン、似合ってるね」とつけくわえます。シガー用の灰皿はオールガラス仕様だったこともあって氷の塊が運ばれてきたと思ったカゼト氏、さらに二人でヒソヒソ話すとなりのワリアイト氏に「モテるヤツはいいのお〜」とぼやきます。シガーにビーフジャーキーと男臭さ満載になります。
カゼト
しかし、船は来てるゾ。
ワリアイト
津久見の場合、船が運んでくるのは人じゃないしね。
カゼト
セメントや石灰石はガンガン輸出してるらしいゾ。
ワリアイト
よく数字を見ろよ。数字をみると量のほうは上がってないけど、金額は上がってる。4年前とくらべるとトンあたり単価は1.5倍ぐらい値上がりしている。
カゼト
ということは津久見は活況。太平洋セメントの株買っておけば上がるかも。
ワリアイト
東京オリンピックまでは需要はあるけどそれから先どうかな。
カゼト
雇用と環境対策で、太平洋セメントの株式購入って手が津久見市にはあるぞ。値上がり益は大いに期待できるだろうし。
ワリアイト
どうかな、議会がウンというかな。市が株主になっても工場の撤退はないわけではないだろうし。それよりも東京オリンピックの建設需要が一段落しはじめる頃に下がりだすよ。
# 津久見市はセメントのおかげか一人当り市町村所得が自県大分県の平均より50万円、年度によっては100万円ほど高いときもあります。
一人当り市町村民所得の推移(単位:千円)
〓 カゼト氏、麦焼酎:ほげほっぽ(久家本店@臼杵市)の水割り、ワリアイト氏、カシスソーダ、つまみにちくわのアラビータをオーダーするも、カゼト氏に「ちくわ単独じゃダメなのか」「そもそもアラビータってなんだ」と純粋に質問します。
めんどくさいカゼト氏のためワリアイト氏、カゼト氏の好物:鶏のカラアゲもオーダーします。「津久見ってサケなかったけ?」のカゼト氏の問いかけに「ないね」とあっさり答えるワリアイト氏。
【 バス停:楠屋 】
● カゼト氏の当地でのメモ
バス停:セメント町13:06発の楠屋行きに乗る。雨がチラッと降る。たいして込む道路ではないはずだが2.3分遅れて到着。車内は高齢者が数人。
工場群というか工場のなかを抜けるように路線バスが走る。バス停:徳浦以降は漁村となり海ベリを走る。グレーの空に金属色が映える。
海べりの道路から対岸には巨大なプラントが見える。赤と白の煙突も見える。バスの運転手さんは黙々と運転。いつのまにか乗客は自分一人の貸切状態。
右側は海とグレーの曇り空。たまに地元ネイティブと思われる車とすれ違い、路上駐車の車を下に見る。
ときおりすれちがえるのかと思えるほどの道幅のせまいところを行く。運転手さんの華麗なドライビングテクニックで難なくすぎる。
【 カゼト氏の行った道 】
ワリアイト
先っぽまですぐに折り返してきたのか?
カゼト
そう。タッチアンドゴーだよ。終点地でのんびりしていると次のバスまで3時間ぐらい待たないといけない。土日なんか1日3本だよ。
ワリアイト
どんなところだよ。自動販売機すらないだろ?
カゼト
ない。リアス式海岸の海べりを行くところ。ほんと海べりの漁村。家はある。ついウトウトしてしまうような場所。でもウトウトするのはもったいないぐらい。タッチアンドゴーで1時間ぐらい。
【 終着のバス停:楠屋 】
ワリアイト
へえ~。
カゼト
トイレないよ。観光スポットでもないしな。
ワリアイト
リアス式海岸だろ。キミの好きな。
カゼト
好きだけどリアルは、地図ほどにグニャグニャを感じない。
● ひきつづきカゼト氏の当地でのメモ
小学校を発見する。休校?廃校?終点のバス停:楠屋に到着13:32。ほぼ定刻通り。一旦下車、同時に支払う。450円(現金のみICカード使えず)。下車する。
終点の場所はどん突き。先はなさそう。小さな湾でもある。曇りのせいかよけい寒村ぶりが目立つ。こんなところでも人が住んでおり、住居がある。ちょっとうらやましい。
限界集落は山あいの場所だけでなく、海ベリの土地にもあることを実感。バスのエンジンがかかる。発車の合図ということだろう。再度乗車。来た道を3分ほどで折り返す。
ワリアイトにタッチアンドゴーとバカにされるがこれが好き。バス停:楠屋13:35発車。しばらくお客乗ってこず。
運転手さんに話しかけられる。現地の解説。なんでもセメントの輸出が旺盛で港の拡張工事をしているらしい。そこを指す。独身寮の建設もするとのこと。
徳浦でおじいさんが乗ってきた。体の自由がきかないのか乗車に時間がかかっている。セメント町を通過して津久見港で降りた。14:04着。30分ほどの乗車、満足。
【 対岸からの工場群のながめ 】
〓 カゼト氏、津久見市の観光ガイドやチラシなどを手にとってながめます。「老眼にはきびしい」とぼやきながら、カラアゲを片手に伊勢正三のコンサートチラシに反応します。カラアゲには長めの爪楊枝を刺します。「ハシを使わないのはいい」と、両氏。
カゼト
津久見駅で「なごり雪」が流れてるのは知ってるか?発着のベルの代りに流れるんだよ。
ワリアイト
イルカの?
カゼト
合唱コンクールでおなじみの。オマエにはわからんだろうがな。
ワリアイト
そうね。しかし、なぜ、なごり雪?
カゼト
作詞作曲が地元出身者で、当時の駅長が2年間頼み込んで実現したらしい。地元市民会館でコンサートもやったみたい。
【 JR津久見駅にて 】
ワリアイト
津久見はイルカも観光アイテムなんだよ。
カゼト
そういえばトンちゃんも津久見で講演したらしい。
ワリアイト
トンちゃん?
カゼト
村山富市首相だよ。大分出身だよ。高齢者向けのセミナーがあったらしい。総理としては終わったかもしれないが高齢者として現役なんだよ。
ワリアイト
なんだよ、その高齢者として現役ってのは?
カゼト
あの人、出てきたときからおじいちゃんだったろ。
〓 ワリアイト氏は、カゼト氏のセメント町のバス停から津久見市の北部の長目地区の楠屋まで行き、そこで折り返した行程について聞き入ります。シガーのニオイは鼻につきますが、カゼト氏は迷惑ではないようです。かなり焼酎が入っているのでお料理のセンシティブなニオイには鈍感になっていますが。
カゼト
なごり雪のイルカとは違う。だからといってそのつながりもない。
ワリアイト
イルカメインの水族館がある。イルカが地域活性化してくれるらしい。イルカ研究サミットというのも開催実績があるよ。
【 うみたま体験パーク:つくみイルカ島 】
カゼト
イルカの水族館!! シー・シェパードに襲われるぞ。
ワリアイト
大丈夫。ヤツらが来るほどマチは知られてない。水族館でもないし。
カゼト
知られてないのかよ。
ワリアイト
ここはクジラとは関係ないがマグロがあがる。地元ではマグロの研究もしてるみたい。
〓 ちくわのアラビアータには、「ちくわのスパゲティーミートソースか」とカゼト氏。麦焼酎:ほげほっぽの水割り、モヒートもやってきます。少々蒸した店内ですが、モヒートのミントが見た目スカッとします。
カゼト
マグロ?
ワリアイト
そうマグロ。地元の飲食店にはマグロカレーってのもある。
カゼト
おいしいのか?
ワリアイト
食べてないのでわからん。
カゼト
マグロをカレーに入れるという感覚がわからんな。
ワリアイト
たしかに。いま、マグロで勝ちたければ近大マグロ並みの話題がないとね。
カゼト
なんなの?このヨコヅーナって。
ワリアイト
理解してやれよ。「ツナ」とかけてるのではないかな?
カゼト
マチではマグロが食べられるのかよ?
ワリアイト
観光ガイドをみると、マグロ丼、マグロステーキ、マグロカツ、マグロカレー、まぐろぎょうさ、まぐろまんじゅう、まぐろラーメンってバリエーションは多いよ。
カゼト
後半になるほど、避けたくなるな。
ワリアイト
マグロは純粋にマグロだけで食べたいな。
〓 カゼト氏、地元観光協会発行のひゅうが丼の案内を手に取ります。ひゅうが丼の由来が気になりましたが同案内でも「わからず」とあり、結局「わからず」です。「諸説色々あるらしい」ということで納得しました。
【 地元観光協会のパンフ 】
カゼト
このパンフに赤線の消しがあるのがいかにもイナカの観光協会だな。
ワリアイト
そういうところに目を向けるなよ。
カゼト
まぐろ巻ってあるぞ。
ワリアイト
カステラ生地に小豆を巻いたロールって。
カゼト
安心した。カステラにマグロが入っていたら驚くぞ。
ワリアイト
たしかに驚く。
カゼト
「ぎょろっけ」ってあるぞ。
〓 注文したものがぞくぞくと運ばれてきます。お店は盛況でほぼ満席です。店内の音楽もU2はいつのまに終わっており、バグパイプの音がひびくアイルランド音楽になっています。外国人客も多くなり、カゼト氏「ココは九州か?」とつぶやきます。
ワリアイト
ぎょろっけの発祥は下関じゃなかったか。
カゼト
唐津だよ。もしかしたら、そのどちらもかも。
ワリアイト
全国区なんだ。ぎょろっけって。もしかしたらさかなクンも噛んでんじゃないか?
カゼト
どうかな。サザエカレーもあるけど。津久見に。
ワリアイト
海士町のマネ?
カゼト
マネじゃないだろう。料理だから。壱岐にもそういったのがある。
ワリアイト
発祥の地ではないだろう。
カゼト
だれも発祥の地とは言ってないしな。許してやれよ。
# 地元のマグロ漁の基地として津久見市から離れた離島保戸島(ほとしま)があります。津久見の漁港から1日6便ほど定期船が出ており、所要時間は25分、日帰りで最長11時間30分滞在できます。ただ、それだけ滞在できるかどうかの保証はありません。
【 保戸島への渡船 】
ワリアイト
津久見の保戸島(ほとじま)があって、そこが津久見のマグロ漁の拠点らしい。学校の給食ではマグロフライが出る。
カゼト
どうせなら、フライよりも刺身がいいな。
ワリアイト
ゼイタクだよ。学校の給食には。
カゼト
ウイキペディアでは「地中海の漁港を連想させる」ってあるけど、そう思うか?
# この他にも大分県離島振興協議会が運営するHPおおいたの島めぐりの保土島のページでは 外国の漁港を思わせる景観です。 とあります。
ワリアイト
ウソではないね。
カゼト
含みあるね?
ワリアイト
離島だから平地がないだろ、海があってすぐ山みたない地形。
【 海があって山みたいな地形 】
カゼト
そうね。だから住宅が密集するというわけか。
ワリアイト
そう、土地にへばりついた形で家が建ってる。しかもひしめき合ってて、隣同士のプライベートはなさすぎなくらい、ひしめいている。なんとなく、家のデッパリをおさえているようなかんじでもあったよ。その部分はたしかに地中海っぽい。
カゼト
で、観光地なわけ?
ワリアイト
有料で釣りをさせてくれる会社があるぐらいで観光地ではないと思う。そういったところに人がうじゃうじゃ来たらイヤだろ。キミみたいなヒマ人が行くような場所だよ。
〓 カゼト氏、ディタトニックをたのみます。ワリアイト氏、カゼト氏がそんなカクテルを知っているのに少々おどろきます。
カゼト
ブログの更新がないね。2年近くも。
ワリアイト
みんなマグロ漁に出てんだよ。地元の会社が運営してるみたい。
カゼト
2年も行きっぱなしってことはないだろう。
# 津久見のマグロは、水揚量では国内ナンバー1の焼津市の2割弱程度であり、ここ数年は水揚げは縮小傾向です。地元水産業者のなかにはマグロの養殖に取り組んでおり、マグロが地域経済発展のアイテムとなるよう期待されています。
津久見市のマグロの漁獲量
年 | 漁獲量 |
2011 | 3,805t |
2012 | 3,731t |
2013 | 2,988t |
2014 | 3,296t |
2015 | 2,945t |
出所:農林水産省 市町村の姿
カゼト
保土島、それほど観光地ではないね。
ワリアイト
いちおう観光ガイドらしきものはあるけど。自分もなんとなくヨソ者が来たっていう目で見られた。
カゼト
オレも行ったが、どの部分が地中海かはわからんかったがな。。
ワリアイト
島の人たちはリヤカーやカゴで荷物を運ぶんだよ。見たかい?
カゼト
そう、リヤカーあったな。
【 リヤカー 】
ワリアイト
船から降りて家までモノ運ぶときに使うみたい。たいていの人は押してた。竹で編んだようなカゴも背負ってる人もいた。
カゼト
カゴもあったな。
【 カゴ 】
ワリアイト
そういった人たちは地元ネイティブだろうけど、渡船から降りるとそうしてたね。リヤカーが島のいたるところに置いてある。
カゼト
リヤカーにカゴの島だな。
# 津久見市発行の観光ガイド:保土島歩記には保土島の日常的非日常として、「リヤカーおそるべし」や「テポ(背負籠)の機能美」として、30字程度で紹介されています。カゼト氏、ワリアイト氏の言う「カゴ」は地元では「テポ」というようです。
ワリアイト
学校はあるけどコンビニはない、飲食店はあるかどうかわからない。せまい路地裏のような路地に自動販売機が壁に寄り添うように設置してあった。
カゼト
路地裏のような路地?
ワリアイト
それぐらい狭いんだよ。
【 狭い路地 】
カゼト
しかし、こういったところに興味本位で行っていいのか?
ワリアイト
島には小学校がある。中学校も。小学校のお別れ遠足の全参加者が3人。というか全校生徒3人。
カゼト
3人で遠足か?
ワリアイト
そう。お別れ遠足だから一人卒業する。
カゼト
本当にお別れ遠足だな。
ワリアイト
来年から全校生徒2人か。いつも対戦だな。競争心が都会の子より芽生えるだろうね。
カゼト
生徒会長とかどうやって選ぶんだろうか?
ワリアイト
キミが気にしなくても大丈夫だよ。
〓 ディタトニック運ばれてきます。「オレ、こういうの甘いの好きなんだよ」とカゼト氏。コルニさんから「どうですか、ワリアイトさん、アイリッシュウイスキーもありますよ」とすすめられました。
両氏のあいだでは津久見の話はまだまだ続くものの本号ではここまで。近いうちに続きを公開予定。ただし時期は未定。
【打ち合わせ】 津久見へのリサーチ依頼の件で
【注意】
地図はグーグルより加工
価格・数量などは初回公開当時のもの
下手上手関係なく画像はローカライズド(LCD)
現地に赴く場合は、公式情報確認のうえ赴くように
初回リリース:20180609
ここで紹介したことはすでに過去の情報となっていることを申し伝えておきます。
ARQ:ローカライズド(LCD)のこれも仕事のうち
製作:ローカライズド(LCD)
■ メンバー
#1 風戸ケイキ(リサーチ)
#2 ワリアイト・リョウ(リサーチ)
#3 タシロ(プレス)
旅とカットソーシリーズ 2018
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