マチとの遭遇 九州編

50歳(O-50)からの地域活性化

-解説-肥薩おれんじ鉄道:鹿児島県出水市と熊本県葦北郡および八代市

2020年03月21日 09:56 by keiki-kazeto
2020年03月21日 09:56 by keiki-kazeto

 県境を越えて。熊本県の南部と鹿児島県の北部をはしる3セクの鉄道があります。3セク鉄道=経営状況悪いという短絡的なイメージはこの際おいといて、3セク鉄道のガンバリに目を向けてみました。もちろん目を向けたのはローカライズド(LCD)です。
 その同鉄道のガンバリの一つに「おれんじ食堂」という企画列車があります。本号はその乗車体験記です。なお、お送りするのは九州を中心に活動する地域活性化ユニット:ローカライズド(LCD)です。ちなみに肥薩おれんじ鉄道からの依頼を受けての紹介ではありませんのであしからず。

 

【 肥薩おれんじ鉄道の車両 】

 

旅こそ一人旅。こそっと一人旅。

朝食は
 3セク鉄道で

 

= 九州に列車内で飲食できるローカル鉄道があると知って、そのエッセイ依頼がローカライズド(LCD)に来た。

 依頼主は北欧の鉄道公社:ヨーキタコゲントコロ二公社。

 なお、エッセイの形式は自由のこと。報酬は年間パスポートの支給となっていたが、この後大きな発注があるはずと期待し引き受けることに。

 ローカライズド(LCD)メンバーのカゼト氏、ワリアイト氏の両氏は自身の乗車体験をリアルタイム風なテキストを出すことにした。なお、当webで公開したコンテンツは同公社に提出する前のカゼト氏が作成したものである。

 ワリアイト氏の発案でエッセイのタイトルは、「朝食は3セク鉄道で」とした。内容は洒落た仕上がりではないのであしからず。

 

【 肥薩おれんじ鉄道線 八代~川内駅 】

 

■ 乗車前  

 確信犯的に出水(いずみ)で一泊する。

 薩摩川内でのリサーチ依頼(別仕事)があり、一度は乗ってみたくもあり、そのうちリサーチ依頼もあるだろうと期待を込めながら、肥薩おれんじ鉄道に乗るために出水まで出向いて同地で一泊した。  

 薩摩川内では他社の担当二人と同行してのリサーチだったが、なにかと自分のことを意味なくセンセイと呼ぶので気に入らず、仕事が終わったらさっさと離れてほしかったが、帰りの際まで金魚のフンのように付いてくる。  

 発車ギリギリの改札前で「ウ○コ行ってくる」と言って切り離した。

 切り離しても律儀に待たれては意味がないので「時間がかかるかもしれないので、先行っててください」と念を押して、先に改札に行かせた。担当二人は自分が早飯早グソなのは知るまい。  

■ 乗車前 

 無事に切り離しに成功したが、トイレは改札入場後にあるのはウカツだった。


 後日、「あの後センセイどこ行っていたんですか?」ときかれても「トイレ探すのに時間がかかってコンビニまで行ったよ~」、とアリバイは用意した。  

 かねてから同鉄道の観光列車である

おれんじ食堂

 に乗ってみたいとは思っていた。ついにその機会が訪れたわけだ(正しくは訪れようとしている)。

 おれんじ食堂の公式HP 

 今回、おれんじ食堂のなかでも1便の朝食便とした。その後の自分の予定からすると、観光客のように肥薩おれんじ鉄道全線を運行する2便、3便に乗れるほどヒマはない。

 それでも乗車したく、スケジュールの都合と乗りたい気持ちを勘案して1便にした。


 1便は他の便と比べて安いはが、決してカネがおしくてケチったわけではない。

 

【 JR出水駅 】

■ 乗車前  

 おれんじ食堂の運行は金土日祝日のみ。同列車は「列車」ではなく、

「食堂」

 である。レストランでなく食堂というところが共感できる。肥薩おれんじ鉄道の運行区間は

八代(やつしろ)から川内(せんだい)まで

 の路線総延長116.9キロだが、自身の乗るおれんじ食堂1便の運行はそのどちらともからほぼ中間に位置する出水から八代・新八代までとなる。

起点:八代
    ⇅
ほぼ中間点:出水
    ⇅
終点:川内

 出水・新八代は九州新幹線の停車駅でもあり、ほぼ肥薩おれんじ鉄道の駅と併設されているので移動に問題ないが、1便は中間の出水からの出発となっている。

 そのためわざわざ出水まで出向き、人間関係も崩さないといけないメにあった。

 なにかと単独行動を好むヤツと記憶されないか心配になる。

【 出水駅の位置 】

■ 乗車前  

 おれんじ食堂の情報は事前にネットで収集しておいた。

 公式HPは魅力満載、個人のブログなどは感想を中心に、不満やそれに乗った自慢など様々あり、公式HPの“いいことだけ情報”を補完するかたちで見ておいた。

 心に触れるような記述がなかったのは、伝える側の表現下手か、それともその程度の食堂なのか? 

少々不安になる。  

 後でガッカリとならないためにも情報収集しておかないといけないが、情報収集しすぎるのも体験時の感動を損なうおそれがあるので注意が必要。

 事前情報を多くするのも楽しみを削ぐ 。目を引く観光列車だが、なにかと情報が少ない九州の観光コンテンツであることを割り引いても、webでの個人からの情報発信は少ない気がする。

 一方、ウィキペディアの脚注は標準的な記事にくらべて多いような気もした。

■ 乗車前  

 3セク鉄道だけに、常時存亡の危機に立たされていると思える。そういった鉄道に乗るのは安全性に不安がある。

 もちろん財政への不安ではなく、財政の不安がもたらす安全性への欠如ということだが、

肥薩おれんじ鉄道経営安定基金

 によって、財政を磐石にした模様。鹿児島県は5億円集めたということだが、その約半分は沿線市町村でない鹿児島市からの支払い(造成)となっている。

 このあたりで人口の多い鹿児島市からの乗車を期待したいところだが、それは望めなさそうでもある。

 とはいっても取り崩し型の基金では“取り崩すだけに”やがてはなくなる。

大丈夫か

 収入増への期待でおれんじ食堂をはじめたということだが、収入増を上回るコスト増となり、しいては

経営を圧迫

 になりやしまいか。こういったのは一度乗ると次は乗るまい。

 そもそも乗る人もグルメではなく鉄道マニアであろう。鉄道マニアでは圧倒的に数が足りない。

 好きな人は何度でも乗るのだろうが、そうもの好きな人もいまい。ある程度の人が乗り終えると、それ以上の運輸収入増は見込めず、基金の募集をまた始めないといけないだろう。

 最近、流行りのクラウドファンディングはどうだ?

 経営状況を気にして鉄道を乗るのはやめよう。乗るに乗れなくなる。

 北海道のような遠方から飛行機で来て、わざわざ鉄道に乗る人を満足させるようでないと、成功とはいえない。

 こういった取り組み、最初にはじめた鉄道会社は、先行者利益を得ることにはなるだろうが、他者がやりはじめると本格的に競争がはじまり、魅力に欠けるところは負ける。

【 おれんじ食堂 1便 】

■ 乗車前   

 肥薩おれんじ鉄道には数回乗っている。宮脇シリーズのリサーチもあり、このあたりの周辺のリサーチでも乗った。

 赤字ぶりがよくわかる乗車率だったと記憶している。沿線高校生の乗車マナーの悪さもとくに印象に残っている。 

 あれでは、肥薩おれんじ鉄道を観光コンテンツとして紹介するのは、ちょっと抵抗がある。
 第3セクターの鉄道には

沿線高校生の乗車マナーの改善  

 を求める。沿線の鉄道会社にとっては3年間は確実に乗ってくれる堅いお客さんのため注意しずらいというのはわかる(下手をすると護身用ナイフでさされるというのもわかる)。

 本気で収入増を望むならヨソ者である一見さんを呼ばなければならず、一見さんを呼ぶためには一見さんに不愉快な思いをさせてはいけない。

一見さんを大事にせよ

 なお、沿線の高校生と思われる彼らの乗車マナーのほどは 第3セクター沿線の高校が甲子園に出場したら、「一発で出場停止になる」レベルと思える。

 本webマガジンを通して全世界に情報提供をしておく。

■ 乗車前   

 以前、肥薩おれんじ鉄道には取材を申し込むもお断りされた。たしか外国のリサーチ会社からの依頼の仕事だったかと記憶している。

 お断りされたことで悪い印象を持つ狭量な人間ではないが(つもり)、断られ方次第ではネガティブな目線となる。

 ツイ、粗を探す 

 こちらは無名人であり、発注先も外国のリサーチ会社であっては、ツッケンドンな対応になるのもわからないわけではない。

 当時と今では社長も変わったので営業姿勢は変わったかもしれないが、企業体質はそう変われるものでないので、なんともいえない。

 今回の乗車は0(ゼロ)ではなく、少々マイナスイメージからのスタートであることを付け加えておく。

【 肥薩おれんじ鉄道本社 】

■ 乗車前   

 観光列車:おれんじ食堂の運行区間は新八代・八代~川内、肥薩おれんじ鉄道全線を走りぬける。

 このおれんじ食堂にも新八代~八代間の1駅区間だが、1度乗ったことがある。

 新幹線で新八代駅まで行き、乗り換えて八代駅に行く際に新八代駅のプラットホームにおれんじ食堂が止まっていた。

 特別料金取られるのかと思ったが、八代駅までの乗車だけなら乗車料金ですむというので、新八代~八代間の規定料金160円で乗った。

 ものめずらしさもあって車内をウロウロしたかったが、これから食事と風景を楽しもうとする座席指定のお客を中年男が阻害してはいけないと思ってやめておいた。

 それでも気になってチラ見はしたが。

 この区間だけ乗車する沿線住民のために乗車料金だけで乗れるようにしてあり、華やかな列車に不釣合いな地元ネイティブらしきおじいさんが端のほうにポツンと座っていたのを覚えている。

 お客は無意味にウロウロしてはいけないようで、ウロウロするとスチュワーデスのような乗務員に注意される。座席指定券を持たない外国人がそのような行動をしては、とがめられていた。

【 新八代駅から出るおれんじ食堂 】

■ 乗車前   

 そういった記憶が思い出されるようにおれんじ食堂に乗車した。乗車には(正しくは食べるには)予約が必要である。

 同鉄道のHPでは案内とともに予約も促している。

 しかし、HPで情報は提供しているが予約は受け付けておらず、電話で対面でしなければならない。  

 わざわざこうするのも旅情を高める策なのか?

 それともコストダウン策なのか?

 電話をかける前は面倒くさいなと思ったが、電話の向こうのおばさん(オペレーター)と対面でやりとりする段になったらそんなことは思わなくなった。

 むしろ、地元アクセントには好感が持てる。

 こちらがたずねたことがうまく答えられない(少なくとも心に刺さらず)のは残念といえる。きっと乗車経験がないのだろう。

 末端のオペレーターがお客の問い合わせにピシャリ答えられないのは、経営のこまかいところまでには目がいってないと思える。
 これではカンブリア宮殿も取材にやって来まい。 

【 車両のロゴ 】

■ 乗車前   

 電話で予約というのはネット時代の今に時代錯誤に思えたが、新鮮でもあった。自動オペレーターの案内で

サービス向上のため録音する

 という不愉快なアナウンスもないので、イヤな気分にもならない。アナログはいい。

 同食堂のサイトをみながらここの席はどうだとか、席のチェンジはできるのかと色々たずね、たどたどしくあるも丁寧に対応していただけた。その対応はおもてなし経営賞の受賞には、ほど遠いが。

 面倒くさそうに対応するコールセンターの女性オペレーターと違って、好感が増す。ついセクハラ質問しなければと思ったのは根がスケベなだけか。

 俄然乗りたい(食べたい)気持ちになった。きくとおばさん(電話の声ではお姉さんとは言い難い)は地元の方だそうだ。個人情報まで教えてくれる。

 マニュアルにはない対応だ。ますます好感が増す。

 ネットでは案内の不備な点もあり車両のどちら側が海かはわからず、おばさん、いや、女性オペレーターにたずねた。

 女性オペレーターもこのような質問はされたことがなかったのか、いちいち調べては教えてくれた。一旦入手した情報を整理するために電話を切った。

 電話でやり取りするなかで、おれんじ食堂は、必ずしもお食事しなくても乗れるということを知る。自分の収入からしては、かなり豪華なお食事群。一番安いプラン(1便)のブレックファストで居酒屋2軒はいけそうだ(自分基準)。

 自分史上最高額の朝食ともいえる。

 おれんじ食堂に乗って食べないのもどうかと思い、ブレックファスト便(しかもちゃんと食べる)に決めた(というかスケジュールの都合でこれしか乗れない)。

 この列車に乗ってサケ類が飲めないのもどうかと思ったが、飲みは妻との時にとっておくことにした。  

■ 乗車前

 再度、電話した。ありがたいことに先と同じおばさんが出た。呼びかけるために名前をたずねた。「あくねさん(仮名)」らしい。肥薩おれんじ鉄道の沿線にそんなマチがある。同鉄道のオペレーターにふさわしいお名前だ。  

 またやりとりがつづく、食事付きのプランにしたものの席がなかなか決められない。こういったのは座席のセレクトも重要だ。

 どこに座ってもいいという問題ではない。モテモテのワリアイトのヤツは、食事の席の決定には神経を使うとボヤいていたが、一人でも神経を使う。

あくねさん:「平日の1便ですのでたくさんあいてますよ」

カゼト:「カウンター席もいいですけど、テーブル席もすてがたいけど、一人でテーブル席というのも・・・」

あくねさん:「お気づかいなさらずにいいですよ」  

 座席は指定ではなく確保という形になるようだ。ピンポイントで席は決められないらしいが「本当はこんなことできないのですが」と断りを入れて、便宜を図ってくれた。その後、「本当はこんなことできないのですが」がやたら続いて、得した気分になった。

あくねさん:「食べ物にアレルギーはないですか?」

カゼト:「アレルギーはないですが、好き嫌いは多いです」

 あくねさんの見事な電話対応で、ついいつもの自分が出てしまった。サラダにつくドレッシングは、最近はやりのクリームチーズ風ドレッシングは苦手なので、そうであればかえてほしいと伝えた。

【 車窓からのながめ 】

■ 乗車前   

 支払いはどうするのかと思っていたが、後日案内通知が送られてくるらしい。振込用紙が同封されており入金せよとのことだった。

 面倒だなと思ったが、この手間が楽しく思えた。とはいってもネットバンキングでさっさと払ったので、それほど煩わしさはなかった。  

 乗車前のギリギリで予約を入れたので、入金後のバウチャー券を受け取れず出張に出た。

 バウチャー券は乗車前にお渡しするとのことだった。

 

ここからは実際の乗車

 

■ 乗車直前  

 自身の乗車(食事)する1便の発車駅は出水駅から。湿っぽい朝だった。前日に出水入りしていたので、朝あわただしく移動することはなかったが、それにしても出水駅周辺に宿がない。

 「宿がない」わけではないが、なにかと出張を重ねたおかげで出水駅周辺の宿はほぼ一巡したから、そう感じたのかもしれない。  

 出水駅はJR九州の新幹線駅であり、肥薩おれんじ鉄道の駅でもある。駅舎は両社別々、新幹線駅の出水駅は立派、肥薩おれんじ鉄道の出水駅はちっぽけだった。

 資本力の差か。

【 出水駅(肥薩おれんじ鉄道) 】

■ 乗車直前  

 出水駅の待合室はプラスティック製の椅子が数脚と最低限の設えだった。改札のすぐ後ろに目当てのおれんじ食堂が停車している。
 

 はしゃぐほどの感動はない。あくまでも冷静である自分を自分で確認する。なにかとスマホを向けて画像撮影するのも大人げないのでやめておく。しかし、そうもしないのも、なにか損した気分になる。

 乗車時間も近いので乗りこもうとすると「待て」とのこと。仕方なく待つ。寒々とした待合室には1組の家族連れがおり、自分と同じ便に乗ることになった。乗車してわかったが、お客は

自分を含めて2組の計4名。

 親孝行なのか年配の息子が年老いた両親を連れている。高齢社会の「親子連れ」のパターンだ。彼らはそれほどの撮影スポットもないはずだが、乗車前の画像撮影に熱心に励んでいる。 額の汗からそれがうかがえる。 

 もう1本のプラットホームには、地元ネイティブ高校生が列車を待っている。かたや観光(仕事でもあるが)、かたや通学と乗る方向が違うように乗る理由も違う。
 ここでは大人をさっぱりみかけないが、このあたりの大人の通勤は車なのだろう。これでは鉄道による地域活性化は望めまい。

【 出発前のおれんじ食堂(1便) 】

■ 乗車直前   

 改札口周辺をウロウロしていたら急に「乗れ」となった。おもてなし的な演出はなく、事務的に誘導され乗せられる。

 乗務員は、列車ではなく“食堂”なのか黒のギャルソンエプロンがユニフォームとなっている。 急に非日常感が増した。「やるな」と思った。

 着こなしているかとなると別な話で、男性スタッフの後ろポケットから古びた財布がのぞいているのはいただけない。もし妻がいたら

「クツは高いのを履け」

 と指摘するだろう。かかとがちびたクツはいただけない。あわせて革靴でないと、革底の心地よい響きも車内で聞けない。

 せかされて乗る。座席は決まっているのか案内されたところに座る。あとでわかったことだが、一人だからといって気兼ねして一人席のカウンターでなくてよかった。

 もうひとつ後でわかったことだが、希望の座席を確保してくれていたようだ。しかも他のお客とは離れている座席に。ギャルソンは、一人客の自分にもテーブル席をおすすめする。

 発車前にギャルソンから本日の乗車のお礼をされる。朝で乗客が少ないせいか、車内はちょっと空気が緊張している感がある。

 同社公式HPによると、クルー全員からの「おはようございます」というあいさつがあるらしいが、自分にはなかった。きっともう1組のお客にはあったのだろう。

【 ウェルカムな案内 】

■ 乗車中   

 乗るとさっさと発車した。経営課題に生産性向上をかかげているのはこういうことか。

 サプライズなおもてなしもなく、駅関係者一人が見送りに手を振ってくれる。両手にはオレンジ色の軍手をはめている。

 オレンジ色は同社のコーポレートカラーなのか、おれんじ鉄道関係者はオレンジ色を身につけている。しかし

おれんじ鉄道だからオレンジ色

 なのか? もう少しヒネリがほしい。G.Iオレンジというバンドを思い出した。 

 車内をウロウロする。2両の列車に2組のお客だからウロウロしても迷惑はないはず。1号車でなく2号車でもよかったかなと思えた。

 スタッフは食事のサービスの準備などに忙しいのかウロウロする自分にかまうことなく、テキパキと仕事をすすめている。

【 2号車はこんなかんじ 】 

■ 乗車中   

 発車時刻は7:52。この時間から朝食というのは遅すぎかもしれない。走りはじめてもなかなか朝食は出てこない。

 沿線ホテルのシェフによる朝食だが、シェフが同乗しているわけでもないが、冷凍食品をチンして食させるわけでもないようだ。

 それに不満があるのであれば、しかるべきところへ行ったほうがいい。

 朝食がなかなか出てこない分、スタッフがテーブルに来ては目線を下げて、「アレは何、コレは何」と沿線の景色や列車の説明をしてくれる。心遣いのつもりだろうが、腹がすく。

【 1号車はこんなかんじ 】

■ 乗車中  

 走り出してしばらくしてわかったことだが、車内はやかましい。海べりのイナカ路線を走る中古のディーゼルカーだからかうるさい。

 あわせて無駄な車内BGMが流れ、車内アナウンスのボリュームもそのせいか大きく、すこぶるやかましい。あれやこれやと説明する車内スタッフの声も聞き取れない。もう一組の客も大声で話している。

やかましい  

 沿線を飛ぶ鳥のさえずりや海べりを走る際の波の音などは、ディーゼルエンジンにさえぎられる。そういった音を聴きながら鉄道を楽しむことはできない。

 車両の製造は新潟の会社。走るのは南国九州だが、それでもにぎやかすぎる。といっても車両を製造した会社もこういう使われ方を想定していまい。

【 画像では静かそうな車内 】

■ 乗車中   

 やかましいのでいっそのことBGMなどはやめたほうがいいと思いながらも、食堂は沿線をすすむ。

 おれんじ食堂=海をながめながらのお食事  

 のイメージだが、発車からはながらく内陸を走る。田んぼや畑、沿線の住宅も見え、各ご家庭の生活風景も目に入る。おじいさんが安楽イスに座っているのを車両からみてしまうと、あっちのほうがなごめるじゃないかと思える。

【 車窓からみえる沿線住宅の屋根瓦 】

■ 乗車中   

 水俣駅に到着。ここでしばし停車。沿線のお土産サービスがあり、事前に引き換え券が渡される。こういったのはたいしたことはなく、

荷物になる

 と思って引き換えないでいると、車内スタッフがしきりにすすめる。相手を慮って避けようと車内及び車両まわりをウロウロしていたら、座席までお土産を持ってきてくれた(画像:地元産スイートスプリングジュース)。

 引き換えないでいるのは、もてなす側に失礼のようであった。  

 外を見るとプラットホームに机を出して、お土産を渡している。物販もしている。「買い」もしろということであろう。

 おれんじ食堂の運行ではときおり停車駅があり、そこで物販などしているが、お客が少なすぎては買うほうも難しい。それでも車内ではお土産ということで、なにかといただいた。

 ヨソ者である乗客が買わないと、地域経済の活性化にはつながらない。水俣駅の改札から一直線にチッソの工場のゲートがみえた。沿線は楽しいことばかりではないようだ。

【 いただいだお土産 】

■ 乗車中  

 水俣駅を出発すると食べ物が出てきた。その前にドリンクなどのサービスもあってはいいのでは思えた。ただし、テーブルの上にはペットボトルの水が置かれてはいた。

 だんだんわかってきたことだが、

揺れる  

 ということを知る。しかもこの食堂では食堂だけに食べ+飲みしなければならない。

 テーブルの上に意識ナシにモノを置けないことをわかりはじめる。ランチョンマットは揺れによるすべり+落下防止であり、コースターにもすべり防止加工がされている。ちなみにともにオレンジ色である。  

安易にモノを置けない。

 この状況では、背の高いロングカクテル、徳利などの不安定な器類はもっての他であろう。

【 オレンジ色のコースター 】

■ 乗車中   

 朝食メニュー1発目はポタージュだった。おいしいと記憶しているが、揺れるため味に集中できない。

 次のスクランブルエッグも皿にフォークを突き刺し、それを口に入れる。フォークが皿にあたって食べ物が突き刺さっていることを確認して手を動かした。

 難度の高いワザを求められており、「箸で」とはいかなさそうだ。

とにかく揺れる

 途中、パンもでてきたが、バターを塗る作業は止めにした(そもそも塗らないが)。

 この揺れではパンにバターナイフでバターを塗るのは難しい(試しに塗ってみようかという気にはなった)。食事マナーどころではなく、揺れることに気を使わなければならない。  

揺れる

 ギャルソンはお客に食べ物の説明をするが、ディーゼルエンジンの音で聞こえない。車外風景を楽しみながらの食事どころではなく、眼下の皿に集中しなければ食事は危うい。

【 揺れる 】

■ 乗車中  

 車窓からの風景もウリの食堂だが、それをせわしなく食べる。気のせいかもう一組のお客グループも一皿の食事ペースが早い。

 揺れ加減は座席位置によるのか、となり客はプレートをお茶碗のようにかかえて、口にフォークをももっていきラタトゥイユをかきこんでいる。あちらはよほど揺れるのか?

 一皿あたりのたいらげるスピードも早くなるのも当然の成り行きである。ギャルソンは、それでも微笑みをたやさずサービスしてくれる。こちらは微笑みかえす余裕はない。

【 フォークで突き刺す 】

 

■ 乗車中   

 顔をあげにくい。安定感のある食べ物が欲しい。いっそ、丼などにしてはどうだろうか。吉野家と提携して牛丼列車を提案する。

 そうすれば、早く”安定的に”食べられる上に料金も下がるだろうから、全国のビンボー鉄道ファンの乗車が見込め、収入増につながるのではないだろうか。しかもあちらのコーポレートカラーもオレンジ色だ。  

 「牛丼では・・・」と反対意見があるのであれば、コロッケなど固形状のものを皿にのせてほしい。

 もっとダイレクトに表現すると フォークをつきさせる食べ物、あわせて

一口大  

 がありがたい。 きっとおれんじ食堂関係者は同食堂には乗ったことはあっても食べたことないのでは?車両設計した水戸岡鋭治センセイも乗ったことはあっても食べたことがないのでは?  

 これは食堂なのだから乗るだけではなく、食べてほしい。

【 安定 】

■ 乗車中  

 沿線風景に飽きたところで海べりを走り出した。トンネルもある。肥薩おれんじ鉄道1便のクライマックスでもある。空は青く、海も青く、ともに広い。

 と同時に傾く。線路の曲線部では、Gがかかり海側に向かって少々前のめりになる。

 お食事がなければ、これも鉄道の楽しさだが、今回ばかりはそうは言ってられない。  

 カトラリーの類を裏返してみるとイケア製であった。コストダウンが意識されており経営努力されていることに大いに感じた。  

 車内アナウンスはあいかわらず聞こえにくい。標準語で話されていることに気づく。多少地元アクセントであると旅情が出るものだが、ここにはない。

 ギャルソンは地元アクセントで話す。自身の乗った1便のお客は2組だが、2便は満席だそうだ。ギャルソンとの会話でそのこと知る。

【 イケア製 】

■ 乗車完了  

 八代駅に到着する。ここまで来ると終点が近い。同駅には同社本社も併設されているのか、オレンジ色を身につけた同社関係者がお見送りに出ていた。

 年配の男性は経営者層なのだろう。やらされ感あふれる笑顔にもみえなくはないが、お見送りがあるだけマシなのだろう。同社社長のコメントがある(*1)。

揺れが少なく、非常に乗り心地がいい。(略)  

 これはきっと、おれんじ食堂ではなく、それ以外の同社車両についての発言と思われる。ちなみに同社社長の趣味はマラソンとジャズを聴くことらしい。(*2)

* 1 西日本新聞 20171004 電子版
* 2 おれんじ食堂新聞 Vol.14
 

■ 乗車完了  

 終点の新八代駅に到着。2時間弱の乗車。到着時のサプライズな仕掛けはナシ。声をかけられることもナシ。太陽は高くヌクヌクしている。

 下車時に在来線の乗車待ち客に「このモノ好き客め」的な目線を送られる。おれんじ食堂は住民感情を逆なでするような乗り物だろうか。少々心配だ。 下車後、なにか後悔した気分になった。

 朝飯に9,000円も使っていいのだろうかと(乗車賃も含む)。それにしても新八代駅、さみしい。駅のプラットホームから集合住宅のベランダが目に入り、瞬時に日常に戻された感じだ。

以上乗車体験

【 新八代駅 】

■ 本号はここまで

― 解説 ― 肥薩おれんじ鉄道 鹿児島県出水市と熊本県葦北郡および八代市

訂正の連絡はこちら

 

【注意】
地図はグーグルより加工
価格・数量などは初回公開当時のもの
下手上手関係なく画像はローカライズド(LCD)
現地に赴く場合は、公式情報を確認されてから行くように

初回リリース:20180811

ここで紹介したことはすでに過去の情報となっていることを申し伝えておきます。

 

マチとの遭遇
#オールラウンド九州(ARQ)

 製作:ローカライズド(LCD)

■ メンバー
#1 風戸ケイキ(リサーチ)
#2 ワリアイト・リョウ(リサーチ)
#3 タシロ(プレス)

 旅とカットソーシリーズ 2018

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