ひきつづき 第3日目
香椎線/勝田線/日田彦山線/田川線/伊田線/添田線/上山田線
■ 時刻表2万キロ:3章における九州内の足取り
宮脇俊三氏 49歳
1975年(昭和50年)
自:12/28(日)
至:12/30(火)
製作:ローカライズド(LCD)
■ 時刻表2万キロ:勝田線ダイジェスト
香椎線の宇美駅を下線し、徒歩で勝田線の宇美駅に向かう。勝田線途中の同駅から乗線後、勝田線終点の筑前勝田駅に向かい、同駅で折り返し、起点の吉塚駅に到着。
■ 勝田線 1
勝田線は廃線となっています。時刻表2万キロでも「もう2度と乗ることのなさそうなこの赤字線と~」とあり、宮脇氏の乗線から10年後、廃線となったため2度と乗ることはなかったと思われます。
当時、香椎線の宇美駅と勝田線の宇美駅の同名他駅が100mほど離れて存在していました。しかも同じ鉄道会社です。
同一駅名では人を惑わす
時刻表2万キロでもこのような怒りにも似た感想をみることができます。たしかに当時の地図では、宇美駅の向かいに宇美駅があり、現存する宇美駅の向かいに「あれが駅だったろうな」と思わせる"残像”があります。
氏は同名他駅の存在を知らず、あるはずの駅がないためあわてますが、駅員にたずねて目指す勝田線の宇美駅に難なくたどりつきます。
大きく計画が狂うところでしたが、同一駅名についてそれ以上の言及はなく、赤字路線でもあることからか「そっとしておいたほうがよいのかもしれぬ」と、氏はさり気なくフォローしています。
【 宇美駅 】
■ 勝田線 2
勝田線の通過駅に志免駅(しめ)があります。廃線と同時に廃駅となり、現在はモニュメントになっています。時刻表2万キロでは、ペンキのはげかかった志免駅の駅名標に
一円たりともこの駅に経費をかけませんぞ、と国鉄が居直っているかにみえる
と書かれています。すでに廃駅を予測していたかのような記述ですが、廃線廃駅となったことで駅名標は復元されたり、鉄道記念公園として整備されたりと、営業終了してからカネをかけたようです。なお、同記念公園近くには運動公園として整備されている志免鉱業所竪坑櫓があり、櫓がヌボーと立っています。
【 旧志免駅の駅名標 】
■ 勝田線 3
鉄道も時がたてば廃線となると同じく炭鉱も用がすめば廃坑となります。ただし、モノによっては国の重要文化財:志免鉱業所竪坑櫓となるものもあります。
周囲は平和な運動公園となっており、開けた土地に廃墟のような構造物はおおいに違和感を覚えるのですが、見た目のインパクトもあってデートスポットとしても活用されています。夜はライトアップもされ、近くの勝田線跡地の志免鉄道記念公園ともに、このあたりの"終了済スポット”にもなっています
"済”だけではなく、現役の人気スポットもあります。日本の誇るエンターテイナー:郷ひろみ氏の父が同地で働いていたこともあって、その叔父が「ひろみ饅頭」を同地にて製造販売しています。
筑前勝田から25分後ほどで吉塚着 勝田線完乗
(途中から乗線し全区間同日中にクリア)
【 志免鉱業所竪坑櫓 】
― 志免鉱業所竪坑櫓の所在地 ―
■ 日田彦山線に乗るまで 1
カネをかけてこそ趣味、いやカネがかかるのが趣味です。宮脇氏はカネにあかせず鉄道に乗りまくっている印象がありますが、その後の執筆、出版という実益を見込んでいるから趣味に投資しているとも見受けられます。
時刻表2万キロを読みすすめていくと、スポンサーがいるわけでなく、会社の出張を利用しているわけでなく、ましてや行政の補助金などを使って乗っているわけでなく、あくまでも自己資金で取り組んでいることがわかります。
趣味にはカネがかかるのですが氏なりにコスト意識はあり、氏の乗線にはワイド周遊券を使っていらっしゃいました。JR九州は国鉄時代にくらべてお得な切符のメニューは豊富になったようです。しかし、特定区間の往復のお得な切符は充実していますが、周遊券となるとちょっと少なくなります。
営業方針といえばそれまでですが、人口が減る時代にあって運輸収入を伸ばす難しさを考えると、やはりそうなるのかもしれません。
■ 日田彦山線に乗るまで 2
日田彦山線の乗線は小倉からのため博多から小倉へ移動してからの完乗がはじまります。宮脇氏の小倉までの移動は急行「出島」です。急行というひびきに昭和を感じますが、現在、JR九州には定期の急行列車はありません。
博多-小倉間の在来線は現在、①普通、②快速、③特急が走っており、鈍行の普通は相当時間がかかるとしても快速と特急では、36%の時間短縮でだいたい36%の料金アップです。
博多-小倉間(在来線)の移動料金(*1)
注意:特急は自由席の場合 所有時間は"だいたい” @料金とは所有時間1分あたりの料金
ただ、新幹線となると断然時間短縮になり、場合によっては乗る価値は十分あるといえます。ただし、在来線と新幹線では同じ区間でも走る路線がちがい、距離も違います。
所有時間 15分 料金(自由席)2,110円 1分あたり140.6円
この区間、会社によっては規定などで新幹線おろか特急の使用を認めていない会社もあるので、シブシブ快速で博多から小倉に向かうビジネスマンもいます。
*1 JR九州調べ
― 日田彦山線 ―
* グレーのラインは博多回りとなる
■ 時刻表2万キロ:日田彦山線ダイジェスト
勝田線乗線完乗後、博多駅に向かい小倉駅に到着する。同駅からそのまま起点の城野を通過し、同線途中の伊田でいったん下車。その後、他の路線の乗線のため行橋、小倉とまわり再度伊田に向かう。同駅から後藤寺まで行き同線完乗となる。なお、後藤寺から終点の夜明まではすでに乗線済の模様。
■ 日田彦山線 1
日田彦山線(ひたひこさんせん)は現役の路線です。宮脇氏は日田彦山線へは一部乗線しており、この路線は乗り残した区間への乗線となります。この日は起点の城野の2つ後の小倉からの乗線です。
時刻表の記載も始発は小倉からのため起点も小倉にみえますが、同線の起点は城野です。このあたりのウンチクを語らないのは、自身は鉄道マニアではないという姿勢なのでしょうか。
これから氏が乗線するこのあたりは氏にいわせると筑豊線群とされ、複雑な路線となっています。いつのまにか日本全国の路線図は覚えてしまうほどの氏であっても最後まで覚えられなかったのはこのエリアでした。
逆にいうと、このエリアは氏が覚えられないほどに鉄道が密集していたのです。そのグチャグチャ感は時刻表2万キロの地図からわかります。
鉄道が密集している理由は、炭鉱です。鉱山への人員輸送と鉱山からの石炭輸送による鉄道路線であり、しかもそれぞれ炭鉱主たちが無計画に鉄道路線を建設したために鉄道が密集して複雑な路線群となりました。現在、炭鉱は閉山し廃線ばかりの筑豊線群です。
【 城野駅 】
* 地図はグーグルより加工/下手上手関係なく画像はローカライズド(LCD)
リサーチ: 風戸ケイキ/ワリアイト・リョウ
プレス:タシロ
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