無人島 野崎島 小値賀町
女であろうと男であろうと旅こそ一人旅。行くなら無人島。
この号は小値賀島のとなりの島:野崎島の特集です。ココと示したところが野崎島です。
■ 野崎島になにがあるのか 13
同じスピリチュアルスポットでも世界遺産のような"ブランド遺産”に抵抗がある方には、王位石(おえいし)という地味なスピリチャルスポットがあります。
同スポットにはガイド付きの有料の体験プログラム(トレッキング)もあります。ただ、ガイド付きであっても普段運動していない人にはおすすめできません。
たしかに観光パンフレットにも
体力レベル5 ★★★★★
中級者~上級者向け
所有時間」約5時間以上
とあります。体験プログラムを利用せず、これらのスピリチャルスポットへのトレッキングに挑んでも法的にはふれないのですが、単独行動では安全上の保証はありません。
過去には、天候急変で迷子になったアウトサイダーを同島のガイドが他島の警察官5名をアテンドして救助しなければならない事態もありました。
野崎島が無人島であることはいつなんどき忘れてはいけません。
【 こういう道もあれば 】
【 こういう道もアリ 】
■ 野崎島になにがあるのか 14
段々畑の石積みと畑跡地の芝生のような緑の草地は、心をなごませます。
野生の鹿もときおり見かけ、それもまた、心をなごませます。無人島となった現在、段々畑は耕作放棄地です。
芝生のような緑の草地は手入れしているのではなく、耕作放棄地となった地面の草を野生の鹿が食むので、そのように見えるだけのことです。
【 耕作放棄地であって芝生ではない 】
■ 野崎島になにがあるのか 15
"ほぼ無人島”となった現在、野崎島の経済的活動は自動販売機による販売収入です。
高度経済成長によって島に"文明”が入ってきた。
それが島から出ざるを得なくなった理由といいます。文明とは電化製品などのことです。
それを買うためには貨幣つまりお金が必要となり、島の農産物や魚を市場で販売するようになりました。
ライフスタイルが自給自足経済から貨幣経済へ変わり、自給自足で食べていた産品を換金し収入にします。
自給自足経済といっても石器時代のように狩猟生活をしていたわけではありません。無人島となった現在でも電柱が残っているように、そこに人が住み生活し電化していました。
島民は畑の作物を自家消費したり、島外へ販売したりしてそれなりに生活できていました。しかし、離島の野崎島にも本土と同じようなライフスタイルを求め&求めざるを得なくなり、島民は島を離れました。
【 人が住んでいた形跡 】
■ 野崎島になにがあるのか 16
鹿にも追い出されました。島には野生の鹿が生息しており、鹿は畑の作物を食い荒らし島民は獣害にあっていました。
野生の鹿といっても、鹿は天然記念物だけに駆除はできず増えるにまかせるままになり、柵で囲うなど対策を講じますが人間の抵抗あえなく畑の作物を食い荒らします。
鹿に畑の作物を食い荒らされた島民は換金産品がなくなり、島での生活をあきらめることになりました。
野崎島の鹿はアウトサイダーには、野崎島の風景にとけこんで癒しの対象かもしれませんが島民にとってはいまいましい存在なのです。
その鹿も現在、町の公式ゆるキャラのモチーフになり、町の町獣ともされています。
【 鹿 】
■ 野崎島になにがあるのか 17
鹿に追い出された人間ですが、"ほぼ無人島”となった島にも地権者はいます。
元々は人が住んでいたので地権者がいてもおかしくありません。人がいない土地でも所有者はいるのです。
無人島の土地に目をつけている輩もいます。たとえば怪しげな宗教団体です。
地権者がそういった団体に土地を譲渡しないように、地元行政側は先回りして土地の購入を試みますが所有者はそうやすやすと行政側に譲渡はしてくれません。
無人島の土地であっても人によっては価値があるのです。
【 土地に地権者はつきもの 】
■ 野崎島になにがあるのか 18
経済的なにぎわいを目指すなら、押し寄せるようにアウトサイダーに来てほしいところです。
無人島では招く側にも遠慮があります。大勢に来島されると、この島の自然環境の維持は難しいでしょう。
それほど整備されていないという事情もあります。破損したガードレールはそのままです。無人島では補修は不要ということでしょう。
道路の状態は良いとはいえない坂道を登ったり下ったりします。その坂道も急です。
時折、廃墟となった家屋も目にします。人間がいなくなると、どうなるかがわかる土地でもあります。ネガティブな風景も含めて野崎島です。
【 補強したガードレールもアリ 】
■ 野崎島になにがあるのか 19
奇跡があります。おぢかアイランドツーリズムが発行する観光ガイドブックの見出しには「『奇蹟の島』への旅」とあります。
奇蹟の島としてのコンテンツは野首教会です。
1908年に建設された教会の建設費は島民の拠出によるものでした。島民は3度の食事を2度に倹約するきびしさにさらされる一方、キビナゴの大漁がかさなる幸運もあり、建設費を捻出できたという話もあります(*1)。
風化による補修も1985年になされました。当時すでに無人島であった教会の補修費用の出所は自治体です。
自治体による一宗教の保護は公平性に欠けるという理由から、教会を宗教的財産ではなく文化財として保護します。この教会が野崎島に人を引き寄せるコンテンツになろうとしています。
* 1 おぢかアイランドツーリズムHP おぢか島旅
【 パンフレット 】
■ 野崎島になにがあるのか 20
無人島にダムがあります。無人島にダムとはムダに思えますが、野崎島には1989年から15年かけて築造した総事業費126億円のかんがい用ダム「野崎ダム」があります。
126億円の負担は国52%、長崎県28%、地元20%です。鹿の走りまわる島に突然、人工的なダムが現れます。
無人島となってから18年後の着工とはそれこそムダに思えますが、同ダムは野崎島ではなく小値賀島本島の水源確保のために築造されました。
- 距離:野崎島と小値賀島間の3.0km
- 深度:水深0からマイナス30m
小値賀島は温暖な気候にめぐまれているものの年間降水量は県平均より少なく、水の確保は長年の課題でした。
そこで海底パイプラインでつなぎ、無人島のダムからの送水によって水不足対策としたのです。同時に小値賀島では区画整備などをして農業経営の安定を図ります。
【 ダムというよりは貯水池 】
■ 野崎島になにがあるのか 21
1950年ごろには島には600人いました(*1)。2000年に最後の住民が島を出ていき、2016年現在は実質0人の無人島です。
50年間で0人となりました。
それでも何もない無人島に魅力を見出し、人が訪れるのはそこになにかあるからでしょう。人がいない場所に行きたい動機もあるかもしれません。
ただし、まったく人がいないわけではないので、その期待は裏切られます。なお、人を避ける目的で来島する方は8月は外したほうがよいです。
レジャー客でにぎわっています。
同地には砂浜で寝そべるには最適な野首海岸があります。たとえ運悪く大勢の団体とかちあっても無人島だけに人数は限られます。同海岸の高い透明度からダイビングを楽しむ人もいます。
それ以上に「何もしないこと」を求める人には、ベストスポットではないでしょうか。
野崎島になにがあるのか?
日本の未来かもしれません。
*1 おぢかアイランドツーリズムHP 野崎島について
野崎島シリーズ 3 終了
注意 情報は2016年1月1日現在のものです。
現地の状況は刻々と変化しています。
現地に行って確認することをおすすめします。
リサーチ : 風戸ケイキ/ワリアイト・リョウ
プレス : タシロ
制作委員会作品
Not Rated
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